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釣り人徒然草

魚をすばやく引き寄せる

2023.07.09

東知憲



1年間に100日以上ターポン釣りに出船するフロリダのガイドたちと釣りをすると、ほんとうに学ぶことが多いのですが、最初にほぼ必ず言われることは「フライラインがリールに帰ってきた段階で、魚の走りが止まったらきっちり寄せてね」。これはとても深いアドバイス。12ポンド (6kg)ないし16ポンド(8kg)の破断強度しかないナイロンラインを主に使い、ときに切れるギリギリまでテンションを掛けて引き寄せます。テンションがゆるいと、ファイトは1時間以上もかかることがある。適切なテンションを掛けられれば、15分で終わらせることができる。魚はエラに水を通すことで、泳ぎながら回復できる生き物であることを覚えておいた方がよいですね。

「魚が走っているときは、おもにリールの性能に頼って、釣り人はなにもしない。魚が止まったら、ただちに引き寄せにかかる」というのは、サケでもマスでもシイラでもマグロでも釣りの共通鉄則です。魚が掛かった釣り人はあまり休んでいる時間がありません。それを「ファイト」や「プレイ」と呼ぶのはあまりに身勝手だと思いますから、たんに「寄せ」と表現しておきますが、その段階で活用されるのがポンピングです。

ポンピングがなぜ使われるのかというと、必要に応じて両手でロッドを起こせること、膝の屈伸や体の反りなども活用して魚を寄せてこられることが理由です。しかし事前に少し練習しておかないと、長くて柔らかいフライロッドを使ったポンピングには無駄な動作が多くなり、ファイトを必要以上に引き延ばしてしまう結果にもつながります。

ポンピングは「リフティング動作」と「ワインディング動作」の2つに分かれます。竿を起こして魚を引き上げ、次に倒しながらリールを巻くという一連の動作で、ロッドは上下の動きを繰り返します。ロッドを立てるのはせいぜい60度くらい、というのは多くのかたがご承知のことと思います。


45度まで起こしたリフトの頂点、ここからワインディングに切り替わります。


リールを巻き始めた後にロッドを下げ始める気持ちで曲がりを維持。


水平あたりの位置でワンセットの動作が終了、これからまたリフト。


この記事で覚えておいて欲しいのは、ティップの曲がりを目で確認しながらワインディング(巻き下ろし)の動作を行うことです。じわっと一定速度でリフト→曲がったままの状態をできるだけ維持しながらロッドを下げる、の繰り返しですね。

かなりの人が、ワインディングの初期動作を間違えます。せっかく引き上げたロッドを、なにもしないまま何十センチか下ろして、それからやっと巻き始めるわけです。ラインのテンションが緩み、せっかく引き上げてきた魚の頭がまた下を向くと、主導権があっちに戻ってしまう可能性があります。

大事なのは魚に安定したテンションをかけ続けることなので、ポンピングの巻き始めはとても大事です。このタイミングで、決して休まない気持ちでいましょう。リールの巻き始めにこそむしろがんばってスプールを1~2回転させ、ロッドティップの曲がりを保ち、魚の頭を持ち上げ続けることができれば、ファイトは早く終わらせられます。長いスペイロッドなどで遡上魚を扱うときなども役に立ちますので覚えておいてください。そして、きちんと結んだティペットは、驚くほど高いテンションに耐えられるものです。

東知憲

翻訳者 & キャスティング・インストラクター(神奈川県在住)

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