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釣り人徒然草

B's Fly Works presents タイイングデスクで独り言 - ハックルにタックル その2 - ダイド・ハックルの活用と応用

2026.04.29

備前 貢

チャートリュースに染まったグリズリーで必殺バッタ・フライを巻いてみる、の巻

北海道ならではのビッグサイズなドライフライ・シーンのなかで、定番中の定番として長年にわたって圧倒的な人気を誇るフライのひとつに、スティミュレーターがある。ロングシャンクのフックのボディにびっしりハックリングして、ウイングとしてディアヘアーの束をドサッと載せたスティミュレーター。誰がどう見ても、いかにも釣れそうな信頼のカディス型フォルムなだけでなく、とうぜん浮力も視認性も絶大の高機能。ロングシャンクの4番や6番といった規格外な巨大サイズでも、フライの形状的に過度な空気抵抗がかからないので非常に投げやすく、扱いやすいのも特筆もの。これは、フライのサイズゆえにアプローチに難ありがちのビッグサイズなドライフライにはおおきなメリット。

 そしてもうひとつ、とくに晩夏から晩秋の季節にかけて、このスティミュレーターが特に大活躍してくれる要因として、フキバッタの存在がある。この時期、道内各地の河川の河原を歩くと、足元からたくさんのフキバッタがチキチキッと羽ばたき飛び出してくるのは、もはやお馴染みの風物詩的光景だ。そんなフキバッタの本物とスティミュレーターを並べて眺めてみると、もういかにもバッタっぽいフォルム。ボサボサにハックリングされたボディハックルのファジー感もあいまって、下翅をひろげて羽ばたこうともがいている最中のバッタそのものに見えるスティミュレーター。

 そんなわけで、道内各地でフキバッタの大発生が目立っていた昨シーズンの秋のこと。半透明にきらめくヒグマの柔毛にモルフォファイバーを混ぜた素材をアンダーウイングに忍ばせて、さらにそのうえに浮力絶大なエゾジカの冬毛ヘアをどっさり載せて巻き止め、トドメにラバーレッグを装着して、さらにバッタを意識してアレンジしまくったフライング・ホッパースタイルな私的スティミュレーターが効きまくっていた。
 なので、そんな私的スティミュレーターに熊鹿蝗なんて名前をつけて悦に入り盛りあがっていたころ、マーヴェリックの勝俣さんより電話。かねてよりお願いしていたバンタム・グリズリーのケープが入荷しましたよとのお知らせに喜んでいると……「そういえばビゼンさん、ダイド・チャートリュースのグリズリーネックなんて、つかう?」と、勝俣さん。




 え?なにそれ?脳裏にクエスチョンマークが数本たちあがるワタシ。ストリーマーやバスバグなんかにつかうサドル系のハックルならいざしらず、ドライフライ用の繊細なネックハックルを、よりにもよって蛍光黄緑に染めるって…それってどうよ? 「あの〜、そのハックルって、どんな目的でチャートリュースに染めはったの?」 と、ワタシ。
「う〜ん、ちょっと、わかりません」と、勝俣さん。

 なんでもホワイティングのハックルが大量に入荷した際、サンプルとして同封されていたらしい。そしてマーヴェリック社内でも、どうしたもんかと困惑中なんて話を聞いていると、なんだか妙にこのダイド・チャートリュースが気になってきて、「それじゃあその蛍光黄緑のグリズリー、ワタシがひきとりますよ」。

 そうはいったけれど、たいした期待も目的もなく、我が家に届いてしまった蛍光黄緑のグリズリー。しかしケープを手にとってスキンをグイッと曲げてハックルをビラビラッと逆立てて眺めた瞬間、なんとしたことでしょう、ピピーンときて胸がときめき高鳴った。これはいける! めっちゃいける! フキバッタの色合いそのものやんけ! 困惑のクエスチョンマークが、感動のビックリマーク乱立にとってかわった瞬間。話を聞いたときにはまったくピンとこなかったハックルが、じつはたったいま現在のじぶんがもっとも必要としていたものだった、というきわめて個人的な感動の与太話。

 そんなわけで、ビッグサイズなドライフライとして、今シーズン最も期待を寄せているワタシのバッタ型スティミュレーター必殺版、ぜひともじっくり見てやってください。調子こいて、ネックハックルの首元の極小ハックルを束ねて縛って曲げて、バッタのキッカーレッグつまりうしろ脚にしてみたら、これがまたハマってるかんじに映えまくって、もういかにもフキバッタ。なんともかんともフキバッタ。ミツグおおいにご満悦。







 フライの名前は殿さま熊鹿蝗です。厳密にはトノサマバッタじゃなくてフキバッタを表現してんですけど、そんな細かいことはどうでもいいの。殿さまのほうが語感も語呂も縁起もいいし、シャレオツだよね。というわけで、まだまだ先ですけど今シーズン秋のバッタの季節にむけて、でっかいフックに蛍光黄緑のグリズリーをぐるぐるハックリングするのが愉しくてしかたがない春なのでございます。




 本格的シーズンを目前にして、ほかにやっておくべきことはたくさんあるというのに、蛍光黄緑のグリズリーをハックリングしたいばかりに秋のバッタ・フライ量産に余念がないワタシ。これぞハックリング浪漫。 

ハックルって愉しいな。

備前 貢

B's Fly Works

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