ESSAY Sept 16

2021.09.16

Blooper

 

25年の後に

 

 

レネ・ハロップさんについては、いつか詳しいストーリーを書きたいと思っていますが、彼と知り合ったのはたしか1996年。大手量販店に勤めていたことのある稲見一郎くんの紹介で、ヘンリーズフォーク・オブ・ザ・スネークリバーの流れるラストチャンスという集落に訪ねたのがきっかけでした。彼は脂ののりきった50代初頭、奥さんのボニーさんといっしょに家内制手工業のタイイングビジネスをずっと守ってきたプライドが直ちに感じられました。

 

アメリカンFF のビッグバンには、1971年の本「セレクティブ・トラウト」、1975年の「フライフィッシング・ストラテジー」が大きく寄与していますが、筆者ダグ・スイッシャー&カール・リチャーズと親しくつきあい、彼のコンセプトを洗練されたフライで実現したのがレネ・ハロップでした。「セレクティブ・トラウト」の冒頭では、おもにヴィンス・マリナロ、アーニー・シュウィーバート、アート・フリックら東海岸の先駆者たちに言及があるのですが、「ストラテジー」はハロップ、ローソンといったロッキー山脈周辺の若い才能たちに謝辞が捧げられている事実は、その数年の間にフライフィッシングの世界が音を立てて変わっていったことを暗示しています。彼のタイイングビジネスはまさにその時期に立ち上がったわけで、ハロップさんはあっさり「運が良かった」と言いますが、成功を収めるためには並々ならぬ努力と献身が必要だったはずです。

 

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4人によるフライ。開いているボックスにはボニーさん考案の「パラスピナー」が

 

ブラックフット族とラコタ・スー族の血を引くハロップさんは「土地の力」を信じています。先祖たちが暮らしたこのアイダホ州をほとんど出ることがないのはそのせいで、1993年に招聘に応じて来日したのはきわめてまれな事だったようです。自分たちが生まれ育った、パワーに溢れた土地の声を聞きながら暮らすというのが彼らの日常。夏の夕暮れ、ラストチャンスの川べりには白いシボレー・スコッツデールが停まっていて、レネとボニーが山に沈んでいく夕陽を見つめています。

 

彼は言います。「急いで動くと、いろんなことを見失う。マスを追いかけるのもシカを追いかけるのも、心構えは同じだよ。ゆっくりと、注意を払い、五感を研ぎ澄ますこと。ヘンリーズフォークを釣っていると、時間の感覚は消え去ってしまう。私が立ち込んでいる場所は、60年前と同じだ。ささいな変化はもちろんあって、中州の形が変わったりはしたが、私の心のあり方は昔と変わらないよ」。知り合った頃はまだヒゲに黒いところがありましたが、76歳の今では真っ白になりました。

 

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ウッドロード 16の、お気に入りのスポット にて

 

ハウス・オブ・ハロップは、アメリカに残った最後のフライメーカーと言って良いのですが、その販売先は全世界でわずか4つしかありません(生産が追いつかないから)。レネ&ボニーといっしょに仕事をしているのは娘のレスリーと息子のシェーン。でも彼らは定職があるのでタイイングはお手伝い程度、つまり供給量はかなり限られています。なにせ米国の3店舗では、入荷してディスプレイのケースに入れた瞬間、左右からお客の手が伸び、あっというまに売り切れというのがお決まりのパターン。ヘンリーズフォークのトラウトハンターでは、シーズン中は毎朝ハロップさんが直接足を運んでフライを納品するのですが、片っ端から売れていく。フライディスプレイの空きスペースが、最新のハッチを物語るというわけです。もしお近くのフライショップで純正ハウス・オブ・ハロップのフライを見つけられたら……僕だったらがっさり買いますね。

 

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 ベイティス。羽化に成功して浮かぶもの、羽根が水面に囚われているもの、殻を脱ぎきれないもの……

 

創業以来、何十万という桁外れの数のフライを世に送ってきた彼らの作品(そう呼ばせてください)が、1本何百円で買えるというのは奇跡のようなものです。彼らの思考、彼らのテクニックは、2冊の著書と数多いビデオ、DVDが教えてくれます。 

 

 

東 知憲

CONSERVATION Sept 01

2021.09.02

Blooper

 

フートアウル規制について

 

 

長雨かとおもったら急に酷暑がやってきて、日本全土がゆだってしまった感がある今年。ここ数日は急に秋の気配ですが、酷暑で思い出しました。聞いたことがありますか?「フートアウル」。モンタナを中心としてオレゴン、ワシントン、カリフォルニア、ユタなどの西部各州で柔軟に採用される釣り規制のことです。

 

直訳すると「ホーホーフクロウ規制」とでも言いましょうか。Hoot というのは、フクロウの鳴き声のことです。林業に従事する人たちが山火事を防止するため、極端に乾燥する正午ごろになるとみんなで声を掛け合って仕事を早上がりすると言う慣習にさかのぼるものですね(チェーンソーなどは、硬いモノに当たると火花が出ます)。西部各州の魚類動物公園局はこの「フートアウル規制」を、夏の高水温期における魚の保護のために使っています。今年は全世界的に高温が続いており、たとえばモンタナでは、7月から8月のギャラティン、ミズーリ、マディソンリバーやイエローストーン国立公園内において、釣りは深夜0時から午後2時までに限るとされました。その時間を超えると水温が急上昇し、釣り上げた魚の生存が危ぶまれるというわけですね。

 

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高水温時には、手早い写真撮影すらも魚のストレスになる場合が…

 

米国西部のほとんどの地域で、気温が下がり安定したここ1週間で規制はおおむね解除されましたが、この臨機応変な資源保護策には見習うところも多いものです。「夏ヤマメ一里一匹」などと言いますが、果たしてその魚は水に帰して大丈夫なものかどうか? 真夏のこの時間帯に釣りをしてよいのか? 私は、夏こそ水温計を携行して、ちょっと魚がゆだってそうだな、と思えるときは釣りを止めるようにしています。自主的なフットアウル規制というわけですが、釣りの関係でそのような規制があまり採用されず、基本的に釣り人任せであるこの国では、自主規制がとても必要になってくるはずです。仮にそれが独り相撲であるように思えるときがあるとしても。

 

 

各州が提唱している、リリースした魚の生存率を高めるための指針を私なりにまとめて転載しておきます。

1. 狙っている魚に合った強さのタックルと、バーブレスフックを使いましょう。

2. 魚とのやりとりはできるだけ短めに切り上げましょう。

3. ネットは柔らかい、ラバーコーティングされたものを使いましょう。

4. 魚を扱うときはあらかじめ手を濡らし、エラを直接握らず、べたべた触らないように。魚も、できるだけ水から出さないでください。手に付いた日焼け止めは、魚に対して大きな害を及ぼす場合があります。

5. リリースするときは速い流れの中で、頭を上に向けて保持します。魚体を前後に揺するのはよくありません。

6. 自分に制限を課しましょう。

 

 

東 知憲

FISHING TIP Aug 16

2021.08.19

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テンション管理の練習

  

 

実際のフライフィッシング、とくに大物を狙う場合になにが大事か。適切なタックル、キャスティングのテクニック、そして食わせやアワセのテクニック……もちろん重要ですが、そんなものは教科書やメディア経由でわりと容易に学べること。それとともに「トラブルを回避するための小さな手順を練習して身につけておく」ことも劣らず大事だと思います。ちょっとした空き時間でも練習できる、「でも多くのひとがやっていない」ことを取り上げてみましょう。ラインの平行巻きです。

 

最近のワイドでラージなアーバーのリールは、巻き癖が付かずにとっても使いやすいのですが、スプールが浅溝なので、偏って巻かれてしまうとすぐにフレームやフットにこすってしまいます。こすれてしまうと、魚が走ったときに所定のドラッグ設定よりもずっと上がってしまいますのでティペット切れを起こす可能性が大。ソルトの大物釣りでも、この平行巻テクはすごく大事ですけれど、皆さんあまり意識がないようで……。

 

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(偏ってゆるく巻かれたライン……崩れて食い込みかかっています)

 

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(テンションをかけて平行に巻いたライン……安定しています)

 

私が心がけている大きな事項の1つは、キャスティングでもファイトにおいても、「ラインのテンション」。ラインを巻き取るときは、それが移動にあたってでも、魚が引き出したラインを回収する場合でも、ロッドを持つ手の指を数本使って軽くラインを挟み、左右に素早く動かしながらできるだけ偏りがないように、かつ高めのテンションをかけて巻き取ります(ベイトキャスティングリールの平行巻装置=レベルワインダーを連想すると良)。魚がかかっていない場合はラインにテンションがたりないので指の関節で挟むようにして抵抗を作り、ラインをきれいに収めます。魚とのファイト中は、魚の引きが止まってからのポンピング段階で平行巻を行いますので、だいたいテンションは足りていると思われます(魚がこっちに走ってくる場合は別)。

 

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ラインの巻き取りでテンションが足りず平行巻ができていないと、偏ったユルユルのコイルになってしまいます。これは、もう一回引かれると崩れたり食い込んだりしますので、良いことはまったくありません。魚をバラす可能性がはなはだ高いです。自宅でのちょっとした空き時間を使って、フィールドに出られる日を思いながら、リールを見ないで平行巻をする練習をしてみませんか。写真の様に中指や薬指、小指にラインを掛け、左右に動かしながら巻きます。十メートルくらい巻いた段階で仕上がりを目でみて確認してください。大物を狙う人なら、バッキング位置での平行巻もぜひ練習を。いざトロフィークラスがキタ!!というとき、練習しておいて良かったと思われることでしょう。

 

 

東 知憲

CASTING TIP Aug 01

2021.08.01

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シングル&ダブル、最後に「引く」ための準備

  

フライキャスティングにおいて絶対的に大事な部分、それは最後のフォワードストロークです。その運動によってフライは前に運ばれ、プレゼンテーション・キャストとなって魚の目の前に落ちるわけですから。そこに至るあらゆる動作や調整は、完璧な一振りのための準備作業だという理解を持っておいてください。

 

さて、まずシングルハンド・キャストの話をしましょう。できるだけ乱れを作らず、効率の良い幅で、狙ったところに落ちるようなループのカタチを作るためには、ラインのテンション管理がとても大事です。ホールをどれくらい活用するかは、釣り場や状況によって大きく変わってきますが、避けたいのは、大事なフォワードキャストでの「テンション抜け」です。このテンション抜けをいちばん簡単に予防できるのは、ラインを持つ手を、ポーズの間に必ずリールのごく近くまで戻しておくこと。

 

写真を見てください。陸上での撮影ですが、バックキャストが終わってラインが伸びきるのを待っている瞬間。ホールを終えたラインハンドは、ロッドを持つ手の真下まで戻してあります。この状態ができていると、フォワードに入った時にフライラインのテンションが抜ける可能性が大幅に下がり、ホールを加える場合にも最高のポジションです。ラインを持つ手がこれよりもずっと前の位置に来ると、フォワードキャストの開始時にテンションが抜け、ラインのベリーは下がりながら、かつテイリング気味になるという辛い状況を招いてしまいます。

 

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次にツーハンド。下側の手は、シングルハンド・キャスティングでいうところのホール的な役割を担わせることができ、ぐいとロッドをねじ曲げることが可能なのですが、意識して練習しないと、なかなか使えるようになりません。最後のフォワードストロークでぐいっとティップを加速してやるには、上手で押しながら下手を引きつけることになるのですが、そのためには、バックのDループを作るときに下手を前に押し出しておかないといけません。押し出しが足りないと、後からの引きつけもできないわけです。

 

スペイキャスティングを教えていて、かなりの高率で見かけるエラーとして、「ソフトすぎるDループ」現象があります。バックストロークでのロッドティップのスピードが足りず、Dループにあまりテンションがないわけですが、バックストロークでの下手の軽い押し出しがうまくなると、1)Dループにたっぷりとエネルギーを与え、さらに 2)フォワードストロークでの引きつけの事前準備とすることができます。

 

私の師匠の1人であるマーク・ヒューバーさんの写真を見てください。最後のフォワードストロークの前の、この腕の位置関係を「キーポジション」などと言いますが、比較的体の近くの、きゅうくつでない位置に置かれた上手と、フォワードストロークの引きつけに備えて軽く鋭く押し出された下手から構成されます。スカンジナビアン、スカジット、そしてロングベリーのフルラインなどの別を問わず、この軽い下手の蹴り出しを練習してもらうことで、とつぜんキャストがうまく行くようになった生徒さんを多く見てきました。

 

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シングルハンドとツーハンド。キャスティングの方法は違いますが、それぞれ、スムーズなティップ軌跡に貢献し、ラインスピードをぐんと加速させるためのちょっとした注意事項があるというお話でした。ぜひ練習してみてください!

 

 

 

東 知憲

刈田敏三のテクニカルシアター

2021.07.15

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ライズを仕留めるノット  

 

 

フライ選択や使うノットなどは、人それぞれ。あるイベントにて。「・・・お勉強はこれくらいにして、さあ実釣タイム!!」しかしフライを結んでいた方の指先を見て・・・驚いた。フライにツノが生えているじゃないか。ただでさえ、楽勝じゃないライズを釣ろうという場面。「あっ、ティペット切り忘れてますよ」

 

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でもそのヒトは、ヒットの瞬間にツルッとティペットが抜けることがあって、ティペットの端を短く切るのが不安とのこと。しかし滑ってしまうノットは、いずれ抜けてしまうか切れる。どっちみちダメなのだ。

 

…そうだった。昔、自分もフライフィッシング手引書のままにクリンチ系ノットを使っていた頃には、ティペットのスル抜けがあったのを思い出した。いいのをバラした後にティペットを見ると。ノットがクルクルパーマに…そうクリンチ系ノットは、構造的にティペットが抜けやすい弱点があった。ティペットをねじって、先端を押さえるだけだから、どうしても止めが甘くなりやすいのだ。だからといってギュウギュウ締め付けても、プチっと切れたりした。

 

近頃は、細くても強いティペットができて、ミッジングや極小フライを使う時にも、心配は格段に減った。とはいえ、やはりノットは、ライズを狙うフライフィッシャーにとって最後の生命線ともいえる重要ポイント。ティペットのスル抜けやアワセ切れは、絶対避けたい。

 

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だから、様々なノットをあれこれ試してきた結果。ライズを釣る時には、こんなシンプルなノットを使っている・・・ただし結論は出たけれども、このノットの名称は調べきれていないし、ひょっとしたら本当に無名かもしれない。

 

このノットの特徴は、まず出来上がったノットが小さいこと。そして、ツルッと抜けることがなく、ティペットの持つ結束強度を損なわないこと。また、小さなフライ対応で、フリーノット的にも使えるメリットもある。つまりこのノットは、ノット自体で完結しているので、フックアイに頼って締め付ける必要がないのだ。以下に結び方写真を掲載しておく。

 

A) フックアイに通したティペット先端で、元ティペットを中にしたループを2つ作り、重ねる。

 

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B) 二重にしたループにティペット先端を、二回通す。ピンセットを使った方が、よりスムーズにノットを作りやすい。

 

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C) できたノットを十分に引き締める。この時にノットを水やツバで濡らせば、締め込みがスムーズになるのは、ノッティングのセオリー。ノットを指でつかんでフックアイまで持っていくか、フリーノット状態にしたままキャストするかは、お好み次第。

 

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カリタ式ノット。強いしツル抜けなし、のはず。ぜひお試しあれ。

 

 

 

 

水生昆虫研究家・フライクリエイター 刈田敏三

 

 

TACKLE TIP July 01

2021.07.01

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フライを見つけてゆっくり浮かび上がってくる魚。バクンとライズ。あせるな、急ぐなと自分に言い聞かせ、頭が下を向くのを待ち、満を持してぐいとロッドを立てる。バチンというイヤな音とともに、力なくこちらに飛んでくる、フライのないリーダー。「ああ……」。そんな悲しい出来事を避けるために、果たしてなにができるでしょうか?

 

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質の高い、柔軟なフロロカーボンのティペットは、私たちの渓流フライフィッシングを変えてしまったといっても言い過ぎではないでしょう。フロータントを塗ったフロロカーボンは水面に乗せておくことができ、水よりも比重が高いことは細番手ではあまり問題になりません。ナイロンに比べて突出して高い耐摩耗性が、渓流環境に最適ということが分かってきました。渓流では、フロロカーボンティペットはナイロンのリーダー本体に結んで使うことになります。リーダーがフロロカーボンだと、太いところが一気に沈んでしまい、メンディングはできずデッドドリフトに大きく支障を来すからです。

 

しかしこの、ナイロン+フロロという接続には細心の注意が必要で、たとえて言うならばシラタキとワイヤーを結ぶようなもの。すこし引っ張るたびにワイヤーはシラタキに食い込み続け、いつかは切れてしまいます。木の枝にひっかかった、魚が掛かった、ファイトした……それらが生み出すテンションは、すこしずつフロロをナイロンに食い込ませていくのです。

 

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ではどうすれば良いのか? まずは、自分が使っているティペットの強さを、太さごとにしっかりと自分の手に教えておくことから始まります。日本の川で使うサイズ(私の場合は6x、6.5x、7x くらい)は、シーズン開始前、いやシーズン中でも随時、ケチケチせずにぶちぶち切って実感しておきましょう。そして、リーダーの結節がうまくいったかどうか、その手感に則って毎回判断します。強さは、ノットがない場合に比べて3割くらい低下しても仕方がないですが、半分ほどになってしまっているならあきらかに失敗。ノットが切れるとしたら、実際に魚を相手にしているときではなく、手元で仕上がりを確認しているときのほうがはるかに良いわけです。

 

そして、釣りの最中もノットを定期的にチェックして、ワイヤーがシラタキに食い込みすぎてはいないか、確認することが大事。自信を持って締め込み、きちんと強度も出ていると確認したノットが、1時間もすると急にブチンと切れることはまれではないからです。結局は感覚が大きな要素となるノット作り。そのためには、手の感覚の定期的なチューニングが必要になると思います。

 

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東 知憲

天塩川の初夏スイング — WildなLife

2021.06.02

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私のメインフィールド、天塩川はとても特殊な釣り場です。川幅は広く、魚は必ずしも多いわけではありませんが、きちんと釣りを組み立てていくと必ず報われる。ニジマスとアメマス、イトウが主な対象魚ですが、今回はニジマスの初夏の釣りに関して、私のメソッドと考え方をお教えしましょうか。

 

私は、フライをキャストしてスイングさせる釣りにこだわっていますが、ニジマスはスティールヘッドやアトランティック・サーモンなどの魚とは行動が大きく違います。生殖活動をすべてに優先させるようギヤが入った遡上魚ではなく、基本的には川に居着いている魚なので、その行動は摂餌がメイン。6月になると天塩のニジマスは水生昆虫をよく捕食するようになり、ライズすら見せます。そんな魚をスイングで釣るためには、水面近くでウエットフライないし小型のチューブフライを使うのが向いています。

 

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ラインはエアフロのD/X ヘッドに10フィートのポリリーダー+ティペットを付けますから、実質上50フィートというミッドベリーに近いシューティングヘッドと考えることもできます。通常のスカンジナビアン・ヘッドやスカジット・ヘッドよりも長いのでキャスティングのテクニックはより高いものが求められますが、あまりランニングラインをたぐり込まずに投げられますのでテンポが良く、効率はずっと上がります。

 

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私がやっているこの釣りは、時合いの頂点にいる魚しか相手にしていません。時合いというのは、水温、水量、気圧、光量、その他のさまざまな要因が影響してきますが、そのベストな時合いの中でも、スイングされているフライに反応するのは一部の魚でしかないのです。最高の効率を求めるならば、インジケーターをつけてニンフを流したり、シンキングラインでリトリーブしてやれば良いのはわかっていますが、それでも私はスイングの釣りにこだわりたい。リトリーブの釣りは休憩がなく、釣れないとほんとうに辛いのですが、スイングの釣りは違います。キャストしてラインの形を整え、スイングに入れば、回りを見回したり環境を楽しむ余裕も出てきます。フライが真下まで泳ぎ切ったら、またリズミカルにキャストを繰り返すわけです。10人並んでも、ローテーションを組んでまったく問題なく釣りができます。

 

神奈川生まれながら、北海道に長く住んだある人が「天塩川って、最後にたどりつく釣り場だね……」と言っていました。1日に何回か来るであろう「ズーン」というアタリを心から楽しむことができれば、あなたはスイングのとりこになってしまうでしょう。昔と比べると、何が何でも魚を引っ張り出してやろうという野武士的な釣り人は減ってきたようで、この周辺では大人な釣りのカルチャーが生まれつつある気がします。これだけ釣ったぞ、という承認欲求や競争心に基づく釣りから、究極の満足感を求める自分中心の釣りへ、意識が動きつつある感じですし、この川をスイングで釣りたいと思う人が増えるのは大歓迎です。私個人としては、歯磨きと同じように日常的に、ストレスを感じることなく釣りができるすばらしいフィールドなんです。ぜひあなたも、一度。

 

 

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Wild Life 店主 千葉 貴彦

SIMMS & Scott Pro Staff

森村義博の漂飄亭日記

2021.05.21

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真剣な遊び、何を優先する?

 

 最近のラージアーバーリールは、デザイン的に見ても洒落たものが多い。以前は、ハンドルと反対側にカウンターバランサーが取り付けられていたものが見受けられたが、最新のモデルではスプールの重量配分をうまく行い、バランサーを目立たなくした製品も登場している。カラーもいくつか用意されているから好みのものを見つけられるだろう。ラージアーバーリールは、ラインキャパシティが同じならレギュラーアーバーより口径が大きくなってしまうのは仕方がないことで、ロッドとの見た目のバランスが気に入らない人もいるだろう。実は僕もそうだったが、結局は慣れの問題だと思っている。

 

 この前のエントリーではラージアーバーリールのメリットを取り上げたが、それではレギュラーアーバーのリールの出番が一切なくなってしまったというと、そんなことはない。かつて常用していたオービスのCFOやハーディーのライトウェイトシリーズは、今もって古さを感じさせない普遍的ともいえるデザインはもちろん、前述したようにバックラッシュを起こさないドラグ(自動)調整性能は素晴らしいと思う。リールの逆転音にも魅力を感じている。フライフィッシングは趣味の世界であり、僕自身も普段はデザインやカラーリングも含めたロッドとのマッチングでリールを選択することの方が多く、今もレギュラーアーバーのリールをよく使う。

 

 

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 右利きの僕は、手持ちのリールをすべて左巻きにしている。フライフィッシングをはじめた時からのことで、左巻きのメリットを知っていたからでも何でもなく、この釣りを教えてくれた友人が左巻きにしていたので、右にならえ、をしただけ。しかし今は左手巻きに大きなメリットを感じている。大型魚は大きなパワーと持久力を持ち、ファイト中には何度も機敏な動きを見せるのが普通だ。こうした走りと動きに、利き腕によるロッドワークと左手によるリールファイト(=ラインコントロール)を同時に行えることは大きなアドバンテージになる。昨年初めて北海道の釣りを経験した友人は、次の釣行に備えてリールを左手巻きに変換している。

 

 大物で思い出したが、北海道の対ニジマス用のリールと、大型ヤマメが出る可能性の高い本流河川用のリールにはWFラインを巻いている。フライラインのヘッド部以降が細いWFラインは、DTより水の抵抗が少ないからだ。大型のニジマスが掛かったときに、水中に突き刺さっているフライラインの方向とはまったく別の方向にジャンプすることは良くある。その時、フライラインは急激なカーブを描きながらも、ヘッド部分が水面から持ち上げられるのだが、水中に入っている水の抵抗は相当なものだと思う。そんな抵抗を少しでも和らげられたらという思いは強い。よってWFなのである。

 

 僕はもうじき65歳になる。この先、大型魚やとびきり美しいメモリアルフィッシュに出会える回数は少しずつ減っていくだろう。釣りに運不運はつきものだが、ロッドやリール、ラインの選択やリーダーシステム、ティペットの接続方法なども含め、今後も万全の体制で流れに立ちたいと思っている。

 

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森村義博の漂飄亭日記

2021.05.16

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レギュラーVSラージアーバー

  

 僕のフライフィッシングは、1975年にブローニングのグラスロッドとマーチン62からスタートした。当時のフライリールは、渓流域での釣りに限って言えば、ラインを収納できればそれで良し、という考えが一般的だった。バッキングラインは、フライラインとリールのフレームとの隙間調整に巻かれる程度で、ラインの選択によっては省略されてしまうことも多かった。ドラグシステムがどうのこうのと話題に上ることもなかった。  

 

 リールのドラグ性能の重要さに気付いたのは、北海道に出掛けるようになってからだ。ワイルドなニジマスの走りは想像を超えていた。40 cm台後半から50 cm台のそれは、最初のジェットランでバッキングまで軽々と引き出すパワーを持つものもいた。厚い流れに乗って走り下るマスを止めるのは危険だ。スプールの端に手の平を掛けて止めようとすれば、その瞬間に切られるか、ジャンプでフライを外された。ティペットは今とは比べられないほど弱く、3Xという太さでも不安を感じることがあった。

 

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 レギュラーアーバーのオービスCFO(じつはハーディー製)やハーディー各製品のドラグ機構は、単純ではあるが、魚の走りに音を上げてバックラッシュを起こしたことは過去に一度もなかった。しかし大きなデメリットがいくつかある。マスに走られてラインを、さらにバッキングを出されるという状況に近づくほど、つまりスプールの軸が細くなれば細くなるほど、抵抗が増してリーダーやティペットに大きな負荷が掛かるということが1つ。これは、リールから少しずつ手でフライラインを引き出していくことで体感できる。はじめは軽い力でスルスルとラインを出すことができても、軸径が細くなればなるほど、引き出しに大きな力が必要になってくる。実際の釣りでは、マスが引き出したラインの負荷に加え、ロッドが曲がることによるガイドの抵抗も乗ってくる。

 

 さらには、ライン回収の遅さ。やりとりとしては、マスの動きが一瞬止まった隙にラインを巻きとるのだが、レギュラーアーバーは軸径が細くなっているから時間が掛かる。マスを掛けた場所が川原であれば、こちらも足を使って距離を縮めつつラインを巻き取るのだが、一生懸命カリカリカリカリと巻いてもはかどらない。何とかマスとの距離を縮めても、また走られて軸径が細くなり、回収に手間取っている間に障害物に入られたりしてジ・エンド……こうした悔しい思いは何度も経験している。めったにお目に掛かれないサイズのヤマメやニジマスならなおさらだ。ラージアーバーリールは、こういったシチュエーションにこそ効果を発揮する。

 

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 ラージアーバーの巻き取りスピードはレギュラーアーバーの比ではない。立ち位置の関係からマスとのファイト中に自分が動けない状況下はもちろん、ポイント移動時でも素早くラインを巻ける。瞬発的な走りのスピードと瞬時の方向転換、激しい首振り、ローリング、予測できないトリッキーな動きの代表は言うまでもなくヤマメ。大型、とくに35cmを超す本流ヤマメは、掛かった瞬間から一気に下流に突っ走る。動きが止まったとしても油断はできない。すぐさま方向転換して水中の岩に回り込んだり、岸寄りの障害物に突っ込む。スピードに追い付いていくのは意外とむずかしい。

 

 一方ニジマスは、掛かった瞬間、流れ下りながらも水面で大きく体をうねらせ、豪快なジャンプも見せる。その飛沫の大きさにビビっていては、マスに主導権を握られてしまう。ヤマメもニジマスも、とにかく出されてしまったラインの回収が急務だ。ラージアーバーのメリットはまさにここにある!と言っても過言ではない。魚の動きが止まったわずかなチャンスにラインを巻き取りリールファイトに持ち込むことで、釣り人側に主導権を引き入れることがもっとも重要だ。また、ラインの巻き癖が付きにくいことも特筆すべきだろう。

 

 

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刈田敏三のライズシアター(皐月)

2021.05.03

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ミドリとイエロー  

渓谷は、すっかり新緑となり、フジの花が鮮やかに咲き始めていた。景色も良いが、フジが咲けばモンカゲロウやオオマダラのハッチが来る。4月27日11時50分、荒川は快晴。それでもモンカゲロウのシャックが次々と流下・・・とそのシャックに紛れるように来たのは、ミドリ色をしたダン。この小さなメイフライはマダラカゲロウの仲間だが、フライフィッシングの話題としては最もニューフェイス系で、ちょっと前のフライフィッシングの手引書には掲載されていないほど。それなのに、春から晩秋までハッチが続き……いやハッチだけでなく、ゾロッと集団で来るスペントが驚きのライズシーンを引き起こすスーパードリフターになる。だから今やフライフィッシングのメイフライ代表種といっても良いぐらいのポジションになっている。また生息量が多いこともずば抜けていて、ライズを意識するフライフィッシャーには価値が大きい。さて、これは誰でしょう? 

 

 

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そうそう、初夏といえばミドリカワゲラのハッチシーズンでもある。アメリカなどではこの近縁種を「イエローサリー」と見たままに呼ぶけれども、日本ではなぜか「ミドリ」になってしまっている。このミドリは山地渓流にいて、初夏に陸上羽化でアダルトになる。陸上羽化というと「ふ〜ん」と安く見られがちではあるが、このミドリは、水際でハッチをして岩盤沿いの流れにポトリと落ちるという生態のキャラクター。なにせハッチに時間がかかる宿命で、ウイングをメイフライのように立てたままウロウロした挙句、初夏のヒュンという川風に吹かれて落水するのである。なお、ミドリのハッチは9時から12時頃に多い。だから、ミドリのハッチシーズンになるとヤマメなどのライザーは流心では待ちきれず、岩盤や流れに突き出した岩のキワへやってきて、ミドリが落ちてくるのを待つようになる。これが面白い。たとえその時ライズが見えなくても、ミドリがハッチする岩盤脇へフライをポトリとやればパシッと出てくるのだ。釣り上がり系ではあるけども、決してブラインドキャストじゃない。この季節独特の狙い撃ちだから楽しい。

 

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ミドリが渓畔の木枝に止まっていたり、飛びまわる姿を見かけたらチャンス到来。それから流れに面した岩盤などをよく見れば、ミドリのハッチしたシャックがいくつも張り付いているのが見られるはず。双眼鏡を使うと素早くチャンスを見つけられる。双眼鏡は、ライズを狙う者にとって、完全に釣り道具なのだ。

 

ミドリカワゲラの生態としては、午後にソワソワと移動、あたりかまわず飛び回るのはオス。メスをセカセカと探し回っているので、流れのあちこちに落ちる。オスはメスよりやや小型なのが特徴。メスは、オスよりやや大型で体長8~9㎜。夕方ごろから飛び出してきて、産卵条件の適した平瀬に何度も着水して卵塊を産み落とす。もちろんこの時も素晴らしいライズに出会えるチャンスである。

 

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フック・・・TMC206BL #16
アブドメン・・・シルクミシン糸50番 クリーム色
セグメント・・・モノカラーモノフィラメントミシン糸 #100スモーク色
ソラックス・・・ヘアーズイア スレッド
ウイング・・・ヴェインファイバー キナリ
スレッド・・・ベネッキ UFペールイエロー

※アブドメンは、セグメントを巻いてからUVレジンでコーティング
ソラックスやボディの一部は、COLOR MASTER水性顔料マーカー DAFFODIL YELLOWで着色

 

解答:前述のミドリ色のメイフライダンは、エラブタマダラカゲロウです! 

 

 

水生昆虫研究家・フライクリエイター 刈田敏三

 

 

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