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釣り人徒然草

テイネイ・フライキャスティング ---- Vol. 1

2025.08.31

東 知憲



私が提唱している「テイネイ・フライキャスティング」において1つの大きな幹をなすのは、ラインスラックの管理です。もう10年ほど前、オーストラリアでのイベントに招かれたのを機会に、頭を絞って考えた「スラックを取る、スラックを足す……エキスパートへの道」というデモンストレーションは、一冊の本にまとめられるくらいの広がりを持っていて、この一連のコラムでも折に触れてその切り口をお見せしますが、今日はまず、とても軽視されがちなタックルの話とリンクさせましょう。リーダーです。

ご自分で素材を結び合わせ、リーダーを作るという人はごく少数のエンスージアストになってしまい、ほとんどのフライフィッシャーがお店からノットレス・テーパーリーダーを買っていらっしゃると思います(私も、一部のソルトウォーター場面以外はそうです)。このリーダー、フライとラインの距離を離し、フライラインのエネルギーをフライに伝え、意図通りのキャストやプレゼンテーションを助けるという役割を担っているのはご承知のとおりですが、たいへん軽視されているような気がします。ご自分がどんなスペックのリーダーを使っているのか、ほんとうに理解している人は少ないような…。



基本の話。フライキャスティングがうまくなるためには、まず、フライまできっちりとラインのエネルギーが伝わり、乱れなくターンオーバーするような道具立てが欠かせません。ストレートラインがきれいに伸びていくスラックのないループを形成することが練習の第一目的で、そのためにロッドティップの動かし方を身につけるわけです。「テイネイ・フライキャスティング」では、つねに基本に立ち返る姿勢を大事にしたいと考えます。そして、キャスティング重視のリーダーを作るためには、前の回でご紹介したマイクロメーターが活躍するのです。

みなさんが練習に使われるフローティング・フライライン。いま手元にあるラインの先端径(ループとなって折り返されていないところ)を測ってみると、違いがあります。練習に適していると思う6番を例にとっても、ブランドやメーカーで微妙に違い、1.07mm, 1.10mm, 1.13mm とばらつきがありますが、だいたい1.10mm 前後ということができます。フローティングラインは、気泡を含んだコーティングにより、全体の比重が水よりも小さいわけですが、ループのエネルギーの伝達は、各セクションの質量に大きく関係があります。ごく簡単にいうと、水に浮くフライライン先端部と、水に沈むナイロン製のリーダーバット(比重は1.14くらい)間のエネルギー伝達をスムーズにしようと思うなら、ナイロンのリーダーバットはフライライン直径の65%くらいが目安とおぼえておきましょう。つまり、1.10mmのフローティングラインであれば、スムーズにターンするリーダーのバットは0.72mmくらいほしい。これ、日本の号表記でいくと19号相当なんです。ポンド表記は強度表記なのであくまで目安なんですが、60ポンド以上にあたると思います。予想よりもずいぶん太いんじゃないでしょうか?
そしていま手元にある、6番ラインと組み合わせて使われることが多いであろう、市販されている3X リーダーを3つ、ストックから拾い出してバットを測ってみると、0.58mm, 0.53mm, 0.55mm となりました。太くて12号相当、つまりかなり細い。細いと、ラインが持つエネルギーがリーダーのバットに伝わらず、結果としてライン先端部のみが反対側に大きく跳ね返って、キャストのたびごとにスラックを生み出してしまいます。よくないですね。

つまり練習のとき、「確実にパワーを伝達して、フライのターンオーバーという現象を実感してもらうための、大基本のリーダー」を作るためには、市販のノットレスに、ナイロンの太いバットを50〜60センチ結び足していただくことが一番の近道だと思います。全体が長過ぎるなら、もともとのバットをすこし詰めるとよいでしょう。太いナイロンは、柔軟性に優れて結びやすいものを選んでください。こうやって作ったリーダーは、皆様の目からウロコを落とすと思います。システムの先端にあるフライまで、神経が通った感じでキャストができるのではないでしょうか。


さて、実際の釣りを考えてみましょう。ターンオーバーしてまっすぐに落ちたリーダーは、軸方向の抵抗がとても小さく、わずかな動作や流れの作用で簡単に動いてしまう、つまりドラッグがかかってしまう。着水して瞬時にフライが水面に航跡を作ってしまうのは、スラックのないきれいなターンオーバーをしているからです。ご承知のとおり、川でドライフライをナチュラルに流す場合、ある程度のスラックはどうしても必要になります。ぐねぐねと水面に乗っているティペットやリーダーは、軸方向に大きな抵抗がかかりますし、長さの余裕もありますので、ちょっとくらい速い流れに引かれても、またメンディングなどの動作をして引っ張っても、フライは動きにくいのです。つまり、ターンオーバーさせることができる道具だてとテクニックを身につけたあとは、ターンオーバーしない(あるいは、あえてターンしすぎる)道具立てとテクニックで、システムにスラックを導入するということになります。


ターンオーバーさせる技術を持ちながら、あえてターンオーバーさせなかったリーダーのレイアウトは、どんなに頑張ってもターンオーバーさせられない人のレイアウトとは大きく異なるんです。




Vol.2へ続く・・・・・・

東 知憲

翻訳者 & キャスティング・インストラクター(神奈川県在住)

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