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釣り人徒然草

スペイバトンを使おう

2023.05.19

東知憲

ちょっと複雑なだけに、はまり込むと深い沼なのがDループを活用するタイプのツーハンド・キャスティング。ここでは、後方にまっすぐラインを伸ばしてフォワードキャストに移る、オーバーヘッド・キャスティングと対比する形で、広い意味のスペイキャスティングと呼びたいと思います。これにはダブルテーパーやウエイトフォワードのフルラインを使う狭い意味でのスペイキャスティング、長めのシューティングヘッドを使うタイプのスカンジナビアン・キャスティング(ないしアンダーハンド・キャスティング)、そして短めのシューティングヘッドとシンクティップの使用を前提にするスカジットキャスティングと、大別して3種類があることはご承知の方も多いでしょう。

私の経験に即して言いますと、シングルハンド・キャスティングから各種ツーハンドに移行してゆくときになにが難しかったかというと、両手の連係のさせ方。とくに下側の手の活用でした。まだ練習を始めたころメル・クリーガーさんに「上の手が90%、下が10%で投げてるね。少なくとも半々、できれば下側の手のほうをより多く活用するつもりで練習を続けなさい」と言われました。それでもやっぱり、ロッド操作は何十年と右手だけに頼ってきたフライキャスティングですから、なかなかうまく行きません。川のそばに住んでいるわけではないので、練習場に行くのも1時間くらいはかかります。どうすればいいだろう? 水のないところで練習はできないかな、と考えました。

基本モーションを体に教え込むためには、室内で使えるロッドがあればいいんです。しかし、日本の住宅事情を考えれば、4ピースロッドのバットセクションですら邪魔。スペイキャスティングで、上下グリップの間隔は最大でも肩幅……つまり動きの練習だけをするなら60センチあればよいことになります。手軽に引っ張り出せて、1日10分だけでも練習できるためには、短いに越したことはありません。そうやって生まれたのがこの「スペイバトン」です。販売していないので勝手に作ってください! 端材のカーボンチューブを使っていますが、木の丸棒でも、プラ管でも構わないでしょう。リールシートはもちろん不要。大事なのは、両端にちゃんとコルクのグリップを付けることだけ、ここはリアルさにこだわってほしいです!

このスペイバトンの良いところは、かさばらなくて、(当然ですが)簡単に持ち替えられるところ。右手が上のキャスト・モーションを数回繰り返したら、持ち替えるかバックハンド側で、逆のモーションを同じ回数だけ練習します。これによって、頭の理解と筋肉の記憶がリンクします。状況が変わったらバックハンド(スペイの世界では「キャックハンド」とも言います)を使うか、それとも反対側の手に持ち替えるかは個人の選択ですが、私はどちらもできたほうが風などの対応力が上がり、釣りが豊かになると思います! とくに下側の手の使いかたを、右・左・右・左と持ち替えることで、同じようなモーションが身につくように練習してみてください。下のほうの手は、おへその前から半円を描くように離れていきます。上のほうの手は、バックストロークの後半で持ち上げられ(サークルアップ)、フォワードストロークの前半で引き下げられます。文字で書くと複雑ですね!

左手は、機会をみてすこしづつ活用できるようにすると良い感じです。私は日常生活でも、コーヒー豆を挽くときに左手でハンドルを回すようにしています。スペイバトンは身近に置いておいて、1日に何回かは触り、キャストをシミュレーションするようにすると良いです。


Tight Loops,

東知憲

翻訳者 & キャスティング・インストラクター(神奈川県在住)

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