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釣り人徒然草

テイネイ・フライキャスティング ---- Vol. 2

2026.01.21

東 知憲

ベストな「ホームポジション」設定

 

ものごとの大基本は、とてもシンプル。しかし末節の複雑さに気を取られると見過ごされやすいので、ズレなく押さえるためには外部のよい眼が必要になります。インストラクターさんの大事な仕事ですね。

 

私は生徒さんに手を添えてレッスンする、というやり方もひんぱんに使いますが、そんな時には「体の作りって人それぞれだなあ」と思います。グリップを握る手の大きさ、腕の長さ、身長(=腕の付いている高さ)、筋力、みなさんぜんぜん違います。そのような前提で、質の高いフライキャスティングをするには、自分が手と腕を動かせる範囲をよく理解し、必要ならその全域をうまく活用できるように、基礎を構えておかなければなりません。その際に考慮することは3つ。

 

1)ロッドティップを精密に動かせるか

2)ロッドティップを加速させて動かせるか

3)ロッドティップを長く動かせるか

 

1)と2)はどんなフライキャストにも必要で、3)は場合によって必要なこと。しかし、現場では3)が問われてくることが、とても多いのです。「今はちょっとティップを長く動かさなければ!」という状況で、その対応ができるかどうか。たとえば、きゅうに風が吹いてきた。すごくターンオーバーしにくいフライを結んである。軟かいロッドに持ち替えた。そんな時は、ティップを精密に、加速状態を保って長く動かさなければならない。そんな時、とても大事なのは「バックキャストのとき、手がどこでストップしているか」、その位置なんです。


理想位置よりそうとう前のホームポジション。ロッドはこれ以上後ろに倒しにくく、前方への「押ししろ」も短い。

 

フライキャスティングで究極的に大事なプレゼンテーションを行う最後のキャストは、バックで止めた位置からスタートし、前に動いていきます。私はそのストップ位置を「ホームポジション」と仮に呼んでいますが、スペイキャスターなら「ファイヤリング・ポジション」「ローンチ・ポジション」などと言うでしょう。いずれにせよ、手はそこから前方にしか動けません。では仮に、胴体からずいぶん前方にホームポジションを取ってしまうと、なにが起きるでしょうか? 腕の長さには限界がありますから、すぐにフォワードキャストが終わってしまい、ティップの動く長さが足りなくなってしまいます。また、ロッドを後ろに倒し込むことも難しくなります。上の写真でいえば、11時位置まで倒すのも辛かったです。つまりロッドの「振り角度」も足りなくなってしまうリスクがつきまといます。経験上、だいたいはテイリングになってしまうんですが、初心者の場合は逆に超ワイドループが生成するかもしれません。どっちにせよ理想からはほど遠いものです。


平均的な人にとって、対応力の高いホームポジション。ロッドを後方に倒し込むことも容易で、前方に60センチメートルほどの余裕もある

 

スタンスや体の向きを調整し、自分の手と腕の動きを最大限に活用することが直感的にできるようになれば、上級者への高速道路に乗ったも同然です! 大事なのは、「きゅうくつさを感じることなく、体幹にできるだけ近く」。私の場合は、肩よりもすこし前方、あごから目の高さに手がくる位置がベストと思えます。みなさんも、このあたりを目安に、自分にとって最大の調整幅をもたらしてくれる、手のホームポジションを探してみてください。ちいさなことを丁寧に整えていくと、キャスティングの質は変わっていきます!


東 知憲

翻訳者 & キャスティング・インストラクター(神奈川県在住)

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