ウイードとの戦い

2019.07.14

A Trout Hunter[5]

 

春から夏へのスプリングクリーク戦略 (その2)

 

 by レネ・ハロップ

 

 

藻の動きが水表の流れの複雑さを倍増させているなら、ティペットは私が標準と考える90センチからさらに伸ばさなければならないでしょう。正確度はずっと落ちてしまいますが、着水した瞬間からフライが水面を走り回らないようにするためには、最長150センチのティペットを使ってスラックを入れるしか手がない場合も確かにあるのです。しかし普通のシチュエーションにおいては、バウンスキャストないしチェックキャストというオーバーパワー・タイプの技術を使い、短めのリーダーを跳ね返して作るスラックでじゅうぶんなドリフトができるでしょう。

 

Drifting Weed(Light)

 

水底から生えた藻が生み出す問題に加え、切れ藻も時にフライフィッシャーを悩ませます。シーズンの後半、藻が伸びきってしまった時期の午後には、水面に出た部分がちぎれて流れ始めることがあります。マスはこの切れ藻をいやがったりしないようですが、フライフィッシャーにとってはちょっとした悪夢。キャストごとにフックに藻のかけらが刺さり、プレゼンテーションを台なしにしてしまうのです。この状況に対応するには、アップストリーム・プレゼンテーションだけに限定することです。ピックアップのときにフライが水面を斜めに走らなければ、藻を拾ってしまう可能性も大幅に減ります。その他のアングルからキャストを試みても、いらいらが溜まるだけでしょう。

 

Extracted From The Weed (light)

 

ヘンリーズフォークの大型のマスはすべて、うまく藻を活用することを知っているようです。フッキングされたとわかったら、一目散に厚いウイードの中に突っ込もうとします。運が大きく作用しますが、対応策がないわけではありません。魚はだいたい上流に向かって突っ込んでいきますから、ロッドを魚の深さに沈め、真後ろから注意深くやさしく引くことで魚を引きずり出すことができる場合もあります。

 

Test For 6X (Light)

 

スプリングクリークにおいては細いティペットが大前提ですが、そんな繊細な釣りをする時には日本の技術力に感謝します。トラウトハンターのフロロカーボン・ティペットは、まさに先進素材、私は大型魚に対しても自信を持って6xを使います。この手の釣りに失敗はつきものですが、いくつもの難題をクリアして大型のマスを手にできたときの満足感は格別です。簡単ではないことを受け入れ、技術を磨いて挑戦をいとわない人には、必ずご褒美を用意してくれるのが自然です。

 

 

ウイードとの戦い

2019.07.02

A Trout Hunter[5]

 

春から夏へのスプリングクリーク戦略 (その1)

 

 by レネ・ハロップ

 

 

スプリングクリークのマスにとって、水中に茂る藻はとても重要な存在です。小規模な川からヘンリーズフォークのような大河川にいたるまで、藻は水生昆虫の家となり、マスには隠れ家も提供するのです。健全な釣り場には欠かせない藻のことを敵であるかのようにいうのは、きっと間違っているのでしょう。しかし、ただでさえ複雑なマス釣りに、さらなる困難を加えてくるのがそれであるということも事実なのです。

 

釣りに対する藻の影響は、まだ完全に伸びきらない春からすでに始まっています。ただでさえ複雑な水流が、揺れる藻の動きにさらに影響され、ドライフライの宿敵であるドラッグを簡単に作り出してしまうのです。ヘンリーズフォークをはじめとする有名スプリングクリークを釣り続けてきた私は、フラストレーション体験の中から、いくつかのコツを見つけ出したと思います。今回の記事では、それをご教示しましょう。

 

Over A Weed Bed(Light)

 

高い正確度が求められる私のホームグラウンドでは、戻りの早いティップを備えた9フィート4番のロッドがスタンダード。私はスコットのラディアンを使っていますが、あらゆる角度からのキャストを可能にし、空中でラインの整形操作を行う時間的余裕を生み出してくれます。しばしば14フィートを超えるリーダーを操作しなければなりませんので、ラインのテーパーも重要、個人的にはエアフロのエリート・トラウトを気に入って使っています。

 

水中の藻の影響を受けた複雑な流れを釣るには、長いドラグフリー・ドリフトを行おうなど考えないことです。魚はだいたい水面近くに浮いていますから許容レーンの幅はとても狭くなっているでしょう。フライの着水点から魚まで、60センチほどのナチュラルドリフトで勝負しようという気持ちで釣るのが、もっとも良い結果を生んでくれます。

 

Sometimes You Win(Light)

 

 

季節が進み、生育した藻が水面に露出するようになると、正確度はさらに大事になってきます。大型のマスは、露出した藻の間にできたスペースに身を潜めるようになるでしょう。そんな場合はアップストリーム・キャストの独壇場です。長く流そうと思ってはいけません。魚の真下のポジションが取れない場合はなおさらのことです。

 

Tight Cast(Light)

 

露出した藻の際に身を潜め、ぎりぎりの位置で昆虫を吸い込んでいるようなマスは例外なくセレクティブで大型です。手前側にウイードベッドがない場合はいろいろな立ち位置が考えられるでしょうが、いずれにせよ藻から数センチの位置にフライを流す正確度が求められます。魚に気づかれないよう、プレゼンテーションはアップ&アクロスが私の標準、それにリーチキャストないしカーブキャストを採用します。フライはウイードのエッジにそっと触れるように落ち、(うっかりすると見落としてしまうような)大物のライズまで数十センチ流れてゆく、というのがシナリオです。マスがフライを吸い込んだときの感動は、ずっとあなたの心に焼き付いていることでしょう。

 

SIMMS NEWS

2019.06.24

シムス&VEIL CAMO コラボレーション秘話(続)

 

Platform

ウィル・フラックがパーミットを追う。《ベリーズ》

 

 

シムス:魚に特化したカモフラージュ柄を開発してと依頼したとき、どう思われました?

スキナー:ははは。じつに笑えましたよ。だって、そんなものが必要だとは思ってもみなかったですからね。

 

シムス:それはなぜです?

スキナー:水中にいる魚が、外の世界をどう見ているかなんて知りませんでしたから。考えたこともありませんでしたね。振り返ってみれば、お恥ずかしいほど無知でした。

 

シムス:ピカーン!っていうひらめきの瞬間はあったんですか?

スキナー:いや、実はありませんでしたよ。調査を進めていくと、フィッシュカモを開発することは、まったく理にかなったことだとわかりました。魚がどれだけ優れた視覚を持ってるか、想像もしていなかったです。私たちよりも色覚は優れています。データによると過敏とも言えるレベルだそうです。それをどのように処理しているかは別の疑問で、行動面への反映に関してはいろんな理論があります。とはいえ、フィッシュカモを開発するにあたっては、推測ではなくデータを活用しました。

 

シムス:今はフィッシュカモの提唱者となられたわけですが、まずはその中の「クラウドカモ」の開発プロセスを教えてください。デザインは面倒でしたか?

スキナー:取りかかったとき、私は以前よりずっと知識があって、オープンマインドでしたよ。主な対象魚はボーンフィッシュ、ターポンそしてパーミットですが、研究データを見ると彼らの色覚と視野はマスのそれと似ていることがわかりました。すでに行った調査を活用できますので、心強いものでした。次の設問は「オーケー、じゃあ曇りの時、晴れの時、雨の時などに魚には何が見えるだろう?」です。

 

シムス:ソルト用のクラウドカモと淡水用リバーカモの開発で、違いは何でしたか?

スキナー:環境ですね。川で釣りをするとき、あなたは木やボサ、岩、丘などに比較的近い位置にいます。しかし海のフラットで釣りをしていると、たぶん空に囲まれていることになるでしょう。考えてみれば、空というのは変化に乏しいものですから、逆に難しいテーマでしたね。

 

シムス:ベリーズで、私たちの友人のウィル・フラックと釣ったのは、初期デザインのテストだったんでしょう? どうでした?

スキナー:最初に設計したカモパターンを、実際のフラットにに持ち出して検証できて安心しました。調査内容と実際の環境に、さほどのずれがなかったからです。ウィルは初回デザインを気に入ってくれましたが、色のアドバイスなど微調整をしてくれました。彼のコメントは、現場を見た私の意向とまったく一致していました。釣りから帰ってきて、ロッジで色を調整し、彼に見せると一発で気に入ってくれましたよ。それにしても、彼はまさにフラットの忍者ですね!

 

シムス:まったくその通り! ウィルとは、テストとチューニングを繰り返したんですか?

スキナー:はい。ベリーズに行く前から、コンセプトはかなりしっかりしていたんですが、最終的にはパターンをほんの少しゆがませました。水面は光をねじ曲げますが、あらかじめ歪ませたパターンはとても有効だと思います。水中から見ると、アングラーのはっきりとした全体像は見えませんがだいたいの形はわかります。魚は、フィッシュウインドウを通じて外の世界を覗くわけですが、かなりのディテールが見えていることが多いでしょう。魚がスプークしてしまうのは、そういう時です。私は、波などによって光が散らされ、ゆがめられる効果を考慮に入れ、人の形を悟られずに魚を混乱させるパターンを開発したかったのです。

 

シムス:パーミットの話をしましょう。「パーミットなんて神格化しちゃだめだ」という人たちがいます。オレンジのフライラインを使い、赤いシャツを着て、鼻先に重いクラブフライをたたき込むような人たち。それでも釣れるときは釣れるんですよ。クラウドカモの開発にあたっていろんな調査をされたわけですが、魚の認識力を理解した後では、驚きじゃないですか?

スキナー:いやほんとうにそうです。最初に申し上げたように、フィッシュカモ開発の話を聞いたとき、私は懐疑的でした。そんなもの、必要あるのかなと思いました。開発を進めるにつれて、派手な服を着てパーミットを釣る人がいることも知りましたが、クラウドカモのターゲットは違う種類の釣りです。場所によっては空色のジャンプスーツを着て鹿をどんどん撃つこともできますが、それは私たちには関係がない。テクニカルで洗練されたなゲームを想定しています。使っている用具が決定的に重要な、難しいチャレンジです。

 

シムス:パーミットは、クラウドカモのシャツを着たアングラーのほうが、赤いシャツを着たアングラーよりも見つけにくい?

スキナー:はい。いろいろな研究結果を見てみるとすぐわかります。私が最初に抱いた、フィッシュカモの開発に関するさまざまな疑念は、すぐに消えてしまいました。魚たちがどれだけ警戒心が強いか、誰でも知っているでしょう。水の世界とは彼らの世界。あなたが自分の家の間取りを知っているように、彼らも自分たちの世界をよく知っているのです。

 

シムス:納得です。では、VEIL CAMOの特徴を一言でまとめると?

スキナー:ステルス性が決定的な要因となる難しいシチュエーションにおいて、ハンターや釣り人の存在を悟られにくくする最先端のカモフラージュ・パターンということになりますかね。(了)

 

 

SIMMS NEWS

2019.06.16

シムス&VEIL CAMO コラボレーション秘話

 

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ボーンフィッシュやパーミット・ジャンキーにフラットの釣りのどこが好きか聞くと、だいたい誰でも答えは同じです。「まるでハンティングなんだよ」。ハンティングとフラットの釣りは、たしかに似通っています。山に分け入ってエルク鹿に迫るときも、テイリングするパーミットに忍び寄るときも、相手に気配を知られないことが大前提です。いにしえの狩人たちは確かに、あらゆるカモフラージュ手段を採用して環境に溶け込もうとしていました。魚に忍び寄るときにも、その考えを採用するのが理にかなっていると考えた私たちは、迷彩のエキスパートであるVeil Camo社と提携。同社の創業者であるジョー・スキナーとのインタビューは、彼の情熱、会社の理念を教えてくれるとともに、最新のソルトウォーター迷彩である「クラウドカモ」の開発秘話となっています。

 

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シムス:迷彩パターンへの興味は、いつどのようにして始まったのですか?

スキナー:軍に在籍していた2008年に意識し始めました。しかしハンティングやアウトドアを始めたのは2010年でしたから、そのあたりと言っておくのが妥当でしょうね。当時の米軍はグレイとグリーンを使った地味なデジタルカモ柄を使っていました。しかし、砂利穴でしか実用的でないようなこのパターンをなぜ軍が採用したのか、理解に苦しみました。そんな迷彩服を着させられた体験が、私のこだわりにつながったんだと思いますね。

 

シムス:VEIL CAMOのそもそものアイディアは、ハンター用のカモフラージュ柄と同じなんですか?

スキナー:そうです。私はハンティングを始めるとすぐに、いちばん困難だと思われるボウハンティングに惹かれました。その世界にはカモ柄を作っている会社が山ほどあるんですが、どれも用途が限られています。「ミミクリーパターン」と呼ばれ、実際の枝や葉っぱなどを模しています。背景にぴったりはまれば素晴らしいんですが、私はもっと汎用性のあるものが欲しいと思いました。

 

シムス:より高品質な製品を作ろうという決意をした瞬間は、いつでしたか?

スキナー:樹上のスタンドに身を潜ませて、獲物が下を通るのを待っている時でした。暇なのであたりを見回し、自然環境に溶けこむデザインとはどんなものだろうと考え始めたのです。「このアイディアに基づいたカモ柄を作っている会社なんてあるだろうか? 私にできるだろうか? まずは楽しみでやってみるか……」。それをきっかけに、私はコンピューターを使い、数学的コンセプトをデザインに取り入れ始めました。簡単にいうと、自然界に存在する数学法則に基づいてパターンを作っていったのです。

 

シムス:VEIL CAMOの創業はいつですか?

スキナー:その後すぐですよ。さらにいくつかパターンを開発し、私の考えとカモパターンが市場にインパクトを与える自信が持てた2012年に創業しました。

 

シムス:パターンの開発プロセスはどのようなものですか?

スキナー:VEIL CAMOの特徴は、写真のようなリアリティではなく、自然環境のできあがり方をベースにしています。動物の目を欺く、オーガニックなカモフラージュ柄です。

 

シムス:VEIL CAMOのユニークさを説明してください。

スキナー:私たちのカモフラージュ・パターンは、数多くの要素をうまく組み合わせてパワフルな性能を達成しているのです。私たちは、4方面からアプローチします。基本的なカモフラージュ理論、自然界に存在する数学的法則、ターゲット環境を想定したカラーパレット、そしてターゲット動物の視覚に関する科学的データです。

 

シムス:なるほど。1つ1つかみ砕いてくれませんか?

スキナー:いいですよ。私たちに関係のあるカモフラージュ理論の要素には、「分断色」「対称性と形状の認識」「マイクロ・ディスラプション」「マクロ・ディスラプション」などがあります。分断色とは、カラーパレットとリンクしたテクスチャーを使い、周辺環境に溶け込むものです。動物は、対称性と形状にとても敏感ですからね。マイクロ・ディスラプションとは、分断色のカテゴリーに入るもので、つまりはターゲット環境の視覚的傾向に基づくテクスチャーの分断と考えてください。最後にマクロ・ディスラプションとは、隠蔽するべき(人間の)姿の対称性を捕らえにくくしてしまうアイディアです。

 

シムス:次に、おっかない部分です。数学とカモフラージュの間には、どういった関係があるのですか?

スキナー:ははは! 確かに数学はなじみにくいものですが、私は数学者でもなんでもありません。自然界にある形状とカオスに立脚する数学理論を適用しているだけです。フラクタル幾何とカオス理論ですね。フラクタルとは、自己増殖してゆく相似図形です。木の育ち方、草の生え方などには相似性がありますが、決して完璧なものではありません。完璧さを達成させない、何らかの要素が必ず入ってきます。このことはもう1つの重要な概念であるカオス理論によって説明されます。これらによって得られた異なる数式を活用することで、ゆがみを持ったパターンが得られます。自己増殖的なフラクタル図形をカオス理論によって分断させることで、自然界の風景によく似てくるのです。

 

シムス:色はどうですか?

スキナー:ユーザー環境を分析し、色を選びます。地面にいる、木に登る、川辺にいる、立ち込んでいるなど。またターゲット動物の視覚も考慮します。環境の中でユーザーがどう見えるかという情報を活用するのです。

 

シムス:では、難しく思える要素、すなわち動物の視覚と認知に関してですが、どのようにしてそんなデータを入手されるのですか?

スキナー:動物学者と契約し、対象動物に関して公表されているデータを集めてもらいました。眼球の分析から始まって動物の環境認識、そして行動面の特徴にまで及ぶものです。それによって、デザインと判断のよりどころとなる動物の色覚や視力などが科学的に把握できるわけです。(続く)

 

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スイング&ドライ— 下山日記

2019.06.08

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北海道は、河川の雪代も収まってきてシーズンインです。湖では春蝉も鳴き始め、大型のドライフライを楽しめる季節になります。仕事の合間を縫って、良い釣果も聞き始めた支笏湖に通っています。

 

数日前も、この時期に1本は釣っておきたいと思い早朝の霧が立ち込む中、ロッドを手に湖畔に向かいました。無風の凪状態。湖の釣りでは、なかなか厳しい条件ですが、可能性はあると信じて秘策のセミフライを採用。このフライは、シースールータイプでボディが空洞になっており、どんな状況でも浮いています。フロータントがいらないので、スペイキャストでの釣りにはとても有効。アンカーを入れる際、フライは必ず着水しますが、吸水しないので浮力は維持されます。これは友人の息子さんが私のために手間暇掛けて作ってくれたフライなので、どうしても良い魚を釣りたいと考えていましたが、6時間振り続けるも水面は炸裂せず。

 

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魚は釣れなくともフライのポテンシャルの高さを実感できたので、良い釣行でした。これからがドライフライの本格的なシーズンですので、諦めないで再挑戦しようと思います。

 

河川もこれからがベストシーズンを迎えます。本流域はまだ雪代も残っている状態ですが、支流域は水も落ち着きはじめ、ライズも見られるようになりました。今シーズン始めてのシングルハンドの釣りは、SCOTT社のGS885を試そうと実釣に持ち出しました。川の状態はまずまずですが水温が若干低かったので、ニンフを結んで川に入りました。

 

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両岸に木々が生い茂り、バックが取れないので重たいニンフをロールキャストでポイントまで投げる事にしました。ミディアムファーストのアクションが操作を容易にし、思ったポイントまでフライが到達する確率があがりました。技術ももちろんですが、道具もやはり大切だとあらためて納得です。

 

ファーストポイントでは、ナチュラルにニンフを流すも反応なし。しかし何となく気配があったので、今度は上流に立ち位置を変えてからニンフを入れました。するとニンフが水面に向け浮上する時に反応したのか、流し終わりに手元に強烈なあたりがあり、ロッドが絞りこまれました。川の流れも重く不安でしたが、何度となく走られるも、ロッドが満月にしなり、バラす事なくキャッチすることができました。SCOTTのロッドは魚がばれにくいとの友人の言葉が頭をよぎりました。魚のパワーをロッド全体で吸収してくれるのでしょう。今後もこのロッドとは、長い付き合いになりそうです。

 

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ドリーバーデン店主 下山巌

SIMMS & Scott Pro Staff   

 

CASTING TIP May 25

2019.05.23

Higashi_portrait

 

こんにちは、久しぶりのキャスティング・スポットレッスンです。急に季節が進んだので釣りが忙しく、なかなか帰宅できませんし、他の皆様もよいコンテンツを投稿されていらっしゃるので、間が空きました。

 

たまには釣れました

Iwana2

 

さて、何名かのフライフィッシャーさんの釣りに同行して気づいたことがあります。まず、普通の状態にある渓流魚にはフォルスキャストの回数を抑え、ミスキャストもできるだけなくし、1発のプレゼンテーションで決める心構えでいないと、投げ続けていくうちにどんどん魚の気持ちがこじれていくのはご承知のとおりです。精度の高いキャストを決めるためには、つねに安定したループの形を作ることができるのが必須。ループの上側(トップレグ)の形が不安定ですと、意図通りのフライの落ち方は期待できません。

 

それとも関係するのですが、日本の渓流でよく使われるタイプの「深く曲がるロッドは、角度を大きく振ってやらないと釣れるループができない」ということは、頭で分かっていながらも手の動きが追いついていかないという感じが、皆さんの間にあるようです。どうも、フライが上からフワンとしか落ちていかない。投げたフライをすぐ見失ってしまう、という方は、ちょっとこの調整を試してみて欲しいのです。

 

簡単に言うと、2点あります。

1) グリップを握る手の位置を、リールに触るギリギリまで下げて握ってみる。

2) ラストのプレゼンテーションのとき「だけ」、がっちりとリストを閉じる。

 

一般的な握り位置

Cast01-1

 

 

握り位置をギリギリまで下げ、一杯までリストダウンした状態

Cast02-1

 

上の写真で、ロッドの止まる位置が大きく違ってきているのがお分かりでしょう。握っている位置をたった2センチくらい移動させるだけで、ロッドの振り感覚もまったく変わってきます。私の師匠のメル・クリーガーも、ライトラインに関してはリールギリギリを握る派でした。ロッド先端部の重さを感じるくらいのほうが、下まで振り抜くためのプラスになるでしょう。力を入れるべきでないフォルスキャストのときは、フォワードのストップはナチュラルリスト状態までにしておいて、プレゼンテーションのときはややパワーを増し、手首が許すところまでロッドを振り抜く。これだけでずいぶんとフライの飛び方が変わってくる、という人が多いです。

 

曲げたロッドティップを、投げたいポイントめがけて動かしてくるイメージを忘れないようにしてください!

 

 

東 知憲

B’s Fly Works Presents それって愛でしょ。— Quill Wing de Leon

2019.05.03

“全世界ものすご~く扱いやすいクイルウイング素材天下一決定戦最優秀賞結果発表の巻”  

 

 Mitsugu_port

 

「巻いて巻いて語って巻いて……

 

職業フライタイヤーという仕事柄、オフシーズンとなる冬のあいだフライタイイングデモや講習会に呼んでいただく機会が何度かある。

 

……バイスに挟まれたフックに、お集まりくださった熱心な皆さんの視線が集中しております。ボビンをにぎったワタクシの指先がクルクルうごいております。まさに、ワタクシの一挙一動を全員が注視。巻いているあいだ、そのフライについての解説や能書きをワタクシがアレコレとエラそうにしゃべりつづけるわけでございます……

 

そりゃーもう、こっぱずかしいデ。

 

ココロのなかはいつだって冷汗かきかき。なんだけど、そんなそぶりは露とも見せず、いつだって自信満々で余裕綽々のふりをしてせっせとフライを巻く。そして熱く語る。だってお仕事なんだもの。それになんてったって、けして安くはない会費を払ってまで集まってくださった、まことにありがたく愛しいマニアな皆さま。わざわざ足を運んでくださったからには、この時間を有意義に過ごしていただきたい。フライ歴ウン十年のベテランの方から、フライにハマって間もないビギナーさんまで、知識も経験も異なる方がたそれぞれに等しく愉しんでいただきたい。そのうえで、スキルアップやモチベーションの向上につながる有益な情報や学びをた~くさんお持ち帰りいただきたいとおもってる。だからいつも目一杯はりきる。フルスロットルでがんばる。アレも巻きたいコレも紹介したいソレも語りたいナニも言いたい。も~~っと巻いて語りたい!なんて、いつもてんぱりまくる。

そりゃーもう、デモの最中は常に脳内ぐるぐるフル回転、沸騰寸前ボコボコ。

 

し・か・も・そのようなデモや講習会の場となる会場は、たいがい照明に難あり。ちいさなライトひとつとか、そんなかんじ。会場は明るいけれど、手元のバイス周辺は薄暗い。そこに我が老眼も加味されて、視界は常にボヤ~ッとしている……巻いているフライの肝心の細かいところがハッキリ見えまへんがな困りますがな。というわけで、ボヤけているところは長年の勘を駆使して巻いて、なんとか乗りきる……ということがよくある。

 

このように、自宅のタイイングデスクでたった独り、気持ちをゆったり落ちつけてじっくり作業する日常のタイイングと、デモでのタイイングはもう気力体力そして気分もなにもかもまったくちがう。慣れない場所で、どちらかといえばあまりタイイングには向いていない環境で、しかも人様の視線を感じてココロをざわつかせながらフライを巻くのがデモでのタイイングなのでございます。

 

クイルウイングの壁を壊したい

 

そんなデモのときに、どこに行ってもかならずリクエストをいただくテクニックのひとつが、ウエットフライのクイルウイングの巻き止め方。「それじゃあこれからクイルウイングを巻き止めて、ウエットフライのシルバーマーチブラウンを巻いてみましょう」などと申し上げると、多くの方がグッと身を乗り出してここぞと喰いついてくださる。いわば、タイイングデモのハイライト。

 

皆さん、この作業がなかなかの難関のご様子。ウエットフライにすごく興味はあるけれど、コレがどうもうまくいかなくて挫折したり頓挫してしまったり、あるいはいかにも難易度が高そうで、なかなか挑戦する踏ん切りがつかない、などの切なるお悩みのお声が飛び交う。そのお気持ち、ヨークわかります。だって、かつての自分もそうだったもの。

 

ウエットフライのクイルウイングを美しく、かつ機能的に、そして確実に巻き止める。ほかのテクニックとは異なり、このクイルウイング装着作業でやっかいなのは、クイル素材を指先のなかに完全に挟んで行うところ。その過程の仔細ありのままを見ていただくことができない。だから余計に難しく感じてしまう。つまり「フライタイイングの壁」のひとつ。

 

だからこのテクニックこそ、いかにも簡単そうに巻いているようにお見せして事細かに解説したい。尻込みしておられた方が「あ、これならオレにも出来そう」なんておもっていただけると、ワタシとしてはしてやったりの大成功。だからこそ失敗の許されない場面でもある。センセーが何度もしくじったりして「うわ~、やっぱ難しいんだ」なんておもわれたくない。しかしデモの場所は、巻いているフライはよく見えないし気持ちは常に焦っているし、皆がジッと注目しているし……熱気ムンムン手のひらベタベタ……クイルウイングを巻き止めるに、これ以上はない劣悪な環境なのでございます。

 

救いのクイルウイング

 

そんな状況で、ウエットフライのクイルウイングをせっせと巻き止めること十数余年。

フックサイズ8番から12番くらいの常用サイズなウエットフライにつかえるクイルウイング素材のアレコレを、公私ともに数え切れないほど巻き倒してまいりました。たとえばダッククイルやターキークイル、それにヘンフェザントを筆頭に各種のキジのクイルなどなどなどなど。伝統の定番素材から超レアな珍羽根に至るまで、そりゃ~もういろ~んなクイル素材を実際にズッコンバッコン巻き倒して使い倒してきた自負がございます。だってそれって、趣味でもあるけどお仕事でもあるんだもの。もはやライフワーク。

そのうえで、ワタクシはいま文字を太にして言いたい。このメッセージをお伝えしたいためだけに、このような駄文を書き散らしております。

 

「コック・デ・レオンのセカンダリークイルがぶっちぎりでいっちばん扱いやすい」

 

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アンタが一等賞! ルースターでもヘンでもどちらでもおなじ。これほどファイバーにへんなクセがなくて素直で丈夫、そしてファイバーが割れにくく思ったように巻きやすい素材は、ちょっと他にないのではないか、とセンセーは言い切ってしまいそうです。でも、コック・デ・レオンのセカンダリークイルは、ウエットフライのクイルウイングとしては、ものすごく新しい素材だ。はじめて世に出ていまだほんの十数年。ゆうにウン百年の歴史を超える伝統の古典的素材で構成されているこの世界では、ほかにあまり例がない最新素材といってもいい。

 

タイイングデモのとき、このクイル素材のおかげでどれほど助かっていることか。だって、クイルウイングのファイバーを扱うには大敵となる手汗をかいた状態でファイバーを摘まみ、しかも手元が明瞭には見えない不利な悪環境にて、むしろ手元なんかほとんど見ないでベッラベラ解説しながら巻いたって、クイルウイング巻き止めの勘どころさえ外さなければ、いっつもそれらしくカッコ良いウイングのカタチになってくれるだもの。なんとありがたいクイル素材でありましょうか。不肖ワタクシのタイイングデモは、もはやこの素材なしには成立しないと言っても過言ではないかもしれません。

 

さらに、本当はここからが肝心なんだけど、そのように巻いたコック・デ・レオンのクイルウイングのウエットフライを実践投入するとどうなのよ?なんて、それを書き出すともうぶっちゃけキリがない。まさにエンドレス。いつかこの底なしの魅力満載の素材について事細かに、かつ自分なりにガッツリまとめたものをドドーンと一挙に世に出したいと、目下のところ鋭意製作中でございます。

 

が、ドジでノロマなナメクジ野郎のワタクシのやることでございます。そのような大作、いったいいつ完成することやら……。そしてその間にも、コック・デ・レオン素材に関する新しいアイディアや発見や課題が次から次へと泉のごとく湧きでてくる……もう収拾がつかない状態のまま早や数年。誰かオレのケツをバシッと叩いてくれー。ってゆーか、目の前にニンジンをぶら下げてもらって「ホレホレ~走れ走れ~」と誰かに操られたい心境です。

 

当社ベストセラー・ウエットフライ その1

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オレ様スタイルで巻いたシルバーマーチブラウンの私家版アレンジ。極細のシルバーティンセルにオパール・カラーのミラージュを挟んで捩じってボディに巻いている。そのため、銀色ボディに微細なデコボコができている。これが陽の光を受けると、まるで割れた鏡のように四方八方に輝きを拡散して激しく乱反射。これをスイングさせるとビッカビカに煌めくボディと、いかにも虫っぽいマダラ模様の茶褐色のウイングのナチュラルな存在感の組み合わせがなんともいえず釣れそう。と、自画自賛の実績度数高めなイッポン。

 

当社ベストセラー・ウエットフライ その2

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魅惑のスケチラ・バディ。極細のゴールド・ティンセルを二重撚りで捩じる際に、各種の獣毛ファーもパラパラッと薄く同時に撚り込んでボディを巻いている。なので、フワッと毛羽立ったファーの内側から金色のティンセルがほのかに透け見える。とってもエッチな体裁。このように薄く毛羽立たせたボディは水をはらんで流水の抵抗が増すので、ナチュラルに流すときにとくに有利。そしてアップストリームなウエットフライのアプローチの釣りでは、水切れがよく重いフライよりも明らかにアタリが大きく明確に出やすいようにおもう。コック・デ・レオンのクイルウイングは、どのようなスタイルのウエットフライに巻いてもピッタリしっくりサマになって調和してしまうところがまたええんですわ~。

 

備前 貢

B’s Fly Works

現代トラウトフライの進化

2019.04.06

A Trout Hunter[5]

50年間を振り返って (その2)

 

 by レネ・ハロップ

 

 

21世紀のタイイングにおいては、世界的な情報交換が生まれている。釣れるトラウトフライのデザインにおいて、アメリカ人タイヤーの独壇場という時代は終わっている。英国や北欧諸国をはじめとする欧州では、ファーやフェザーがいまだに愛されている傾向にあるようで、タイヤーたちは、ナチュラル素材にこだわりを見せながらもフライを進化させ続けてきた。

 

PMD No Hackle

PMD No Hackle

 

 

Rusty CDC Biot Paraspinner

Rusty CDC Biot Paraspinner

 

質に強いこだわりを見せる日本において、フライタイイングは芸術に近いところまで到達し、世界のトップクラスにあることは間違いない。フライフィッシャーの数はあまり多くはないが、マテリアルの質に細かな注意を払うのが日本人タイヤーである。タイイングをする人の割合はきわめて高く、できの良いフライはその人の誇りを反映する。トラウトフライ・デザインの基礎となる水生昆虫の世界をもっともよく理解しているのも、日本人かも知れない。刈田敏三さんがその牽引役だ。

 

Rene' Portrait

 

最盛期はとっくに過ぎてしまったが、私はいまだに販売用フライをタイイングしている。遠い昔と比べてみると、マテリアルの質の進化には驚くべきものがある。私が巻くことのできる限界、24番のフックに使えるドライフライ・ハックルが手に入るのは、トム・ホワイティングをはじめとする一流ブリーダーのおかげだ。タイイング世界に対する彼の貢献は、交配技術を使って、さまざまなフライに適した鳥を作り出したことにある。かつてレアであったスペイン原産コック・デ・レオンの羽根も、いまでは比較的容易に手に入れることができる。CDCは、比較的最近の私のパターンに多く採用する素材だ。かつてはカラーも限られ、流通も少なかったがいまは状況が異なる。ダビング材、バイオットなどとともにマッチング・ザ・ハッチ用のカラーが揃っている。かつては選択肢が限られ、フライタックルにおける「弱いリンク」であったフックも、ティムコをはじめとする日本メーカーのおかげでありとあらゆるフライのタイイングが可能になった。

 

TroutHunter Products

 

個人用フライには、できるだけシンセティックは使わないようにしている。マテリアルの選定はその人の自由であり、現代的なクリエイティブ・タイイングには化学素材が欠かせないという人もいて、入手の容易さとともに、素材の出どころを気にしなくてよいところも大きい。エルク、ディア、ムースといった大型獣のヘア、フェザントテイル、ターキーテール、ウッドダック・フランク、ダッククイルといった羽根は、伝統に魅せられ続けている私のようなタイヤーにとって、過去と現在、人間界と自然界をつなぐ貴重な存在であり、効果的な管理によりハンティングが可能な資源量が保たれていることをありがたく思う。

 

Wild Plumage

 

今となっては、クラシック・パターンを巻く機会は多くないけれども、フライタイヤーとしての私の成長はそれらがあったからこそである。私らしさというものがあるとするなら、それは50年以上まえに身につけた技術の上に育ったもの。ボビンを回すことができる限り、私はタイイングの歴史と伝統を尊重したクリエティブ作業を行っていくことになるのだろう。

現代トラウトフライの進化

2019.03.12

A Trout Hunter[5]

50年間を振り返って (その1)

 

 by レネ・ハロップ

 

 

21世紀も1/5が過ぎ去ろうとしているいま、デッティ、ダービー、フリックといった名前を知っている人たちはほんの一握りになってしまったのだろう。私がこの仕事を始めた60年代において、アメリカン・フライタイイングの最前線に立っていた人たちだ。ニューヨーク州キャッツキルのあたりに集まっていた彼らは、フライの質に関して高い基準を確立した。

 

コマーシャルタイヤーとして最初の10年ほどは、キャッツキル・パターンを巻くことが仕事の中心だったが、簡単なことではなかった。達人たちのテクニックは書物に記されていない秘密が多く、いまとなっては知る人も少ない。きちんとしたスタンダードを巻くには、時として入手の難しいナチュラル素材を精密に巻き留めることが必要だった。ライトケイヒル、ヘンドリクソン、ジンジャークイルといった東海岸パターンは、もはや過去の遺物になりかっているが、ボニーとわたしはオービス社へ卸すために何千本と巻いたものだった。70年代初頭まで、高品質フライは全米あちこちに散らばっていた、私たちのような個人タイヤーが供給していたのだ。

 

 At The Vise           

 

ハウス・オブ・ハロップのようなファミリービジネスをやっていくためにもっとも難しかったのは、トラディショナルなパターンを巻くためのナチュラル素材の確保だった。とくに、高品質ハックルはほんとうに入手が難しかった。米国内で生産される量は限られていたので、インドや中国から入ってきたケープやサドルを選ぶしかないのだが、品質にはじつにばらつきがあった。10枚買ったうちの1枚使えればよいほうで、18番以下を巻けるハックルを生やしているケープはさらに少なかった。美しいフライを巻くには美しいマテリアルから、という考えは、いまだに私の信念である。

 

 Classic Ginger Quill

Classic Ginger Quill

 

水生昆虫のイミテーションを作り上げるアプローチにおいて、70年代に大変化をもたらしたのがスイッシャー&リチャーズであるというのは定説で、私もまさにそうだと思う。高品質ハックルの入手が難しければ、それを省いてしまおうという考えが最初にあったわけではないだろうが、結果として彼らは、ハックル依存から脱却する道筋をつけたのだ。フライフィッシャーの注目を、ダンステージからイマージャーステージへと移したのが彼らの最大の貢献だろう。そのしばらく後、カリフォルニアのボブ・クイッグリーが「羽化失敗個体」の重要性を言い出し、「クリップル」という呼び方がフライタイヤーの間に定着した。

 

私の話をすれば、バイスを前にした創造プロセスは、ヘンリーズフォークをはじめとする難しい釣り場のマスが見せる、セレクティブな摂餌行動が加速させてくれた。私の観察に基づく仮説からアプローチするフライのデザインは、昆虫が水中から空中へと出て行く間に何度か起こる、マスにとって利用しやすい瞬間を念頭に置く。「トランジショナル(形態移行期)」パターンの誕生である。釣り人によるプレッシャーのせいでフライを拒否するようになった魚に、再びアピールを感じさせるマテリアルとしてCDCが登場したのは大きな出来事であった。80年代後半のことだ。ヨーロッパでは歴史のあるこの新素材は、すばらしい浮力と全体のリアルな印象により、これまでとはまったく異なるフライを作り出してくれた。

 

 Callibaetis CDC Last Chance Cripple

Callibaetis CDC Last Chance Cripple

 

Foam Hopper (imported)

Foam Hopper-Imported

 

 

フライタイイングの世界に巨大な変化が訪れたのは90年代だ。この釣りをやる人たちが爆発的に増え、フライのニーズも高まったので、小さな産業だったフライタイイングも大規模化していった。フライロッドを持ったこともない手と、マスを見たこともない目を持つ器用なタイヤーたちが生み出す何万本ものフライが、米国に輸入されてくる。伝統的なマテリアルにこだわらず、シンセティックを使おうという姿勢は、利便性と必要性の両方から主流となった。フォームを貼って作るようなタイプのものは、フライタイイングというよりはルアーメイキングであるが、私は創造性を否定するつもりはないし、そんなフライが新しい人たちをこの遊びに導いてくれるなら歓迎だ。スイッシャー&リチャーズですら、当時は異端視されていたのだから。(続く)

 

 

旅するブーツ

2019.03.04

ストーク・オン・ザ・ワイルドサイド

 

okmt

 

 

そこはいわばもっとも厄介なポイントで、風を遮るものがないワイドでオープンな深瀬。風が少しだけ弱まり、数少ないチャンスがやってきた。

 

フォルスキャストは1度のみ、バックキャストから強く加速してストップ、その勢いのままラインはマスのやや上流めがけて伸びていく。だが、強風の中で投げるのに慣れ過ぎたのだ。ラインは魚の上流に激しく突き刺さってしまった。波紋が広がった瞬間、魚はスススーッと上流に泳いで逃げて行った。「あ、やっちまった」……

 

01

 

12月、初夏のニュージーランド(以下NZ )南島である。シーズン初期だから釣り人は少なめ。マスたちもスレていない分だけ、フライに対する反応もいい。ポイントは落ち込みや早瀬ではなく、緩い瀬の中央から下流側。ストーキングを伴うサイトフィッシング、数は少ないが魚はデカイ。この時期のNZ南島の釣りを要約するなら、こんなところだろうか。

 

問題は気象条件。北西風は強く、これが厄介なのだ。サザンアルプスを見渡す風光明媚な高原地帯は、ほとんどの川は北西方向から長く伸びてくる。標高差のある山脈から吹き降ろされる強風は、広い谷間を一気に駆け降りる。気圧の谷が数日ごとに島の周辺を通過し天候もころころ変わる。フライフィッシングには過酷な気象条件で、青空や無風を本当に恋しく思う日が少なくない。

 

02

 

この釣りの要は、歩くことだ。デカくて無垢なヤツをねらうなら、歩けば歩くほど恵みがある。たとえどんなに魚のいそうな落ち込みや早瀬であろうと、無視して素通りした方が効率はいいとされる。

 

デカいのがウヨウヨ泳いでいるような川は、よほど山奥の川でもない限り、ない。車でアクセスできる川なら、ホドホドのサイズで妥協する(といっても60㎝は狙える)か、アクセスからかなり遠いポイントまで歩いて行く必要があるわけだ。

 

私は、リフトアップされたRVやヘリを使ってポイントに横付けする種のフィッシングとは縁がないので、一日の釣りで最長なら20㎞、少ない時でも7~8㎞、平均すると一日10㎞ほど歩く。バックパッキングを信条に、山小屋やテントをベースに山奥の楽園とモンスターを探す釣りを続けてきたのだが、実際のところはただの貧乏釣行者。しかし反骨心も少しはあり「オレはワイルドサイドを歩くぜ」なんて思っていると、ちょっとは気休めになった。そんな旅のおかげで必要以上に分かってしまったことがいくつかある。

 

長距離釣行の要となる道具はブーツということは、身にしみた。初めてニュージーランドを放浪した1996年からかれこれ1000日ほど過ごしてきたので、これは確信である。最初の頃はよくわからず、やわなブーツ、ブーツ一体型のウェーダーで、ひどい目にあった。

 

疲労にもっとも影響するのはソール。グリップを重視して薄くし、柔らかさを増せば、足裏への突き上げが増える。足の裏で地面の凹凸を感じるようなダイレクト感は心地よく感じるのだが、実際は踵、膝、腰に疲労が蓄積する。逆にソールを厚くし過ぎると、ブーツの重量は増えグリップ力も劣る。グリップしないブーツで神経を擦り減らすのも疲労につながるだろう。疲れさせず、安全性を確保する……ウェーディングのためのブーツ設計は、実に微妙なバランスが必要なのだ。

 

03

 

さて、ラバー(ビブラム)ソールと、フエルトソール。その選択に悩まされる人も多いだろう。ラバーはまだ進化の途中なので結論的なことは言えないが、両者はやはり一長一短だ。

 

新品時のフエルト底は、ヌメリのある川底でも滑りにくい選択だが、劣化によるグリップ低下は著しい。柔らかな土砂の上を歩く場合や草地の場合、ビブラムにアドバンテージがある。NZでは、釣り環境の悪化を招く珪藻の移動を抑える理由からラバーソールのみ使用が許されているが、適所にスパイクさえ打ち込んでおけば、滑りやすい川床でもグリップ力が極端に劣ると感じることはない。こと日本に関しては好みで選んでいいと思う。私は両方用意していて、海外ではビブラムオンリー。日本のスリッピーな渓流ではフエルト、本流や湖ではビブラムで対応している。

 

私は2017~18年にかけて3度、延べ3か月半NZに滞在したが、シムス社の「ヘッドウォータープロ・ブーツ」(ビブラムソール)が、放浪生活の足元を支えてくれた。柔らかいビブラムは十分なグリップ力があり、アッパーのヌバック革は足へのフィット・ホールド感が抜群である。発売以来、取材にガイドにと酷使させているが、次第に味が出てきた。シューレースタイプを2足使い込んできたが、昨年BOAを1足追加。

 

魚を探し出し、フライの選択とキャストに集中する。その大事さは海外でも日本でも変わらない。安定した足元があることによって、私たちは安心して釣りに夢中になれる。旅はより快適になる。

 

04

 

 

奥本昌夫

 

ライター、フォトグラファー&ビデオ制作者

自称22年目の鱒釣り紀行作家。著書:北海道の鱒釣り(つり人社)

フライフィッシング・ガイドサービス「FishCamp」主催 www.masutabi.net

 

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