スイング&ドライ— 下山日記

2022.01.17

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ガイドサービスを受ける前にやっておきたい5つのこと

 

 私がこの仕事を始めた27年前に比べれば、日本国内のフィッシングガイドの地位は確立されて来たように思います。当初はソフトよりもハードに重きを置く価値観があり、海外では当たり前のサービスが、日本国内で通用するのかどうか不透明。しかし、近い将来には必ずフィッシングガイドという仕事が受け入れられ、生活できる収入を得られると信じてスタートしたのが思い出されます。私が何とかここまでたどり着けたのは、ひとえに良いお客様との出会いに恵まれたからです。

そこで今回は、お客様が楽しい時間を過ごしていただけるように、サービスを受ける側の皆様にやっておいて欲しいことについて書かせて頂きたいと思います。勿論、サービスをご提供する私たちもやっておくことが沢山ありますが、まずは皆様の視点から。

 

Guide and Client 

 

・ガイドとの打ち合わせ

当然のことながら、釣行前には事前打ち合わせが必要です。ここでは、自分の要望を確実に伝えることが大切。ドライフライ、ニンフ、ウエット等、どんな釣りをしたいのか。どんな規模の場所で釣りをしたいのか。できれば、客観的な自分の釣りレベルも伝えておいた方が良いでしょう。旅行会社を通してのツアーの場合は、担当者に要望を伝えます。ガイドはそれらの内容を考慮して、いくつかの候補を用意するはずです。良いガイドはこの打ち合わせを決して軽視しませんし、必要ならば回数を重ねてその日の釣りの内容を絞り込んでいきます。

 

・タックルの用意

場所や釣りのスタイルが決まれば、使うものの用意です。タックルは、普段使っているものでも再度確認して、故障や破損がないか確かめておいてください。フライは、ほとんどのガイドがお客様用を持参しますが、自分で巻いたもので釣りたい場合は、あらかじめじゅうぶん時間的余裕を見て、情報をきっちり収集しておかないとピンボケになりかねません。ウエア類は最重要です。現地の気候や気温を問い合わせ、オーバー過ぎる程度のウエアを用意しましよう。風雨から身を守る丈夫なウエアが必要です。魚を釣る前に自然環境に負けては、釣りになりません。少しでも快適に釣りに集中できるよう、質の高いウエアを用意した方が釣果も良くなるでしょう。

 

・釣り場の下調べ

釣り場の場所や雰囲気をイメージすることが大切です。行ったことのある場所であればイメージも湧き、どんな感じでどう魚を引き出すか想像できるでしょう。しかし初めての場所なら? 近年は、衛星マップやSNSの普及で、行くことになった場所を検索すれば、すぐに画像や情報が得られます。百聞は一見にしかずというのは事実で、現地へ行って感じることはとても大切ですが、ネット上の画像や情報も参考にはなるはずです。釣行に行く前のイメージ作り作業はとても大切で、現地へ行って、自分の持っていたイメージとピッタリであれば成功への近道を見つけたことになります。全く違ったということもあるでしょうが、その時は気持ちを早めに切り替えることも必要です。

 

・スキルアップ

フライフィッシングでもっとも重要な要素の一つがキャスティングです。いくら良い釣り場に行っても上手く投げられなければ、魚の目の前にフライを届けるチャンスも減ってしまいます。釣行までに時間があれば、できる限りのスキルアップをお願いします。あらかじめ釣り場のイメージが掴めたら、それにあったキャスティングスタイルが特定できるはずです。シングルハンドないしダブルハンドのタックルを使ったスペイキャスティングやオーバーヘッドキャスティングなど、釣り場に合ったキャスティングを練習しておくのが理想的です。

 

・健康管理

釣行前に健康を害しては、せっかくの計画も台無しになってしまいます。また海外遠征の場合、釣り場の近くに病院がないこともあります。危険を避ける行動を取り、衛生面に気を配って体力の維持を心がけましょう。

 

Above Osborne Spring

Bonnie Harrop photos

 

 以上、ガイドサービスを受ける前にやっておきたいことを簡単にまとめさせて頂きましたが、最後に言いづらい事柄も付け加えさせて頂きます。私たちガイドは雇われる側なので生意気なことは言えないのですが、楽しい良い時間を共有するためにはお互いの理解が必要です。国内外のガイドたちと話していると、こういうことは言われたくない、要求されたくないということが共通しているとわかります。「必ず」とか「絶対」という言葉、「何センチのが釣れますか」「何匹釣れますか」などというフレーズです。自然相手の中で、絶対は存在しません。何センチの魚でも同じ魚です。何匹釣れようが、思い出に残らなければ無に等しいと思います。すばらしいアウトドアの遊びとして、プロセスを楽しむ気持ちを忘れず釣りをすることが大切でしょう。

 

  私たちフィッシングガイドは、これまで真剣に蓄積してきた知識と経験を活用し、お客様に最良のサービスをご提供しようと心がけております。機会があれば、是非お会いしたいと思います。 去年も、思い通りに釣りがやりにくい1年でしたが、今年はもっと楽しいことがありますように! 

 

 

 

ドリーバーデン店主 下山巌

SIMMS & Scott Pro Staff   

 

2021年のHFを振り返って

2022.01.07

A Trout Hunter[5]

 

 

 by レネ・ハロップ

 

 

ヘンリーズフォークに集まる人たちは、昨年も好調と低調の両方を体験することになった。上流にあるアイランドパーク・ダムは、厳冬期もある程度の流量を提供し、ヘンリーズフォークの中でも環境変化にもっとも敏感な区間に住むマスの生存が脅かされることはなかった。健康な魚を多く泳がせる釣り場作りのためには、水不足の時期にしっかりと流量管理を行うことが必須となってくるが、ヘンリーズフォークに関しては他の川が苦闘している時期も注意深い流量調整が実行された。

 

しかし半年後、高温が襲った真夏の時期に、イエローストーン地域の有名な釣り場では深刻な水温上昇の問題が起きた。一日のうちで気温が上がる時間帯に釣りを禁止する、ないしは長期間にわたって全面禁漁を実施するなどの緊急施策が採用された場所が多い。しかしヘンリーズフォークにその手の規制は掛からなかった。農業用を念頭とし、時に通常よりも多くなった水量は、マスや水生昆虫にとって良いことだった。

 

タイムリーなハッチとマスの多さにより、ピークシーズンに訪れたアングラーたちは楽しい釣りができたようだ。しかし、1か月以上にわたり他の釣り場に規制が掛かったことで、例年より混雑したのも事実である。

 

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湖や貯水池の釣り場は、急速な放水と藻類の繁殖により、大きな影響を受けた。たとえばヘンリーズレイクで通常の釣りが帰ってきたのは10月になってからである。

 

夏の放水により低水位になったアイランドパーク・ダムを再充填することは、ここ数年の秋における行政の中心課題で、とうぜん川の流量も絞られる。茂った藻と低い水位で、ヘンリーズフォークの秋の釣りは厳しいものだったが、マホガニーダン、ブルーウイング・オリーブ、ミッジなどのハッチは健全だった。

 

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2021年も近頃の例に漏れず、10月の声を聞くと冬を先取りするような雪嵐と寒波がやってきたが、それを除けばとても過ごしやすい秋だった。私たちのほとんどは、快適な釣りの季節が長引いたことを喜んでいたが、12月になっても雪があまり降らないと心配になってきた。ローワー・ヘンリーズフォークにある重要なパブリック・アクセスに変化が起きたことも懸念材料ではある。駐車場、トイレ、ボートランプを備えていたアシュトン郊外のヴァーノンブリッジ・アクセスは、砂利採取場になってしまったようだ。これに関しては、まだいっさいの情報がない。

 

12月も中旬を過ぎると、ヘンリーズフォーク上流部には相当の降雪があり、私たちはひと安心している。積雪量がどれくらいになるかはまだ分からないが、アイランドパーク・ダムの貯水量は70%を超えたので、冬の流量はいつもどおりに確保されるだろう。

 

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夏の間に厳しい環境があったものの、ヘンリーズフォークの状態は健康である。地元に住む私たちは、嵐が到来する度ごとに嬉しさを噛みしめる。自然の恩寵により、ヘンリーズフォークの2022年も良いものになりそうだ。

 

CASTING TIP Dec 15

2021.12.20

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もっと倒していいんです!

 

ファイナルキャスト症候群 ……とくに遠投時に頻発。フォルスキャストでうまくループが作れていたのに、最後のシュートで乱れ、リーダーが絡んだり思い通りに飛ばなかったり。クラスに来られる生徒さんの間でも、わりとよく見かけます。いちばん大事なプレゼンテーションで失敗してしまうと、ほんとうにいらいらしますよね。今回はその直し方をアドバイスしてみましょう!

 

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ファイナルキャスト……フォワードでは大きく振り込みますが、開始時のロッド位置も大事!

 

 

簡単に言うと、「シュートの前には、がばっと倒しておきましょう」。これだけ覚えてもらってもいいです。

 

よいループを投げるには、空中を動くロッドティップ(曲がったものの先っちょ)をうまく制御し、できるだけまっすぐな軌跡を描かせることが大事という基本の考えは、広く浸透してきた感があります。ロッドの曲がりに影響する要素は、いくつかあります。フライフィッシングをやっている人なら、以下の2つは簡単に思い浮かぶことでしょう。

 

 

①ロッド自体の硬さ

②ティップから出しているラインの長さ

 

しかし1つ忘れがちな要素が

 

③キャスターによる力の入れかた

 

なんです。おんなじ長さのラインを同じロッドで投げたとしても、そっとキャストした場合と、ぐいっと力をいれた場合は、ロッドの曲がりが変わってきます。

 

あまり力を入れないフォルスキャストは、おそらくロッドの先端近くを使っているわけです。それに続いてパワフルな入力で最後にシュートをする場合、力を入れたことでロッドはミッドからバットまで大きく曲がり込みます。沈むティップに、そのままの高さを維持させてストップに至るためには、何よりもまず、ロッドの振り角を広く調整すること。フォワードストロークでロッドをより大きく傾けてフィニッシュするのは難しくはなく、おそらく皆さんがやっていることでしょうが、それでは足りない場合、テイリングが起こってしまうんです。

 

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たとえばシューティングヘッドを使った湖や海での釣りの場合など、力を入れる分量が劇的に変わるキャストの場合、フォルスキャストでのバックストップをしてループを作ったら、続いてロッドを思い切って後ろに倒し、続く大きな入力=大きなロッドの曲がりに備えておくという作業が必要になるわけです。グンっと力を入れる前には、事前準備としてぐいっとロッドを倒しておかないと、動作の後半でロッドティップが浮き上がり、ループもそれに連れて行かれてしまいますよ!

 

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フォルスキャストは必要充分なパワーでチョイチョイっとやっておいて、シュートの前にはじゅうぶんロッドを傾けておいてからフォワードでパワーを込める。ただし、ロッドをドリフトで倒し込むのは、ストップでバックループを作ってからのことですよ! そうしないとループが広くなりすぎてしまいます。

 

では、Tight Loops! オフシーズンの練習も、がんばってください!

 

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東 知憲

刈田敏三のライズシアター(師走)

2021.12.01

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丸っこいので

 

初冬に足を突っ込んだような日の朝、北海道では1メートル近くも雪が積もったとニュースが伝えていた。まっ、それでも埼玉県では快晴・・・おや! 今日は風速が1mだと。それは好ましいネット予報。皆野町にある荒川本流ニジマスC&R区間へは、家から1時間そこそこで行ける。川に着いたらもう11時。穏やかに風もなく、スッとした空気の中にも気持ちの良い陽射しがあった。しかし、マズイことに流れまでも穏やかに静まりかえっているではないか。いったいどうなっているのか、ドリフターをチェックしてみた。「がが~ん」体長4㎜ばかりのミッジシャックがほんの少しだけ。流れの状態は・・・とんでもなくスロー。こりゃいかん。どうやら今この辺りでミッジはハッチしていない。ずっと下流へ平瀬の先まで行ってみることにした。

 

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*写真のマス目は1㎜ 

 

あちこち見て回ったけれども、ライズを見つけられない。そこで、区間内でもっとも水生昆虫が多そうな、広大な平瀬の下へ行ってみた。活性の上がったニジマスがいれば、もっともドリフターが多く流下して食べやすいレーンにやってくる。放流地点よりかなり下流になってしまうが・・・。

12時を過ぎると、ミッジのシャックなどが急増して流下、そしてついにメイフライがハッチ! 体長が4㎜のダン、ミジカオフタバコカゲロウだ(左上)。晩秋から初冬でもハッチするキャラだが、極小なのが惜しい。少し遅れてハッチしてきたのはブユ=ブラックフライ。早瀬系からのボトムハッチで、周年出るのだが特に晩秋から冬のスーパーハッチは珍しくない。しかし、水底から上がってくる極小イマージャーという厄介なキャラで、ライズの割にヒットを稼ぐのはそう楽ではない。

 

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ドリフターは時を追うごとに増えたものの、フライに反応するようになったのは14時ごろから。この時期、最高水温に達するタイミングである。ハッチできなかったスティルボーンを水面下にドリフトするフライで、ニジマスが釣れた。胃の中には、ブユに加えてミジカオのダンもあった。他はミッジのシャックが多く、フタモンコカゲロウやサイドコカゲロウなどのシャックも混じっている。消化がほとんど進んでいない捕食物全体の様子からは、午前中はほとんど食べず、昼過ぎになって一気にバクバクしたように見える。晩秋からの無風快晴の早朝は、どうしても水温の急低下が起こり、水生昆虫もニジマスも午前中は動きが鈍くなりがちなのを改めて実感した。

 

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下の写真は、ブユのスティルボーンを水面下にドリフトするパターン。アブドメンは顔料ダークブラウンマーカーで部分染めしてある。ハックルは二回転以内で仕上げ、水面に接する下面を水平に巻く。ハックルとボディとの距離を1㎜以上しっかりキープするのがポイント。ハックルの存在感をギリギリまで薄めながら、波立つ流心でも安定したドリフト性能を得られるパターンである。

 

 

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ブユスティルボーン

フック:VARIVAS 2200BL #24

スレッド:VEEVUS A05 16/0 

アブドメン:ヴェインファイバー・シナモン

ソラックス:ピーコックハール

ウイング:ホワイティング・ヒーバートハックル

ウィングポスト:ヴェインファイバー・パーシモン

 

 

 

水生昆虫研究家・フライクリエイター 刈田敏三

 

 

FISHING TIP Nov 16

2021.11.22

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ツーハンド用フライライン整頓

 

 

スペイラインの世界は、実際のところ多数の商品が入り交じってとてもわかりにくくなっています。自分にはどんなスペイラインが向いているのか、それを知るいちばん良い方法は「いったい自分がどんな釣りをしたいのか?」をベースにすることでしょう。そしてエアフロのスペイラインは、完成度とライフサイクルの長さで、安心して使う事ができます。たとえばロングセラーであるスカジット・ドライバーやスカジット・スカウトは、細かな素材やテーパーのアップデートは受けてきたものの、基本設計は10年前の第一世代と変わっていません……。

 

Heads

 

まず、スペイラインは大別して「英国風ダブルテーパーないしウエイトフォワード」「スカンジナビアン・ヘッド」「スカジット・ヘッド」に分けられ、その順番に短くなっていきます。短いヘッドは重いものを簡単に飛ばすことができますがプレゼンテーションは繊細ではありませんし、着水時にスラックが出やすいです。長いヘッドやウエイトフォワード・ラインは、キャストに高レベルのテクニックが必要ですが、遠投やスラックのない繊細なプレゼンテーションができます。長いものを扱う、ハードルを上げた練習をしておくと、短いものの扱いも簡単になります。

 

まず、「自分がどんな釣りをしたいか決まってはいないけれど、スペイキャスティングをやってみたい」と思われる方は、迷わずレージ・コンパクトをお勧めします。これはだいたい9メートルくらいあるハイブリッド・ヘッドともいえるもので、スカンジナビアン・ヘッドとスカジットヘッドとの中間型。力強さと投げやすさ、ある程度の繊細さを融合させた製品です。シングルスペイなどのスプラッシュ&ゴー・タイプのキャストの練習も、ペリーポークなどのサステインド・アンカータイプのキャストの練習も、オーバーヘッドもできます(わかりやすくいうと、万能ラインというところだけ覚えておいていただくと良いです)。

 

重たいフライを底に転がしたい、ないし深くスイングさせたいと思われる方は、5メートル未満のヘッドであるスカジット・ドライバーないしスカジット・スカウトをお勧めします。スティールヘッディングを主眼として開発されたきわめて実用的なラインで、サステインド・アンカータイプのキャストに向いています。ただし空中を飛ばして着水させるスプラッシュ&ゴー・タイプのキャストには使いにくいですし、遠投は試みないほうが良いです。これは先端にシンクティップを接続して使うのが前提。北米のフィッシングガイドが、スペイキャストのビギナーに渡して魚を釣らせるのも、このタイプのラインです。

 

季節も良く、水面近くでフライをスイングさせて気分良く魚を釣りたいと思われたなら、12mくらいある D/X ヘッドがお勧めです。エアフロは正式にはそう言っていませんが、これはスカンジ・ロングというかつて存在した高性能ラインのジャパンカスタム改良系ともいえるもので、オーバーヘッド・キャスティングにもたいへん使いやすいもの。シングルスペイ、ダブルスペイ、スネークロール、スナップキャスト、ペリーポークといったさまざまなスペイキャスティングを全方位的に身につけたいと思ったら、このD/X ヘッドのフローティングを強くお勧めします。これに10フィートないし14フィート・ポリリーダーのフローティングを接続すると、いまはあまり販売されていないウエイトフォワードのフルラインにとても近いキャスト感覚になり、練習用としてもすばらしい仕立てとなります。

 

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スペイキャスティングは、手に伝わってくるフィーリングとテンポ感がとても重要なもの。そのためにはロッドとラインのマッチングが決定的です。お近くのプロショップか、スペイキャスティングがよく分かったお知り合いに相談されると良いでしょう。エアフロ以外にも、性能の高いスペイラインはいろいろ存在しますが、それらの選定の際にも上記のガイドラインが役に立つと思います。

 

 

東 知憲

CASTING TIP Nov 01

2021.11.03

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ホールでうまく「加速」するには

 

フライキャスティングの練習に熱が入るオフシーズンになってまいりました。もちろん、まだ現場にバリバリ出ているよという方もいらっしゃるでしょうが、投げのチューニングにはよいタイミング。さて、フライキャスティングの「大基本」に関しての理解は、昔とは比較にならないほど進んできた実感があります。かいつまめばそれとは「滑らかに、しっかりと加速して停め、竿先がストレートに動く距離を適切に確保してやる」こと。上記の3アイテムはそれぞれ深みを持っており、動作の練り込みには時間が掛かりますが、だからこそスクールやレッスンの存在意義があるのですが、まずは理解理解。

 

ロッドを持つ手の動かし方に関して言うなら、ロッドの曲がりに合わせて振り角度と手の移動距離を調整できるようになれば初級者の域から脱却、あえてエラー動作ができるようになれば中級者脱却。ラインを持つ手の操作に関しては、ダブルホール基本動作ができれば初級者脱却、動作がうまくできるようになれば中級者脱却、そう私は考えています。今回は、ダブルホールの動作についてアドバイスです。

 

ロッドハンドでは「スムーズに、滑らかに……」を心がけてきた人も、ライン(ホール)ハンドとなると急にぎこちなくなるケースがあります。せっかくきれいにロッドティップを曲げてきても、ホールを始めたとたんにティップが下がって、ループの形に影響が出てしまう。ダブルホールを伴うキャストでは、ロッドを持つ手もホールをする手にも、動かし方に注意する必要があるんです。まずは、ループ形状に悩みがちな人によくある引き方を見てみましょう。

 

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加速がぎこちなくなりやすい引き始めの構え。ラインを持つ手のリストは閉じ気味(ナチュラル位置)

 

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手首は使わず、肘を中心とした腕の動きだけによるホール。スムーズさも加速感もイマイチな傾向 

 

ロッドは、手によってがっちりと「ポジティブ・ストップ」(メル・クリーガー風に言えば『ゥワンプ』)してラインに力を伝えます。ラインを引く手は、キレイに動かしてきたティップの軌跡を損なうことなく、ラインに速度を加えてから停止します。引く速度は、徐々に増していかなければなりません。

 

ここが難しいところ。ロッドハンドほどの劇的な加速感は必要ありませんが、ラインハンドも徐々に速度を上げていって停まるのがベスト。中級者からの脱却で足踏みしている人たちの多くは、ホールの動き出しが唐突で、途中でじゅうぶんに加速できず、締めくくりで逆に減速したりします。「反対側の手でホールしなきゃ…」という意識が強く働くあまり、最初からガツンと引いてしまうんですね。

 

うまくホールの速度を盛り上げるには、複数部分の組み合わせが効きます。肘を中心とした回転だけで行うホールは、ガツンホールになりがちです(あくまで当社調査)。肘から始まり、最後にほんの少しだけ手首を締めるようなホール動作にすると、足し算のぶんだけスピードが乗り、終盤にかけた適切な加速が得られることが多いんです。

 

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この構えが最重要。ラインは親指の腹に掛け、手首はガッチリはっきり開いておきます 

 

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 まずは手首を使わず、肘を中心とした腕の動きだけでゆっくり引いていきます

 

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 最後に親指をカムとして使ってリストダウン、スピードを加えて停止

 

「ホールは足し算……最後にちょっとだけ手首を閉めて速度を追加」。これ、本日の言葉としてメモ帳に書いておいてください。では、Tight Loops!

 

東 知憲

イトウを釣る構え — WildなLife

2021.10.17

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道北の名寄に住んでいる私は、季節が来ればスペイキャスティング&スイングの釣りを楽しんでいます。いまはイトウ釣りの最終盤。やる気のある元気な魚しかこの釣りの対象ではありませんから、環境インパクトも少ないのではないかと思っています。

 

高番手ダブルハンド・ロッドのキャスティングに関しては、いろんな人が解説されていますし私の出番ではないですが、今回は大事な釣りのテクニックをすこしご紹介したいと思います。キャスティングが終わり、(できるだけ控えめに)必要なメンディングを施してスイングを行う段階の構えです。

 

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ミディアム級までの、基本の構えはこうだと思います。グリップ上のバランスポイントを握ります

 

私なりに思うスイングの釣りの定義は、「キャストの着水後からフライが真下流に到達するまで、積極的にラインをたぐってフライを泳がせない」というものです。言い換えれば、ラインは決して一直線にはなっておらず、流れを受けてカーブを描きスイングしてきます。スイング途中で魚がフライを口にして反転した場合は、1000グレイン=65gくらいある重いラインのベリーが抵抗となりますので、セミオートマでフックポイントが口の横側に立つ可能性がとても高いと思います。活性の高いイトウが、フライの着水からスイング初期段階で襲いかかってきた場合は、あまりフッキングに悩むことはありません。最初はロッドを垂直に立てず、岸がわにぐいっと曲げてやるだけでじゅうぶん、ファイトのテンションでフックは深く刺さっていきます。

 

しかしイトウは、スティールヘッドやアトランティックサーモンといった典型的なスイング釣りの対象魚より、ちょっと怠け者だと思います。まったくフライがスイングしない反転流の中で小魚を捕食することもあたりまえで、そんな場合は流れとの境目でしか勝負できません。またスイングが完全に終了してフライが横の動きを止めた時にそっと咥え、そのまま動かずにいることも多いのです。スイング終わりでぐいんとすこしだけ重さが感じられる、そんなアタリには注意です。キャストの準備としてランニングラインをたぐろうとして、はじめて重さを感じられる時もあります。傾向として、大きいイトウほど根掛かりのような感触になるような気がしています。

 

そんな場合、アトランティックサーモンのようにラインを持って行き、リールを鳴らしてくれることはあまりありません。待っていれば、咥えたフライを離してしまいます。そこで、重さが感じられた瞬間にアワセをする動作が必要になってきます。流れきった段階のアタリに対してもっとも効率的なのは、ロッドをまっすぐに引いてセットフックすることでしょう。そのために、私はこのような構えをしています。ラインはリールから一直線に出しておきます。スコットが北海道スペシャルとして作ってくれた18フィート「カムイ」をはじめとする、メーター級を想定した大砲クラスのロッドは、片手ではとても保持できないので、両手で持ってスイングさせます。

 

 

 

 

 

 

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 ヘビー級タックルの私の構えはこれ。アタリらしい気配があったら、ロッドをまっすぐ引けるようにしています

 

 

 

 

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 この瞬間を、夢に見続けて……

 

 

Wild Life 店主 千葉 貴彦

SIMMS & Scott Pro Staff

刈田敏三のライズシアター(神無月)

2021.10.01

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シャックドリフターを模すには        

 

9月も半ば。まだ夏の風景なのに、ヤマメはもう色づいていたね。寂しい気もするが、その一方でニジマスを釣るシーズンが来る……ワクワクだ。秋から初冬になってもコカゲロウのハッチは続くし、エラブタだってまだまだとはいえ、夏以降のハッチは盛り上がるとは言いにくい。それでも、ライズは発生する。

 

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この秋ヤマメは、シャックドリフター、つまり水生昆虫の脱皮殻にライズしていた。シャックドリフターというのは、一般的に成長に伴う脱皮によって発生する。つまり、川底から脱ぎ放たれて流下する。
しかし、川底をゴロゴロと流れるわけじゃない。水よりも微妙に比重が小さいシャックは、ゆっくりだけれど必ず浮上して水面直下、サブサーフェイスをドリフトする。だから、ハッチがなくても魚はライズし、水面に波紋を見せる。まあ、わりと難しいタイプのライズシーンになるけどね。
シャックというのは、ちょっとユウレイのような透明感があるドリフター。フライのマッチングなどかなり難しそう、思うかもしれない。でもシャックの写真を観察すれば、ピンとくるだろう。

 

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昆虫というのは、体節=セグメントがあるのが最大の特徴。だから、ヤマメだってトラウトだって、エサか木の枝かの判断にはセグメントのイメージが体に染みついているはず。
シャックドリフターのマッチングフライには、セグメントのイメージを持たせるのが効果的だと思っている。

 

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今回紹介するフライは、淡色のハックルストークでセグメントをビシりと決め、水面直下をナチュラルドリフトできるパターン。ヘンハックルのファイバーを全てむしり取ったストークを使う。アブドメンのベースは、シルクフロス。これはつまり、シルクミシン糸のヨリを戻しながら巻いてボディベースにする。シルクは、顔料マーカーで染めやすく妖しいキラメキを秘めているから好ましい。

 

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ストークでセグメントを巻いたら、UVレジンでコーティング。最後には、カリタ式パラシュート仕様でフライを仕上げる。

 

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これは、ストレートなロングハックルを3回だけ巻くことによって、ソフト着水と厚巻パラシュートハックル独特のタンポポ現象を避け、ハックルはあってもステルスにしてしまおうという作戦。水中写真を見てもらえばわかるように、このフライなら、シャックパターンを簡単にサブサーフェイスドリフトできてしまう……おっと、フロータントは、必ずハックル限定。

 

 

水生昆虫研究家・フライクリエイター 刈田敏三

 

 

ESSAY Sept 16

2021.09.16

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25年の後に

 

 

レネ・ハロップさんについては、いつか詳しいストーリーを書きたいと思っていますが、彼と知り合ったのはたしか1996年。大手量販店に勤めていたことのある稲見一郎くんの紹介で、ヘンリーズフォーク・オブ・ザ・スネークリバーの流れるラストチャンスという集落に訪ねたのがきっかけでした。彼は脂ののりきった50代初頭、奥さんのボニーさんといっしょに家内制手工業のタイイングビジネスをずっと守ってきたプライドが直ちに感じられました。

 

アメリカンFF のビッグバンには、1971年の本「セレクティブ・トラウト」、1975年の「フライフィッシング・ストラテジー」が大きく寄与していますが、筆者ダグ・スイッシャー&カール・リチャーズと親しくつきあい、彼のコンセプトを洗練されたフライで実現したのがレネ・ハロップでした。「セレクティブ・トラウト」の冒頭では、おもにヴィンス・マリナロ、アーニー・シュウィーバート、アート・フリックら東海岸の先駆者たちに言及があるのですが、「ストラテジー」はハロップ、ローソンといったロッキー山脈周辺の若い才能たちに謝辞が捧げられている事実は、その数年の間にフライフィッシングの世界が音を立てて変わっていったことを暗示しています。彼のタイイングビジネスはまさにその時期に立ち上がったわけで、ハロップさんはあっさり「運が良かった」と言いますが、成功を収めるためには並々ならぬ努力と献身が必要だったはずです。

 

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4人によるフライ。開いているボックスにはボニーさん考案の「パラスピナー」が

 

ブラックフット族とラコタ・スー族の血を引くハロップさんは「土地の力」を信じています。先祖たちが暮らしたこのアイダホ州をほとんど出ることがないのはそのせいで、1993年に招聘に応じて来日したのはきわめてまれな事だったようです。自分たちが生まれ育った、パワーに溢れた土地の声を聞きながら暮らすというのが彼らの日常。夏の夕暮れ、ラストチャンスの川べりには白いシボレー・スコッツデールが停まっていて、レネとボニーが山に沈んでいく夕陽を見つめています。

 

彼は言います。「急いで動くと、いろんなことを見失う。マスを追いかけるのもシカを追いかけるのも、心構えは同じだよ。ゆっくりと、注意を払い、五感を研ぎ澄ますこと。ヘンリーズフォークを釣っていると、時間の感覚は消え去ってしまう。私が立ち込んでいる場所は、60年前と同じだ。ささいな変化はもちろんあって、中州の形が変わったりはしたが、私の心のあり方は昔と変わらないよ」。知り合った頃はまだヒゲに黒いところがありましたが、76歳の今では真っ白になりました。

 

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ウッドロード 16の、お気に入りのスポット にて

 

ハウス・オブ・ハロップは、アメリカに残った最後のフライメーカーと言って良いのですが、その販売先は全世界でわずか4つしかありません(生産が追いつかないから)。レネ&ボニーといっしょに仕事をしているのは娘のレスリーと息子のシェーン。でも彼らは定職があるのでタイイングはお手伝い程度、つまり供給量はかなり限られています。なにせ米国の3店舗では、入荷してディスプレイのケースに入れた瞬間、左右からお客の手が伸び、あっというまに売り切れというのがお決まりのパターン。ヘンリーズフォークのトラウトハンターでは、シーズン中は毎朝ハロップさんが直接足を運んでフライを納品するのですが、片っ端から売れていく。フライディスプレイの空きスペースが、最新のハッチを物語るというわけです。もしお近くのフライショップで純正ハウス・オブ・ハロップのフライを見つけられたら……僕だったらがっさり買いますね。

 

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 ベイティス。羽化に成功して浮かぶもの、羽根が水面に囚われているもの、殻を脱ぎきれないもの……

 

創業以来、何十万という桁外れの数のフライを世に送ってきた彼らの作品(そう呼ばせてください)が、1本何百円で買えるというのは奇跡のようなものです。彼らの思考、彼らのテクニックは、2冊の著書と数多いビデオ、DVDが教えてくれます。 

 

 

東 知憲

CONSERVATION Sept 01

2021.09.02

Blooper

 

フートアウル規制について

 

 

長雨かとおもったら急に酷暑がやってきて、日本全土がゆだってしまった感がある今年。ここ数日は急に秋の気配ですが、酷暑で思い出しました。聞いたことがありますか?「フートアウル」。モンタナを中心としてオレゴン、ワシントン、カリフォルニア、ユタなどの西部各州で柔軟に採用される釣り規制のことです。

 

直訳すると「ホーホーフクロウ規制」とでも言いましょうか。Hoot というのは、フクロウの鳴き声のことです。林業に従事する人たちが山火事を防止するため、極端に乾燥する正午ごろになるとみんなで声を掛け合って仕事を早上がりすると言う慣習にさかのぼるものですね(チェーンソーなどは、硬いモノに当たると火花が出ます)。西部各州の魚類動物公園局はこの「フートアウル規制」を、夏の高水温期における魚の保護のために使っています。今年は全世界的に高温が続いており、たとえばモンタナでは、7月から8月のギャラティン、ミズーリ、マディソンリバーやイエローストーン国立公園内において、釣りは深夜0時から午後2時までに限るとされました。その時間を超えると水温が急上昇し、釣り上げた魚の生存が危ぶまれるというわけですね。

 

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高水温時には、手早い写真撮影すらも魚のストレスになる場合が…

 

米国西部のほとんどの地域で、気温が下がり安定したここ1週間で規制はおおむね解除されましたが、この臨機応変な資源保護策には見習うところも多いものです。「夏ヤマメ一里一匹」などと言いますが、果たしてその魚は水に帰して大丈夫なものかどうか? 真夏のこの時間帯に釣りをしてよいのか? 私は、夏こそ水温計を携行して、ちょっと魚がゆだってそうだな、と思えるときは釣りを止めるようにしています。自主的なフットアウル規制というわけですが、釣りの関係でそのような規制があまり採用されず、基本的に釣り人任せであるこの国では、自主規制がとても必要になってくるはずです。仮にそれが独り相撲であるように思えるときがあるとしても。

 

 

各州が提唱している、リリースした魚の生存率を高めるための指針を私なりにまとめて転載しておきます。

1. 狙っている魚に合った強さのタックルと、バーブレスフックを使いましょう。

2. 魚とのやりとりはできるだけ短めに切り上げましょう。

3. ネットは柔らかい、ラバーコーティングされたものを使いましょう。

4. 魚を扱うときはあらかじめ手を濡らし、エラを直接握らず、べたべた触らないように。魚も、できるだけ水から出さないでください。手に付いた日焼け止めは、魚に対して大きな害を及ぼす場合があります。

5. リリースするときは速い流れの中で、頭を上に向けて保持します。魚体を前後に揺するのはよくありません。

6. 自分に制限を課しましょう。

 

 

東 知憲

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