RIVER TIP July 05

2020.07.03

bigeye

 

 

梅雨空はいつまで続くのかという感じですが、明ければいきなり盛夏ですね。源流が呼んでいるという感じですが、外に出づらい雨模様の日はフライの準備をするにもよい機会。今回は、キャスティングとプレゼンテーション性能に基づく、渓流用フライの仕分けの仕方をご説明しましょう。リクツっぽいのは性格のせいなので、勘弁してください……。

 

日本の渓流では、ティペット部にスラックをつくってドラグフリーで流すという方法論が欠かせないことはもうご承知の通りです。岩井渓一郎さん、里見栄正さんたちがオリジネーターとして確固とした足跡を残され、僕の同時代人としては嶋崎了さんや渋谷直人さんたちが活躍されています。「どれくらいの長さのドリフトを目指すのか?」というのは、釣り場の特徴、魚の気分、また使うタックルや美学によって大きく異なってくるわけですが、私は数十センチではなく1メートルくらいは自然に流せることを前提にタックルを組んでいます。

 

私の渓流での釣り方は「ぜったいにティペット部をターンオーバーさせないで残す」というネガティブ・カーブキャストを前提としたものです。これ以外にもティペット部にスラックを作る方法はいくらでもありますが、私はこれが一番歩留まりが良いので使っています。

 

ネガティブ・カーブキャストにおいて、フライの飛び方は大事です。ごくかんたんに言うと、空中を飛ぶフライにはよい感じの「ブレーキ」が掛かって欲しい。リーダーはフライを行かせようとするけれど、フライが抵抗して前にいかない感じがあれば、サイドキャスト気味で投げるだけで、ティペットがターンしきれないでリーダー全体がU字ないしV字に落ち、自然に流れるという段取り。セミオートマチック・システムです。1回ごとの差は小さくなり安定するので、快適なリズムで釣れる。で、いま梅雨時の家の中でやってもらうことのご提案は、フライの飛び方チェックです。あたりまえのことですが、フライが落ちるのは自分のまえ何メートルも先ですから、正直にいってどれくらいスラックが入っているのか、このフライはエアブレーキが利かないのか、よく掛かるのかわからない。そこで、自宅で検査をしましょう。この時には、大事なことがあります。

 

○ 現場で使える、空気抵抗が小さめのフライを「基準」として決めておく

 

です。私は、ドラッグがかかろうが何だろうがある程度のアピールを失わない、ディアヘア・カディス (DHC) が基準ですが、スタンダードのままではちとターンオーバーしやすいので、ウイングの下にはCDCを仕込んでブレーキをかけています(たとえば向かい風の時などには、CDCなしのほうがちょうど良かったりしますけど)。

 

IMG_0485

 フライボックスのストックの中から6本を選んでみた。中古もあるので不細工ですがご容赦!

 

テストの段取り……まずは自分の位置を決めます(私は床に正座します)。何にも結んでいないこのDHCを力一杯前に放り投げて、その到達距離を10とします。床に、そのまま置いておけばいいでしょう。次に、同じようなフックの、同じサイズの別のフライを、同じく力一杯に投げてみましょう。パラシュートなんかは「7」くらいの位置に落ちるかも知れません。コンパラスタイルに巻いたCDCダンなどは、ぜんぜん前に飛びたがらなくて、「5」くらいのところに落ちるかも知れません。オーバーサイズのハックルを巻いたスパイダーもそれくらいでしょうかね。

 

こうやって、自分の好きな巻き方をした各パターンの「飛びやすさ」をざっくりと理解しておけば、フックサイズやワイヤーの太さを少し変えた時、また風などの外的条件、ハッチする昆虫、流れのタイプなどによって、最適の「ターンしなさ加減」を作り出すことができるのです。ハックルを厚く巻くと、抵抗は増える。ウイングの量を増すと、抵抗は増える。ファインワイヤーのフックに変えると、質量も減るのでフライは飛びにくくなる。ポストがカーフテイルかエアロドライ・ウイングかでも違う。なにをどうすればフライの飛び方がどうなるか、だんだん分かってきます。そうすれば、プレゼンテーションの形もどんどん良くなって、結果魚が釣れるようになる……というわけ。私は最近、TMC112Yなどのファインワイヤーのフックに巻いた定番クイルボディ・パラシュートの「飛ばなさ加減」に、改めて惚れています(写真下のいちばん左)。このあたりの詳細はまたセミナーか何かで、解説したいと思っています!  では今日はこのへんで。

 

IMG_0486

 左側があんまり飛ばないフライ、右に行くに従ってよく飛ぶ。

右から2番目が基準のディアヘア・カディス (DHC) 

 

 

東 知憲

SALTWATER TIP June 15

2020.06.17

Port_Higashi

 

 

こんにちは皆様、またまたお久しぶりです。なんだかやっと、場面によってはマスク外しても睨まれないような感じになってきましたね。このまま順調に、できるだけ早くあちこち釣りに行けるようになれば……。梅雨空の隙間はもう夏、ソルトウォーターの雰囲気がやっと出て参りました! とはいえ、ワタクシの遠出はぜんぶキャンセル、釣りが許されている地元民はウハウハという情報も漏れ聞こえてきます。しかたないです……。

 

さて、今回「海のティップ」として取り上げたいのは、1つの「べからず」事項です。ソルトの釣りといっても淡水と大きく変わるところはあまりないのですが、最大に違うのが水の腐食作用ですね。カナダあたりの感潮域で釣りをしていると、気温があんまり高くなくてもリールがじんわりと腐食してきたりしますので気をつけないといけない(とくにアルミ地肌のリールなんてそうです)。

 

参照させてもらうのは、海リールの大先達であるシーマスター社の文書です。もはや会社としては存在しませんが、あらゆるリール屋さんが目標としてきた超高性能の製品を作り続けたブランドで、この名前を聞くだけでヨダレをジュル……と出す人もいらっしゃるのではないかと。オーナーで職人のボブ・マックリスチャンは完全主義で、リールの箱には必ず細かなトリセツが入っていました。

 

IMG_6662

 

 

その記述で注意したいのが、「リールは決して水に漬けないこと」「高圧噴射などで洗浄しないこと」というところ。世界トップクラスの耐久性を誇ると認められた製品ですら、用心して使えとキャプテン・マックは言っているのです。

 

私もキャプテン・マックや御大レフティー・クレーの注意どおり、リールは絶対に、絶対に海水に浸しません。シーマスターはすべて穴なしで、できるだけ異物の侵入を避けようという意思が感じられましたが、本体側のフレームに穴が開いている製品などはさらに用心して、ロッドを振らないときはポーチをつけたままにしておきます。本体の細かなパーツに染みこんだ海水は、なかなか除去できず、真水にちょっと浸したくらいでは取れない場合が多いようです。さらに、海水にはたいてい微細な砂や泥が混ざっていますので、パーツの摩耗を招いてしまうことになります。不用意に沈水させた後に回して「じゃりッ」と言わせてしまうと、アルマイト層が傷ついてかんたんに腐食してしまう可能性もあります。

 

私は友達から「大げさだね〜」と言われながらも、使うときはポーチを外す、タックルと置くときはポーチを付けるという作業を繰り返します。ロッドはある程度の消耗品ですけれども、リールは使い手の気配りしだいで、大きく寿命が変わってきますし、選び抜いた気に入っている道具だからこそ、大事に使いたいですから。私の実感ですが、最新のリールの中で沈水に100%対応しているものはほんとうに数えるほどしかありません。現在の製品の基本性能は昔と比較にならないほどですから、すこし注意するだけで、一生トラブルフリーで使えます。

 

 では、海を楽しみましょう!

 

東 知憲

斑点曼荼羅倶楽部 Presents — Quill Wing de Leon vol. 4

2020.05.13

コック・デ・レオンのルースター・クイルを活用する 基礎編 (2)

 Mitsugu_port

     

 

私家版シルバーマーチブラウン・フルチューニング仕様、ウイングにこだわるの巻 

  OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

まずは参考資料のご紹介

 

 野暮丸出しですけれど……ここでいよいよクイルウイングを巻き止める作業。それであの……なんだか安易な宣伝みたいで、すごく野暮でカッコ悪いのですが、赤面しきりで開き直って言います……クイルウイングの巻き止め方は、コレ見て参考にしていただけますと、もう微に入り細に入り、これでもかってくらい、上から横から下から左右のアングルから、おまけにクイルを挟んでスレッドを巻く指のなかまで、こってり解説させていただいております。やはり、クイルウイング巻き止めのノウハウやコツは、感覚に頼る部分が多いだけに、言葉よりも映像のほうがはるかに伝わります。ここでは、このDVDでは取り上げなかったウイング以外のコツや、この撮影当時にはまだ思い付いていなかった、そのほかの最新情報をご紹介させてくださいネ。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ウイングを巻き留めたあとの処理

 

 さて、ここからが今回の見どころ。クイルウイングを留め、余りをカットしてヘッドを巻く作業。ウェットフライを巻きはじめると、誰もがかならず痛感する「ウエットフライあるある経験」。巻きはじめた当初、いちばんの壁のようにおもわれたクイルウイングの巻き留め作業は、挑戦してみれば思いのほか簡単にクリア。ウイングを見映え良くキレイに付けられてヤレ嬉しやと、クイルの余りのファイバーを切り、ヘッドを巻いて完成させてみようとすると……余分をカットした瞬間、ウイングがグシャッとひしゃげる。

 ウイングを巻き止め、ヘッドを作ろうとスレッドを巻いたら、ウイングがどんどん潰れていく。カッコ良く小さくまとめたいのに、ウイングをしっかり立てようとすると、どうしても不細工なでっかいヘッドになってしまう。そんなこんなの難関をどうにか乗り越えて、ようやくヘッドセメントを塗布しようとしたら、さっきまで真っ直ぐ付いていたウイングが、知らないうちに左右どちらかに曲がっている……などなど。とにかく、それまでの作業を台無しにしてしまうトラブルの宝庫、魔の作業工程。コレなんとかしようじゃないですか。しかも簡単確実に。

 

 ウイングをしっかり巻き止めたら、クイルのファイバーの余りをすぐカットしないで、この余りの根元付近の両側に、ボドキンで瞬間接着剤をすこしだけ塗布。すると、瞬間接着剤がウイングの余りのファイバー内部に浸透して、ちょうどウイングを巻き止めたスレッドの下部分までを硬化させることができる。ここで大切な注意。ウイングに塗布するのでは断じてなく、余りのほうにほんの少量だけ染み込ませること。ウイングに瞬間接着剤が染み込むと、フライが水中で回転してしまうだけでなく、すぐにファイバーが割れてしまい、復旧させることができなくなります。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

フライを上から見てみる

 

 瞬間接着剤が完全に硬化するまでのあいだ、かならずフライを上から見ておくのも大切。このように、ウイングがフックシャンクの真上にまっすぐ巻き止められていることが理想でもあり基本中の基本。ビシッとまっすぐ巻き止めたウイングの舵取りバランス効果で、水中で不自然な揺れや回転を起こすことなく、揺るがない姿勢を保ちながら自然にスムーズに流れるウエットフライ。これこそ、スイング中のドラッグがかかった状態でも良好なフッキングをもたらせてくれるおおきな要因ではなかろうか。また、レオンのサドルハックルで巻いたスロートハックルのファイバーがフライの左右両側にもひろがって、フックの下側半分を扇状に覆うように巻き止められているところにも、ぜひ注目を。

 正しい位置に正確に巻き止めたクイルウイングのウエットフライに、このような体裁でハックリングしたロングファイバーなレオンのハックル。この組み合わせのフライが、ひとたび水流のなかでスイングすると……そんなスロートハックルのファイバーのうごきというか揺れというか震え方、もうたまらんデ……。流れのなかでフライ本体はビターッと不動のバランス姿勢でスイング、その両側でマダラ模様のサドルハックルのファイバーが水流の緩急に敏感に反応しながら常にブルブルユラユラと揺れ震えている。ゾクゾクッとくるほど魅惑的なうごき。なんていうかもう、マスに喰われるために存在しているような生き物に変身しておりますゾ。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ウイングの余りをカットする

 

 コック・デ・レオンのサドルハックルの振動の誘惑によろめくあまり、話がだいぶ逸れてしまったが、ヘッド処理の工程に軌道修正。瞬間接着剤をクイルの余りの根元部分に塗布し、硬化がすすんだ時点で、写真のようにカミソリをダウンアイのフックアイにあてがう。そして、その角度のまま上方向に切るというよりも、カミソリを左右どちらかに滑らせるようにスーッとうごかす。すると、いとも簡単に余りのファイバーを根元ギリギリからバッサリ切り落とすことができる。この方法だと、カットの振動や余計なうごきで意図せずウイングがズレたりすることもまったくない。ウイングもろとも切ってしまいそうで、心情的にウイングの方向からフライ前方に向けての逆方向からカットしたくなるけれど、慣れてしまえばダウンアイのフックだとコチラのほうが失敗がなく、かつ簡単。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

カットし終わった状態

 

 余りのファイバーの半端な切り残しや微細な突起などいっさいない、スムーズな切り口。しかも肝心なのは、カットした余りのクイルに瞬間接着剤を染み込ませていることで、スレッドの表面とスレッドで巻き止めた部分のクイルにも余りのファイバーを伝って適量の瞬間接着剤が浸透して硬化している。それでいてウイングへの悪影響はまったくない。これくらい小さくまとめた極小のヘッドにも関わらず、ウイングが抜けたり曲がったりすることもなく、耐久性も申し分ない。

 ウエットフライを極小のヘッドに仕上げると、そのぶん抵抗が軽減されてフライの着水と同時に速やかに水面下にフライを沈めるために有利、という機能面もあるけれど、なによりも美しくカッコ良い。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

そして完成

 

 白のスレッドを黒い油性マーカーで着色してヘッドを巻き、その後ヘッドセメントを塗布して完成。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

オマケ版その1 ヴァリエイション

 

 極細シルバー・オーバルティンセルとミラージュ・フラッシャブーとともに、赤いフラッシャブーも捩じり込んでボディを巻いた、ギラリと輝くブラッディ・ヴァージョン。血塗られたマーチブラウン。

 OLYMPUS DIGITAL CAMERA

オマケ版その2 リビング応用編

 

 トラディショナルなスタンダード・パターンのリビングに、この「捩じりティンセル・ボディ」を転用するのもたいへんおススメ。意外にも、どのようなティンセル・ボディのスタンダード・パターンにつかっても古典的なフライのイメージを損なうことなく、ほんのりモダンな雰囲気を醸し出しつつ、なかなかイイ感じに巻けますよ。アレコレお試しあれ。

 

 

 

備前 貢

B’s Fly Works

斑点曼荼羅倶楽部 Presents — Quill Wing de Leon vol. 3

2020.05.10

コック・デ・レオンのルースター・クイルを活用する 基礎編 (1)

 Mitsugu_port

     

 

私家版シルバーマーチブラウン・フルチューニング仕様、スロートハックルにこだわるの巻 

  OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

追憶のシルバーマーチブラウン

 

 思い起こせば、あれよというまに17年まえ。はじめてのホワイティング・ファーム訪問のときの思い出のひとコマ。サドルハックルやネックハックルなどの商品のためにスキニングされたあと、そのほかの使われない部位は破棄されて焼却処理されるまえの、バラバラになったコック・デ・レオンのご遺体安置所にて合掌したときのこと。血まみれのまま、山のように積みあげられた何百もの切り刻まれたレオンのご遺体。異臭が漂い、まるで生ゴミのようだ。その光景を見て、この道楽の罪深さの無常と懺悔の念ひとしお。一方で、込みあげる感謝の念。そこでふと、あるものが目にとまり、無言でしゃがみこんでしまったワタシ。「ビゼンさん、どしたの?」怪訝な顔つきで訝しむ、同行者およびスタッフの面々。

 ここはあえて不遜な表現を許してください。無造作に積みあげられた生ゴミのなかから、切り捨てられたヘン・レオンの両翼をムンズと掴みあげて、お宝を発見した海賊のごとく、それを捧げ持って頭上高々と掲げるや、いきなり声高々に、「これ、欲しい!これ、ください!」「な、な、な、なんで?」あのときの、皆さんのドン引きした表情が忘れられない。

 そうしていただいたレオンの翼を自宅に大切に持ち帰り、時差ぼけクラクラの帰宅早々、逸る気持ちを抑えられず、翼からセカンダリー・クイルを取り出した。その夜、フライフィッシング数百年の歴史のなかで、これまでまだ誰も試したことがなかったであろうコック・デ・レオンのセカンダリー・クイルを、はじめてクイルウイングとして巻いてみたときの感動と興奮が忘れられない。

 コック・デ・レオンならではのグッと胸に響く、美しく鮮明なゴマダラ模様がウエットフライのクイルウイングとして活き活きと立ちあがったあの瞬間。ご遺体安置所で「これはひょっとしたらひょっとして……」ピピーンとタイイング心に響いてきた淡い予感が、確信に満ち満ちてかわった瞬間だった……これはまちがいなく、スタンダード・ウエットフライにつかわれている伝統のクイル素材群に匹敵する、最高のクイルウイング素材になる! 奥底から心の琴線が震えました、あの日あの夜のフライタイイング。そのときに巻いた処女作が、伝統の銘鉤シルバー・マーチブラウンのウイングにレオンのクイルをつかったウエットフライだったのです。

 

 今もなお、レオンのウイングを巻き止めたシルバー・マーチブラウン風を愛用しているワタシ。いわば、コック・デ・レオンのクイル素材とワタシの長い付き合いは、常にこのフライと共にあったと言っても過言ではありません。

 本州で暮らしていた当時は、もっぱら里川や本流のアマゴやヤマメやイワナを狙って試行錯誤を繰り返す日々。そして13年まえに北海道に移住してからは、野性のニジマス、アメマスやオショロコマなどなどを相手に実践と改良を重ねてきた、レオンのクイル・ウイングをつかうシルバー・マーチブラウン。当初は従来のシルバー・マーチブラウンにつかわれていたヘンフェザントのウイングを、ただレオンのクイルに変更しただけだったアレンジ版は、すこしづつ変化しながら「私家版シルバー・マーチブラウン」へと進化していきました。「コレ釣れるよ!」とビックリマーク付きで自信をもってお勧めできるウェットフライのひとつ。現在のカタチはコレです。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

テイルとスロートハックル

につかうのは、なんといってもコレ。レオンのサドルハックル各色。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ボディ材

 ボディ用につかうのは、極細のシルバー・オーバルティンセルとオパール・カラーのミラージュ的フラッシャブー。これをそれぞれ二つ折りにしてボディ末端に巻き止める。ちなみに、つかっているスレッドはベネッキ・ウルトラストロングスレッド12/0の白。フックはTMC9300 の8番。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ボディを巻く

 で、このボディ材をダビングツイスターもしくはハックル・プライヤーに摘まんで、捩じりながらボディに巻いていく。このとき、ボディ末端の巻きはじめ1~2回転は撚りをかけず、ティンセルとフラッシャブーをそのまま同時に巻いて、そこから捩じって巻いていくとボディ末端に軽くテーパーがかかってスムーズでキレイなボディになる。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ボディを巻き止める

 捩じって巻いた素材の撚りをここでほどいてフラットにして巻き止めてカット。その際、素材の余りを根元ギリギリにカットしてしまうのではなく、ほんの少しだけ残してカットする。その後、その余りの部分を爪先でボディに押しつけるようにして圧縮する。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ボディ完成

 するとアラおもしろい。巻き止めたスレッド跡がまったく見えないスッキリしたボディが出来あがる。このようにティンセルとフラッシャブーを捩じって同時に巻くことで、ボディ全体が微細にデコボコしたボディになる。陽の光を受けると、複雑かつ微妙に乱反射して、ときにはまるでマダラ模様の暗色の羽根が後光に包まれているようにも見える(この見え方が最大のミソ)いかにもな生命感を感じさせる。まるで羽化途上のカディス・ピューパやガガンボ、あるいはヒラタカゲロウなどのイマージャーが外殻と中身のあいだにまとう空気膜による反射、いわゆるイマージングガスを誇張表現したような印象。耐久性も申し分ない。従来のシルバー・マーチブラウンのように、使用中にリビングがズレたり、ほどけたりしてフライが壊れることがない。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

スロートハックルを巻き止める

 ダブリングしたレオンのサドルハックルを、フックシャンクに巻き止める。巻き止めた位置にご注目を……ココすごく大事。ボディ材を巻き止めたところではなく、フックのアイの直後に巻き止めている。あとでスレッドでハックルを巻き込んで、スロートハックルの位置と角度を調整するためと、ウイングを巻き止めやすくするための細工。

 OLYMPUS DIGITAL CAMERA

スロートハックルを巻き止める(その2)

 この位置にスロートハックルを巻き止めたら、余りのほうを折り返してスレッドで3回転ほどしっかり巻いておく。こうして止めると、ハックリングする際に抜けることがない。ソフトハックル・パターンなど特に有効なテク。また、もちろんパートリッジなどのパラッと巻くハックル素材全般に最適。

 

 OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ハックリング

巻き止めた位置でレオンのサドルを2~3回転ハックリング。

 OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

スロートハックル処理

 従来通りの方法のように、フックシャンク上側のハックルを後方に押し下げるようにスロートハックル化させるのではなく、シャンク上側のハックルはカットするか指先でむしってしまう。これもすごいコツ。上方向に突き出ているハックルをスレッドで巻き込んで下側に押し下げると、量が多くなり過ぎるだけでなく、左右の形状バランスが不自然になり、フライ自体のバランスも崩れやすくなる傾向にある。なので、フックシャンク下半分のハックルだけにしておいて、そのままスレッドで2~3回転ほど後方に巻き込みながら、スレッドの位置をハックリングしたストークの後ろ側に移動させつつ、スロートハックルを安定させる。この、ストーク後方とボディを巻き止めた位置の中間のところの溝というか凹みがウイングを立てるためのスイートスポットになる。

 

 また、コック・デ・レオンのサドルは、ストークからファイバーの生えている生え際のところが最もハリが弱く、水流の抵抗に負けやすい。なので、この数ミリにも満たないファイバーの根元部分をスレッドでしっかり巻き込んでおくだけで、ハックルに適度なハリとコシがつく。なので、こうしておくと流れの抵抗を受けてのハックルの振動や耐久性がまったく変わってくる。(どんどん続きます)

 

 

備前 貢

B’s Fly Works

スコットのフレックス・レーティング

2020.04.29

もはや伝説ともなっている手法。初期のスコットが行っていたじつにユニークな、手間の掛かる品質管理法が「フレックス・レーティング」でした。製造したブランクに所定の負荷を掛けて曲げ、その数値を記録しておく作業です。昔のグラファイト・プリプレグは厚く、素材の各部でムラがありましたから、ブランクごとに硬さのばらつきが生まれました。それをなんとか克服し、出荷するロッドにすべて「スコット・フィーリング」を持たせるために創業者ハリー・ウィルソンとラリー・ケニーが考案した方法です。

 

HW LK

 

硬く仕上がったティップに柔らかく仕上がったバットを組み合わせると、自分たちが目指したアクションとはまったく違ったロッドが生まれてしまいます。基準よりも柔らかいティップに、硬いバットを組み合わせても同じです。つまり、スコット・フィーリングを維持するためには、柔らかいティップには柔らかいバット、硬いティップには硬いバットを組み合わせる必要があったのです。当然、同一モデル内で「硬めのロッド」「柔らかめのロッド」を生み出すことになってしまいますが、ほぼカスタムショップであった初期のスコットでは、むしろそれが有利に働きました。お客様の用途と好みに合わせて、ロッドの細かな選択肢を提供できたのです。

 

Scott_sig

 

もしお手元に、サンフランシスコ時代ないしバークレー時代の2ピースロッドがあれば、手書き文字を見てみてください。たとえばサンフランシスコ時代のこのロッドには#G959-11-4240と記されています。最初のG959 は、Gシリーズの9フィート半、9番指定のロッドを意味します。おそらくカリフォルニアのスティールヘッド用として作られたものですね。次の「11」こそ、フレックス・レーティングの数字。1ケタ目はオモリを付けた状態のティップが「1単位」ぶん、2ケタめは継いだ状態のロッドが「1単位」ぶん曲がったことを意味しています。仮にこれが「12」であれば、継いだ状態のロッドが「2単位」ぶん曲がったことになります。(この数字は、スコットが独自に開発して使っていたディフレクション・チャート上のもので、センチやインチ表記ではないことにご注意ください)。ちなみに、いちばん最後の4240は通しのシリアルです。

 

Tubes

 

ではなぜ、いまスコットはフレックス・レーティングとマッチング作業を止めてしまったのか? 答えは簡単、その必要がなくなったからです。時代が進むに連れて素材は薄くなり、ファイバーの均一性も増しましたので、ブランクのばらつきは最小化しました。1本1本硬さをチェックし、理想の組み合わせを求める労力と時間は、デザイン作業に回すことができますので、結果としてさらに高品質の、個体差のないロッドが生まれているのです。ロッドを曲げてチェックするのは、デザイン通りにブランクが上がっているかどうかの確認作業です。ちなみにシリアルナンバーは、現在も創業以来の通し番号として継続されています。

 

Flexing

 

社長ジミー・バーチが語る現在の方向性と最新モデルに関する情報は、現在発売中の『フライフィッシャー』誌に掲載されていますので、ぜひご一読ください。ハリーとラリーが目指した「釣り場で最高の性能を発揮する道具を作り出す」というこだわりは、いまも引き継がれていることをご理解いただけるでしょう。

B’s Fly Works Presents — Quill Wing de Leon vol. 2

2020.04.27

コック・デ・レオンの逆襲 基礎編  

 

 Mitsugu_port

     

 

コンプリート・ウイングからクイルをバラして炙って直して巻いてウットリの巻

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 コック・デ・レオンのルースター・コンプリートウイング。色の濃淡やマダラ模様に多くの種類があるレオンのルースター・ウイングとしては典型的な色柄のタイプ。ここで単純かつ素朴な疑問…そもそも、このコンプリートウイングから一体どうやってクイルウイングを取り出せばよいのでしょうか…?。聞けば、ここでかなり多くの方々が(ちょっとおっかなビックリ)尻込みしておられるご様子。

 

 ウイングにズラッと並んだ一本のクイルの先端をつまんで引っ張ってみてもビクともしない。さりとて、ハサミで根元からカットしようとすると、とても硬くて切りにい。強引に切ろうとすると、同時にほかの羽根まで切ってしまうトラブルも多発。そして、この方法だと最初の1~2本はよくても、切り進めているうちにどの箇所を切ったのかわからなくなってしまい、いつしか左右両側のペアが揃わなくなることがよくあるという致命的な欠点がある。ハテ、どうしたものか……。 

 

 OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ベキッと折って取り出す。

 

 そのお悩み、びっくりするほど簡単に解決できます。クイルの生えている方向にひっぱっても、硬い皮に守られたクイルはビクともしません。なので、どうするのかというと、取り出したいクイルの上側に生えているクイルの根元をまず最初にしっかり摘まんで、それを一気にベキッと反対側に折ります。このばあい、折るというよりも「クイル同士の関節部分を外す」といった表現のほうが適切かも……。そのあと、取り出したいクイルを同じようにベキッと折ります。そしてクイルを皮から剥がすようにひっぱるとアラ簡単。写真のように、ストーク根元からキレイにクイルを取り出すことができます。しかも、こうやってクイルを折って取り出すと、外した部分が明確なので、左右両側のクイルのどの部分を外したか、あとになってもすぐにわかるという寸法。

 

 この方法だと、ネックハックルのケープやサドルのスキンから、ハックルをプチッと抜くのと大差ない気分でクイルを取り出すことができます。ちなみに、こうやってクイルを取り出すと、その根元に生えていた未成熟なごくちいさなクイルもろともスキンから剥がれることになります。このミニチュア・クイル素材、じつは素晴らしいハックル素材になります。コレ、当コーナーのレオン・シリーズ・マニアック応用編にて改めてご紹介します。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

クイルの割れや曲がりを直したい。

 

 さて、コンプリート・ウイングからクイルを取り出してはみたもののアレ残念。クイルのファイバーが割れていたりねじ曲がっていたりしているものがあったりします。写真はその典型的な例。下側のクイルはキレイに整っているのに、上側のクイルはファイバーが見るも無残にバッラバラ。生前のレオンが飼育ケージのなかでバサバサ暴れるたびに左側の壁に翼をぶつけていたために、このような有様になってしまったものとおもわれます。このコンプリートウイングは、全体的にファイバーの割れと損傷があまりに酷く、とても販売用にはできないと破棄されようとしていたもの。しかし色調や模様はすばらしく見事なので、捨ててしまうにはあまりに忍びない。というわけで、この記事のためにちょいと拝借してきたものがコチラです。このヒジョーに残念なクイルをつかって、クイルのファイバーを修正してみたいとおもいます。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 ワタシが実践しているお手軽洗浄方法、まずはぬるま湯でクイルをザッと濡らしたのち、ご家庭のキッチンにはかならずあるママレモン的な中性洗剤(食器洗い洗剤なら大抵どれもおなじような気がする)をクイル表面にひと垂らし。そして、クイルの根元から先端部分にむかってスーッと3回ほど撫でるようにして洗ったら、再度ぬるま湯で洗剤を洗い流しておく。そのあとキッチンペーパーかなにかにクイルをギュッと挟んで水気をとり、そのまま乾燥。

 

 写真は洗った直後。この時点では、なんだか悲しくなるほどファイバーがバラバラでみすぼらしいお姿……失敗したのだろうか?なんて最初は不安になりますが、ここはグッとこらえて、このまま小一時間ほど室温にて乾燥。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 そのまましばらく放置したクイルのファイバーを、乾いてきたかどうか確かめるために、指先でやさしく撫でてみましょう。すると……アレ? なんかファイバーが……フフフフフ、もうこの時点で乱れまくっていたファイバーが活き活きと整列して息を吹き返しているような予感が……。ワクワクしながら最後にダメ押し。沸騰したヤカンから出る蒸気をクイルの裏表に浴びせましょう。軽いファイバーの割れであれば、この時点で完全に修正できます。

 

 このクイルのような慢性的で頑固なファイバーの割れのばあいは、蒸気の水分でしっとりするまで蒸気に当てます。しっとり濡れたクイルをまたも乾かして、それが完全に乾いた時点で……

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

寝ぐせ直しは意外と簡単。

 

 指先でやさしくクイルのファイバーを撫でつけてやると、うわ~なんだか手品みた~い。完全復活でございます。しかも、洗剤で洗って細かい汚れも落としたので、クイルの艶々感もグッとアップして発色も模様もより鮮明になりました。

 

 さて、ここでワンポイント・アドバイス。ファイバーの割れや捩じれは、クイルが壊れているというよりも「寝ぐせ」のようなものとかんがえましょう。寝ぐせにも頑固なものと軽いものがあるように、頑固なものはこのように洗剤で洗ってクセを直してやる必要がありますが、軽いものならば蒸気を当てるだけで充分。もし万がイチ蒸気を当ててもどうしてもファイバーの割れが修正できないものがあれば、このように洗浄したのち乾燥して、それからさらに蒸気を当てる、という方法を最終手段として試してみてください。ちなみにこの作業はもちろん、レオンにかぎったことではなく、ほかのクイル素材全般にも役立つ方法です。

 

 あと、これは私見でもありますが、こうした一連のクイル洗浄やファイバーの修正は、一見なんだかとても面倒な作業のようにもおもえます。が、じぶんの経験からも、また過去に多くの方々に伝授した経験からも、タイイング好きの方ならかならずハマること請け合いです。ごく簡単な作業で、手持ちのクイルのファイバーが修正できるだけではなく、あれよという間により美しく、より艶っぽくなっていく様子を体感するのは、じつにじつにカイカン。気がつくと、この作業自体がタイイング同様に愉しくなっちゃう。本末転倒? かつて、ワタシもそうであったように、その必要もないのに手持ちのクイル素材アレコレを片っ端から洗ったり蒸気を当てたりしてしまうマニアさん、たくさんいらっしゃいますワハハ。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 

いよいよタイイング。

 

 洗浄と蒸気をかさねて、美しく生まれ変わらせてあげたことで、なんだか「情」のような感情が芽生えてもいるクイルをつかって、最初に巻いてみたのは私家版シルバー・マーチブラウン。我が必殺のウエットフライな一本。このフライの効能書きについては昨年5月3日付けの当コーナー「コック・デ・レオン四方山話」にて掲載済み。ワタシにとって、レオンのクイルをつかったウエットフライとして初期のころから愛用している実績度数ぶっちぎり高めな定番中の定番です。

 そんなわけで、次回はこのフライのタイイングをご紹介しながら、レオンのクイルの魅力と旨味を活かしたフライたちについて、どんどん応用の枝葉をひろげていきたいと目論んでおります。

 

備前 貢

B’s Fly Works

変容した世界、変わらない流れ

2020.04.03

A Trout Hunter[5]

 

 

 by レネ・ハロップ

 

魔術的な魅力を備えるヘンリーズフォークを愛する人たちは、日本にも数多くいらっしゃいますから、その方々に向けて現況報告をしてみましょう。皆様にとって安全な旅が現実化し、再び世界へと旅立つことができる日々を期待して。

 

雪はまだ融け残り、凍えそうな日もまだ時折やって来ますが、ヘンリーズフォークの春を待ちわびる長い時期はもう終わりです。それが分かるのは暦の上ではなく、川にある目覚めのしるし。新しい季節がどのようなものになるか、フライフィッシャーに予感させてくれる道標のようなものです。

日が長くなるに連れて、ローワー・ヘンリーズフォークへのアクセスが開くようになり、アングラーの数も増してきます。深く積もっていたボートローンチの雪が消え去り、また冬が来るまでの時期、休むことを知らないドリフトボートが出てゆきます。

 

IMG_0220のコピー

 

より標高の高い上流部、たとえばラストチャンス・ランなどのポイントは、あと1か月ほどはウエーディングをするアングラーしか入れないでしょう。しかし、膝上まで残る雪をものともしない人は、時としてすばらしい褒美を手にします。状況をよく知っているローカルの報告によると、気温と水温が上がる日、ミッジと春のベイティスを求め、ありとあらゆるサイズのマスが膨大な数の水紋を作っているといいます。

この地のレインボートラウトは春に産卵を行うのですが、その数が多かったことも今年のよい報せです。3月中旬に始まり、4月いっぱいまで続く命の再生儀式は、川の健康を物語り、心を高揚させてくれます。ここ数年ローワー・ヘンリーズフォークで産卵行動を見せるレインボーの数は盛り返す傾向にあります。このセクションでは、ブラウンとレインボーの数が健康的に調和していることが望ましいと、多くの人が考えています。

 

IMG_0836のコピー

 

今年の冬の大事な時期も、ヘンリーズフォークの流量は500 cfs を割り込むことはありませんでした。賢明な流量管理により、この素晴らしい川においてマスの幼魚が守られ、水生昆虫のライフサイクルにも好影響が出てくるはずです。

晩冬の豪雪と冷涼な気温によって山には雪が大量に残っているので、農場への大量の水供給が求められる夏期でも、川が干上がることはなさそうです。アイランドパーク貯水池が定期的に行う排砂作業は、下流環境に悪影響を与えますが、できればこれにも解決策を見つけたいもの。

 

A Blizzard Of Baetisのコピー

 

春のこの段階ですばらしい釣りができているので、盛期にはもっと期待が持てるでしょう。つねに聖域であったヘンリーズフォークですが、世界が傷を感じ始めている今こそ、そのパワーが実感されます。誰もが試練と苦難の中にある今、きっと普通の生活が戻ってくると信じましょう。皆さんは遠く離れた場所に住んでいらっしゃいますが、心の中を流れるヘンリーズフォークは希望を灯し、安らぎの場所となってくれることでしょう。この川が提供してくれる癒やしを、ともに味わえる日が近いことを祈ります。

 

ご健康にお過ごしください。川でお会いしたいものです。

 

CASTING TIP Feb 25

2020.02.27

Port_Higashi

 

CASTING TIP Feb 25

 

こんにちは皆様、お久しぶりです。去年の秋から冬はスケージュルを詰めすぎて、ペースが狂ってしまいましたが、今年はオレ・サステナブルなリズムで活動したいと思っています。ちょっと翻訳の仕事が多くてキーボード恐怖症になっていたのも、間が空いた理由の1つです……。

さて、オフシーズンにいろんなインストラクター、フライフィッシャーの方たちと会っていると、たまに「奥が深いと思うキャスト」の話になります。最近は各種スペイキャストと言われる方も多いですし、私もそれは深く同意、実感します。ロールキャストを挙げられるかたもいますし、これも同意(→普通のフォルスキャストと比べていろんな変更をしないといけないから)。もう1つよく話題に上るのが、ピックアップ&レイダウンですね。私も深く関わっている FFI=フライフィッシャーズ・インターナショナルのインストラクター試験で、最初に行って頂くキャストに指定されています。初心者に教えるキャストですが、経験の長い人でも完璧にできているケースは少ないと思います。

 

ピックアップ&レイダウン (PULDとも呼ばれます)は、その名が示しているように、水面に落ちたラインをバックキャストして、フォワードに打ち返して落とす、それだけ。だからごまかしが利かないんです。空中に何度かラインを往復させるフォルスキャストのスバラシサは、その間に向きを変えたりラインを伸ばしたり、ループの形を整えていったりできますが、PULDはできない。キャスターの技量を知るための物差しになるキャストですし、逆に言えばこれがきちんとできれば、フライキャスティングでもっとも大事なことの1つ「調整能力」が備わっている証明にもなります。

PULDで大事なこと。「水に落ちたラインの向きは、キャストに向いていない」という理解です。最後のフォワードキャストは、水面の上1メートルくらいを狙うでしょうから、その前に来るバックキャストは、フォワードの真反対に来ていなくてはいけない。その向きのバックキャストをキレイに決めるためには、どうすれば良いのか、っていうことです。手描きイラスト見てください。

 

IMG_6571

 

水に落ちたラインは、バックキャストがよい形になるよう、向きを変えてあげないといけません。幸いなことに、水は抵抗が大きく、ゆっくりロッドを立ててきてもあまりこちらに滑って来ませんから(氷とかフローリングの上は、ほんとうにキャストしにくい)、先端部の引っかかりを利用してラインの大部分を水から持ち上げ、バックキャストの延長線上に重なった時に、普通のフォルスキャストを始めるのです。ではムービーを見てみてください。去年、台湾で試験を行ったときに撮影した、芝でのPULDです。ロッドが11時位置に来るまでは、ほぼ等速でゆっくりとラインの形を直しながら水(芝)から持ち上げ、それから加速を始めているのが分かります。

 

 

 

ではまとめとして、簡単な目安を3つ挙げておきましょう。

ヒトツ……ピックアップのときに水面でジャバッという音がしたら、加速開始のタイミングが早すぎ。

フタツ……バックキャストのループが広すぎるようであれば、すこし手全体の押し引きを入れてみる。具体的には、腕をけっこう伸ばした状態からピックアップ動作をスタートする。

ミッツ……バックキャストの上側がどうしても直線にならない場合は、リストを開けるタイミングを遅らせてみる。

 

がんばってみてください! バッチリできると格好いいですよ!

 

東 知憲

ヘンリーズフォーク2019(その2)

2020.01.15

A Trout Hunter[5]

 

 

 by レネ・ハロップ

 

他の川と同じく、ヘンリーズフォークも変わり続けます。豊かなハッチとライズするマスで有名な釣り場ですが、各種ドレイクを中心とする有名ハッチは釣り人を集めます。#12(ときにそれ以上)サイズを持つこれらのフライは6月から7月上旬を中心に羽化。今年の夏は、冬の間の豊かな水量と水生昆虫の量を反映し、14インチから16インチまでの魚がほんとうにたくさんライズしました。それらの若い健康な魚たちは、ここ数年でまた成長し、すばらしい楽しみを提供してくれるでしょう。ヘンリーズフォークの黄金時代が戻ってきたことを、誰もが喜んでいます。

 

Baetis RainbowSM

 

 

7月中旬以降、羽化する種類はどんどん小型になってゆきます。カディス、さらにはフライングアントやビートルに関してもいえることです。まだ夏の間は#14を使えるチャンスもあり、視認性とフックのホールディングという両面に関してありがたいことです。しかし秋風が吹いて水位がだんだん下がり、フライを見慣れた魚が出始めると、キャスティングや釣りの面で高いスキルが必要になってくるでしょう。さらに、水は透明になり、藻は茂ってドリフトをさらに困難にします。しかし、なんといってもシーズン後半にアングラーが少なくなるのは、フライサイズの小型化の影響です。

 

Harriman Ranchのコピー

 

 

10月に入ると、夏の混み具合はうそのようになりました。まったく人がいないわけではないのですが、岸に立っているのは数少ない手練れだけ。そのような人たちは、ちょっと天気が悪いくらいではホテルに帰ったりしないし、風にキャストの精度を落とされることもありません。世界各地から集まる、ベスト・オブ・ザ・ベストといえるでしょう。

スモールフライの世界に遊ぶには、視認性の低い(あるいはまったく見えることが期待できない)フライを受け入れることです。掛かったマスを手にすることができる確率も概して下がるのですが、正しいテクニックとタックルを選べば、#20以下のフックでも分が悪くなることはありません。

 

Rise To A Baetis Hatch

 

 

秋から冬にかけての釣りでもっとも大事なのは何よりも、キャスティングポジションの取り方です。視認性の問題は、マスに気配を察知されず、かつショートキャストで勝負できるような正しいポジション取りによって、だいたいは解決できるもの。ダウンストリームにキャストすることをもくろむと、キャストの距離は伸び、小さなフライは見えなくなります。ダイレクトなアップストリーム・キャストを含め、キャストは上流側に計画するべきでしょう。流れが複雑にヨレている場合でも、ショートキャストならナチュラルに流れる可能性は増すのです。ちょっとしたドラッグも嫌い、狭いレーンに固執するようになった賢いマスが相手なら、なおさらのこと。この時期、ハッチは時として濃密になり、フライは何十もの本物にまぎれてさらに見づらくなるので、ロングキャストは当てずっぽうの釣りにしかなりません。

 

(「その3」に続きます) 

 

 

ヘンリーズフォーク2019(その1)

2019.09.11

A Trout Hunter[5]

 

 

 by レネ・ハロップ

 

 

米国西部を流れる川の例に漏れず、ヘンリーズフォークも21世紀に入って厳しい状況を経験してきました。世紀の変わり目にここを釣った人は、安定したハッチと大きなマスの記憶をお持ちでしょう。これは、その前の数年間にたっぷりと雪が降り、川に水がたっぷりと流れた結果です。1998年から2003年は、ビジターのほぼすべての人に、質の高い釣りが提供されたと思う。しかし、それから長い凋落の時代が始まりました。

 

降水量が減ると、川の生産性もそれに連動します。釣れなくなったヘンリーズフォークは、アングラーを誘うこともできなくなりました。天候パターンにようやく好転の兆しが見え始めたのは2017年。10年間を超える低調の時代は、終わったかのように思えます。とくに2018年から2019年の冬はすばらしいものでした。ダムは、冬の間に降った雪が溶けた水をたっぷりとたたえ始め、冬の間にたっぷりと水が流れたことで、マスの生息数があきらかにリバウンドしてきました。

 

01Lower Henry's Fork  

 

今年の5月に実施された学術調査により、アイランドパーク・ダムからラストチャンスまでの区間において、1マイルあたりのマスの生息数は5000尾以上であることがあきらかになりました。驚くべきことに、前年と比較して2000尾も上積みされたのです。この朗報とともに、ヘンリーズフォークの今年の釣りが始まりました。

 

02Brown of The Lower Fork--Zach Wheeler

 

しかし、シーズン初頭は天候も不順で、川がほんとうのポテンシャルを見せ始めたのは5月も末になってから。例年にない寒さと雨が続き、各種昆虫のハッチも通常より数週間遅れてしまいました。マスのライズが見られないので、フライフィッシャーたちは「いったいどうなっているのか、あの調査結果は間違いだったのではないか」と小声で話し合ったものですが、ようやく5月末、#16のマーチブラウンが、ずっと小さなベイティスに混じって出始め、マスも上ずりはじめました。私たちが待ち望んでいた質の釣りが、ようやく手の届くところにやってきました。普通は5月中旬に出始める超大型ストーンフライであるサーモンフライも、結局3週間ほど遅れましたが、待った甲斐があったものでした。下流部から始まったこのハッチは、巨大ブラウンとレインボーを熱狂させ、1週間以上も継続。そしてそれは6月15日、ハリマンランチのオープンの日にさえ、上流部でビッグ・ドライフライのチャンスを提供してくれたのです。

 

03Last Chance Sunset

 

(「その2」に続きます) 

 

 

  • 全ての新着情報
  • News
  • Products
  • Column