現代トラウトフライの進化

2019.04.06

A Trout Hunter[5]

50年間を振り返って (その2)

 

 by レネ・ハロップ

 

 

21世紀のタイイングにおいては、世界的な情報交換が生まれている。釣れるトラウトフライのデザインにおいて、アメリカ人タイヤーの独壇場という時代は終わっている。英国や北欧諸国をはじめとする欧州では、ファーやフェザーがいまだに愛されている傾向にあるようで、タイヤーたちは、ナチュラル素材にこだわりを見せながらもフライを進化させ続けてきた。

 

PMD No Hackle

PMD No Hackle

 

 

Rusty CDC Biot Paraspinner

Rusty CDC Biot Paraspinner

 

質に強いこだわりを見せる日本において、フライタイイングは芸術に近いところまで到達し、世界のトップクラスにあることは間違いない。フライフィッシャーの数はあまり多くはないが、マテリアルの質に細かな注意を払うのが日本人タイヤーである。タイイングをする人の割合はきわめて高く、できの良いフライはその人の誇りを反映する。トラウトフライ・デザインの基礎となる水生昆虫の世界をもっともよく理解しているのも、日本人かも知れない。刈田敏三さんがその牽引役だ。

 

Rene' Portrait

 

最盛期はとっくに過ぎてしまったが、私はいまだに販売用フライをタイイングしている。遠い昔と比べてみると、マテリアルの質の進化には驚くべきものがある。私が巻くことのできる限界、24番のフックに使えるドライフライ・ハックルが手に入るのは、トム・ホワイティングをはじめとする一流ブリーダーのおかげだ。タイイング世界に対する彼の貢献は、交配技術を使って、さまざまなフライに適した鳥を作り出したことにある。かつてレアであったスペイン原産コック・デ・レオンの羽根も、いまでは比較的容易に手に入れることができる。CDCは、比較的最近の私のパターンに多く採用する素材だ。かつてはカラーも限られ、流通も少なかったがいまは状況が異なる。ダビング材、バイオットなどとともにマッチング・ザ・ハッチ用のカラーが揃っている。かつては選択肢が限られ、フライタックルにおける「弱いリンク」であったフックも、ティムコをはじめとする日本メーカーのおかげでありとあらゆるフライのタイイングが可能になった。

 

TroutHunter Products

 

個人用フライには、できるだけシンセティックは使わないようにしている。マテリアルの選定はその人の自由であり、現代的なクリエイティブ・タイイングには化学素材が欠かせないという人もいて、入手の容易さとともに、素材の出どころを気にしなくてよいところも大きい。エルク、ディア、ムースといった大型獣のヘア、フェザントテイル、ターキーテール、ウッドダック・フランク、ダッククイルといった羽根は、伝統に魅せられ続けている私のようなタイヤーにとって、過去と現在、人間界と自然界をつなぐ貴重な存在であり、効果的な管理によりハンティングが可能な資源量が保たれていることをありがたく思う。

 

Wild Plumage

 

今となっては、クラシック・パターンを巻く機会は多くないけれども、フライタイヤーとしての私の成長はそれらがあったからこそである。私らしさというものがあるとするなら、それは50年以上まえに身につけた技術の上に育ったもの。ボビンを回すことができる限り、私はタイイングの歴史と伝統を尊重したクリエティブ作業を行っていくことになるのだろう。

現代トラウトフライの進化

2019.03.12

A Trout Hunter[5]

50年間を振り返って (その1)

 

 by レネ・ハロップ

 

 

21世紀も1/5が過ぎ去ろうとしているいま、デッティ、ダービー、フリックといった名前を知っている人たちはほんの一握りになってしまったのだろう。私がこの仕事を始めた60年代において、アメリカン・フライタイイングの最前線に立っていた人たちだ。ニューヨーク州キャッツキルのあたりに集まっていた彼らは、フライの質に関して高い基準を確立した。

 

コマーシャルタイヤーとして最初の10年ほどは、キャッツキル・パターンを巻くことが仕事の中心だったが、簡単なことではなかった。達人たちのテクニックは書物に記されていない秘密が多く、いまとなっては知る人も少ない。きちんとしたスタンダードを巻くには、時として入手の難しいナチュラル素材を精密に巻き留めることが必要だった。ライトケイヒル、ヘンドリクソン、ジンジャークイルといった東海岸パターンは、もはや過去の遺物になりかっているが、ボニーとわたしはオービス社へ卸すために何千本と巻いたものだった。70年代初頭まで、高品質フライは全米あちこちに散らばっていた、私たちのような個人タイヤーが供給していたのだ。

 

 At The Vise           

 

ハウス・オブ・ハロップのようなファミリービジネスをやっていくためにもっとも難しかったのは、トラディショナルなパターンを巻くためのナチュラル素材の確保だった。とくに、高品質ハックルはほんとうに入手が難しかった。米国内で生産される量は限られていたので、インドや中国から入ってきたケープやサドルを選ぶしかないのだが、品質にはじつにばらつきがあった。10枚買ったうちの1枚使えればよいほうで、18番以下を巻けるハックルを生やしているケープはさらに少なかった。美しいフライを巻くには美しいマテリアルから、という考えは、いまだに私の信念である。

 

 Classic Ginger Quill

Classic Ginger Quill

 

水生昆虫のイミテーションを作り上げるアプローチにおいて、70年代に大変化をもたらしたのがスイッシャー&リチャーズであるというのは定説で、私もまさにそうだと思う。高品質ハックルの入手が難しければ、それを省いてしまおうという考えが最初にあったわけではないだろうが、結果として彼らは、ハックル依存から脱却する道筋をつけたのだ。フライフィッシャーの注目を、ダンステージからイマージャーステージへと移したのが彼らの最大の貢献だろう。そのしばらく後、カリフォルニアのボブ・クイッグリーが「羽化失敗個体」の重要性を言い出し、「クリップル」という呼び方がフライタイヤーの間に定着した。

 

私の話をすれば、バイスを前にした創造プロセスは、ヘンリーズフォークをはじめとする難しい釣り場のマスが見せる、セレクティブな摂餌行動が加速させてくれた。私の観察に基づく仮説からアプローチするフライのデザインは、昆虫が水中から空中へと出て行く間に何度か起こる、マスにとって利用しやすい瞬間を念頭に置く。「トランジショナル(形態移行期)」パターンの誕生である。釣り人によるプレッシャーのせいでフライを拒否するようになった魚に、再びアピールを感じさせるマテリアルとしてCDCが登場したのは大きな出来事であった。80年代後半のことだ。ヨーロッパでは歴史のあるこの新素材は、すばらしい浮力と全体のリアルな印象により、これまでとはまったく異なるフライを作り出してくれた。

 

 Callibaetis CDC Last Chance Cripple

Callibaetis CDC Last Chance Cripple

 

Foam Hopper (imported)

Foam Hopper-Imported

 

 

フライタイイングの世界に巨大な変化が訪れたのは90年代だ。この釣りをやる人たちが爆発的に増え、フライのニーズも高まったので、小さな産業だったフライタイイングも大規模化していった。フライロッドを持ったこともない手と、マスを見たこともない目を持つ器用なタイヤーたちが生み出す何万本ものフライが、米国に輸入されてくる。伝統的なマテリアルにこだわらず、シンセティックを使おうという姿勢は、利便性と必要性の両方から主流となった。フォームを貼って作るようなタイプのものは、フライタイイングというよりはルアーメイキングであるが、私は創造性を否定するつもりはないし、そんなフライが新しい人たちをこの遊びに導いてくれるなら歓迎だ。スイッシャー&リチャーズですら、当時は異端視されていたのだから。(続く)

 

 

旅するブーツ

2019.03.04

ストーク・オン・ザ・ワイルドサイド

 

okmt

 

 

そこはいわばもっとも厄介なポイントで、風を遮るものがないワイドでオープンな深瀬。風が少しだけ弱まり、数少ないチャンスがやってきた。

 

フォルスキャストは1度のみ、バックキャストから強く加速してストップ、その勢いのままラインはマスのやや上流めがけて伸びていく。だが、強風の中で投げるのに慣れ過ぎたのだ。ラインは魚の上流に激しく突き刺さってしまった。波紋が広がった瞬間、魚はスススーッと上流に泳いで逃げて行った。「あ、やっちまった」……

 

01

 

12月、初夏のニュージーランド(以下NZ )南島である。シーズン初期だから釣り人は少なめ。マスたちもスレていない分だけ、フライに対する反応もいい。ポイントは落ち込みや早瀬ではなく、緩い瀬の中央から下流側。ストーキングを伴うサイトフィッシング、数は少ないが魚はデカイ。この時期のNZ南島の釣りを要約するなら、こんなところだろうか。

 

問題は気象条件。北西風は強く、これが厄介なのだ。サザンアルプスを見渡す風光明媚な高原地帯は、ほとんどの川は北西方向から長く伸びてくる。標高差のある山脈から吹き降ろされる強風は、広い谷間を一気に駆け降りる。気圧の谷が数日ごとに島の周辺を通過し天候もころころ変わる。フライフィッシングには過酷な気象条件で、青空や無風を本当に恋しく思う日が少なくない。

 

02

 

この釣りの要は、歩くことだ。デカくて無垢なヤツをねらうなら、歩けば歩くほど恵みがある。たとえどんなに魚のいそうな落ち込みや早瀬であろうと、無視して素通りした方が効率はいいとされる。

 

デカいのがウヨウヨ泳いでいるような川は、よほど山奥の川でもない限り、ない。車でアクセスできる川なら、ホドホドのサイズで妥協する(といっても60㎝は狙える)か、アクセスからかなり遠いポイントまで歩いて行く必要があるわけだ。

 

私は、リフトアップされたRVやヘリを使ってポイントに横付けする種のフィッシングとは縁がないので、一日の釣りで最長なら20㎞、少ない時でも7~8㎞、平均すると一日10㎞ほど歩く。バックパッキングを信条に、山小屋やテントをベースに山奥の楽園とモンスターを探す釣りを続けてきたのだが、実際のところはただの貧乏釣行者。しかし反骨心も少しはあり「オレはワイルドサイドを歩くぜ」なんて思っていると、ちょっとは気休めになった。そんな旅のおかげで必要以上に分かってしまったことがいくつかある。

 

長距離釣行の要となる道具はブーツということは、身にしみた。初めてニュージーランドを放浪した1996年からかれこれ1000日ほど過ごしてきたので、これは確信である。最初の頃はよくわからず、やわなブーツ、ブーツ一体型のウェーダーで、ひどい目にあった。

 

疲労にもっとも影響するのはソール。グリップを重視して薄くし、柔らかさを増せば、足裏への突き上げが増える。足の裏で地面の凹凸を感じるようなダイレクト感は心地よく感じるのだが、実際は踵、膝、腰に疲労が蓄積する。逆にソールを厚くし過ぎると、ブーツの重量は増えグリップ力も劣る。グリップしないブーツで神経を擦り減らすのも疲労につながるだろう。疲れさせず、安全性を確保する……ウェーディングのためのブーツ設計は、実に微妙なバランスが必要なのだ。

 

03

 

さて、ラバー(ビブラム)ソールと、フエルトソール。その選択に悩まされる人も多いだろう。ラバーはまだ進化の途中なので結論的なことは言えないが、両者はやはり一長一短だ。

 

新品時のフエルト底は、ヌメリのある川底でも滑りにくい選択だが、劣化によるグリップ低下は著しい。柔らかな土砂の上を歩く場合や草地の場合、ビブラムにアドバンテージがある。NZでは、釣り環境の悪化を招く珪藻の移動を抑える理由からラバーソールのみ使用が許されているが、適所にスパイクさえ打ち込んでおけば、滑りやすい川床でもグリップ力が極端に劣ると感じることはない。こと日本に関しては好みで選んでいいと思う。私は両方用意していて、海外ではビブラムオンリー。日本のスリッピーな渓流ではフエルト、本流や湖ではビブラムで対応している。

 

私は2017~18年にかけて3度、延べ3か月半NZに滞在したが、シムス社の「ヘッドウォータープロ・ブーツ」(ビブラムソール)が、放浪生活の足元を支えてくれた。柔らかいビブラムは十分なグリップ力があり、アッパーのヌバック革は足へのフィット・ホールド感が抜群である。発売以来、取材にガイドにと酷使させているが、次第に味が出てきた。シューレースタイプを2足使い込んできたが、昨年BOAを1足追加。

 

魚を探し出し、フライの選択とキャストに集中する。その大事さは海外でも日本でも変わらない。安定した足元があることによって、私たちは安心して釣りに夢中になれる。旅はより快適になる。

 

04

 

 

奥本昌夫

 

ライター、フォトグラファー&ビデオ制作者

自称22年目の鱒釣り紀行作家。著書:北海道の鱒釣り(つり人社)

フライフィッシング・ガイドサービス「FishCamp」主催 www.masutabi.net

 

B’s Fly Works Presents それって愛でしょ。— Hackle talk with you その2

2019.01.28

“ハックルの中心はブラックと叫ぶ”  

 

 Mitsugu_port

 

     「レッドタグとヒーバート・ヘンネック・ファーネスとワタシ」(佳境)編

 

真っ赤なシッポのフライで真っ赤なホッぺのニジマスを釣る

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 

 2018年のシーズンはじめ、冷たい雪代水がひと段落して川が落ち着いてきたころ。川辺にもいろんな陸生昆虫たちがチラホラ蠢きはじめた。ここオホーツク地方にもようやく遅い春がめぐって来た。でもまだドライフライにはチョイ早いかな、という季節。

 そんな春の日のよく晴れた午後、水深1メートルほどの砂利底のチャラ瀬にこのニジマスはいた。川底にべったりはりついて、時々魚体をユラリとうごかして流下してくるエサを捕食していた。

 斜め下流からソ~ッと近寄って数投目……いや~それでさあ、聞いてくれる?

 ゆるやかに流れるトロ瀬。水中のすべてが見渡せるようなジンクリアな流れのなか、水面直下を流れるフライに気がついたこのマスが、ゆっくりリラックスしきった様子でスローモーションのように浮かびあがりスーッと近寄ってきた。まるで空中に浮かんでいるよう。でさあ、見事なほどにおおきなヒレをフワッとひろげて、真っ白な口を開いてフライをパフッと吸い込んだんだよね。その様子がもう手にとるように丸見え。

 もうゾックゾクの瞬間。

 

 んで、ビシッとアワセをくれてやったつぎの瞬間、濃いオリーヴ色と血のような深紅の魚体がグネグネグネッと重々しく、激しく魚体をよじらせる。それが水中に差し込む春の陽の光を受けてギラッギラに輝きながら反射している。底光りする緑の背中と鮮やかな赤い頬と側線の鮮烈なコントラストが強烈に眩しく、そして艶めかしい……それはもう野性の織り成す神秘の万華鏡。白昼夢の世界に迷い込んでしまったワ・タ・シ。

 夢ではないことを証明するかのようにロッドを握る手にズシンと伝わる確かな重量感と、ギュイーンと唸りをあげて逆転するリール。

 もうドッキドキの気分。

 

 そして、トロ瀬を所狭しと暴れまわったニジマスを無事に取り込んで嗚呼うれし。魚体を水際にソッと静かに横たえて、早く逃がしたい気持ちに急かされながらカメラのシャッターを押そうとして、おもわずハッとしてドキッとときめいた。

 ニジマスの下顎にガッチリ掛っていたフライが、釣りあげたニジマスとまったく同じ色のコントラストで陽の光に反射しながら、キラッキラと輝いていたんだよね。なんてキレイで、そして生き物っぽいんだろう……。

 

 

 古典の代表レッドタグで温故知新

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 

 これがそのフライ。真っ赤な房状のシッポと濃緑色に輝くピーコックハールのボディ、そしてハックルだけのシンプルなハックル・パターン。

 この紅と緑のフライが、まったくおなじ虹色をしたニジマスの下顎にガッチリ掛っていた……そりゃあもう気持ちが弾む眺め。

 このフライは「レッドタグ」といって、なんと170年くらいまえに生まれた古典中の古典フライ。なんでも、川底にピタリとはりつくグレイリングを水面近くに誘い出して釣るために考案された必殺フライだったらしい。

 で、それから時は流れ流れて現在では、残念ながらもはや世界中で忘れ去られて久しい過去の遺物フライ。なんだけど、じつは現役で活躍中な場所がある。そこは南半球タスマニアの湖沼群。なんでも、水面に落下した陸生昆虫をクルージングしながら探しているブラウン狙いのために、ビートルなどテレストリアル全般のイミテーションとしてレッドタグが現在も大活躍中だとか。

 

 転じてここ北海道はオホーツク地方。各種のビートルを筆頭格に陸生昆虫パラダイスな釣り場だらけの当地。そんな環境で釣り暮らすこのワタクシが、レッドタグに辿りつかないわけがないのであった。さらにまた、このファンシー・カラーなフライの元々の目的でもあったように、流れを探るアトラクター系フライとしての絶大な効果に気がつかないわけがないのであった。

フックサイズ8番くらいから20番までの幅広いサイズに巻いて、ドライフライとして水面に浮かせても抜群。水面直下に沈めてナチュラルに流して最高。

 はたまたダウン・スイングの釣りにもバッチリ。止水のリトリーブの釣りにも最適。なんならヘビーウエイトで川底ゴロゴロ転がすのもとってもグッド。

 どのようにでもつかえて、そしてどのように使っても効果てきめん。シンプルな構造こそが多方面につかえる、という証明のようなフライ。そしてまた、この配色は「普遍的に効く色」であることを痛感させてくれる銘フライ。

 と、そのような古典の名作をば、ヒネクレ者のワタクシが釣り場でバンバカつかいながら自己流に改良しまくらないわけがないのであった。そんな私家版レッドタグの重要なキモのひとつとなるのが、このヘンハックル。

 

 

 ヒーバート・ヘンネック・ファーネスにぞっこんラブ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 

 ダン系カラーとならんでヒーバート・ヘンネックの代表的カラーのひとつでもあるファーネス。ヒーバート・ヘンネック・ファーネスの特徴は、まずヘンハックルでありながら色のメリハリや発色の鮮やかさが挙げられる。なので、このハックルをシンプルなレッドタグのハックルにつかうと、黒と茶色のコントラストがいかにも「虫の脚」を連想させて、元祖オリジナル・レッドタグの茶色だけのハックルよりも俄然活き活きとした生命感が醸し出されるように見える。

そして、なんといってもドライフライにもウエットフライとしても使い勝手がとても良い独特のファイバーの質感。一本のフライを浮かせても沈めてもつかいたいレッドタグにはうってつけのハックル素材ではないか。

 

パーマーハックルのレッドタグ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 

ピーコックのボディのうえにヒーバート・ヘンネックのファーネスをパーマー状に巻いたスタイル。ハックルの黒いセンターラインがちょうど良いアクセントになって虫っぽさ倍増。

これを水面直下にちょい沈めて流す釣りが個人的なマイブーム。大好き。厚めにハックリングしたパーマーハックルが流れの抵抗をモロに受けて、通常のウエットフライやソフトハックルよりもジワ~ッと流水に馴染んでゆっくり沈んでゆっくり流れる。なので、ナチュラルに流しているときやラインがたるんだ状態でもアタリが明確に出ることが多い。ので、アップストリームなウエットフライの釣りに最適。

さらに、初夏から盛夏のビッグサイズ・ドライフライが活躍する季節の道内各地の釣り場では、ロングシャンクなストリーマーフック6番前後に巻いたこのスタイルも頻繁につかう。これを水面あるいは水面直下に流すと、ものすごいショッキングなことになる。水面直下をフラフラ流れる毛むくじゃらの化け物フライにむかってグワンッ!と水面がド派手に盛り上がるようなかんじで巨マスが激しくもんどりうって出てきたりして……ポークビッツに毛が生えたような極太どでか毛虫は夏の巨マスの御馳走のひとつですよ。

 

 やらないわけがないヘアカディス仕様のレッドタグ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 

 

さっきのパーマーハックル・レッドタグに、ディアヘアをお馴染みエルクヘアカディス的に巻き止めただけのドライフライ・スタイル。だれもが思いつくようなアレンジではありますけれど、ファイバーがソフトな質感のヒーバート・ヘンネックを選んでいることで、かなり厚めにハックリングしても空気抵抗がかかって回転することもなくスムーズに投げられて、かつフワッと水面に乗る。これはボディハックル・ヘアウイング・スタイルのフライを快適に使ううえでかなり福音。なのでもちろんコレにかぎらず、ヒーバート・ヘンネックのハックルはこのテのヘアカディス系のボディ用としてとても最適。

それでやねえ、オッチャンが小声でエエこと教えたろ……ウールやエッグヤーンなどの素材で巻き止めたオケツの紅い房のところに、ジェル状フロータントをクリクリよ~く擦り込んでおきなはれ。すると頼もしいほどに水面高く軽々と長時間よく浮いて、さらに水面での水平姿勢なバランスの向上にお役立ちするゾ。

で、ヘアカディス・スタイルに巻いているからといって、カディスを意識しているわけではなく、ピーコックハールの太いボディとファーネスのヘンハックルの色調から、どちらかというとテレストリアルをイメージしたアトラクター・スタイルという位置づけ。

 

 

このフライをハイフロートでつかった結果

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

広いプールのフラットな水面で、ゆっくりクルージングしながらビートルやハネアリなどなどの小さめの陸生昆虫をチュボッチュボッと吸い込んでいたスレッスレのニジマス。パラシュートに巻いたビートルやアントなど、いつものボディが水面下に沈む半沈型スタイルのテレストリアル系フライは、くやしくも大中小サイズどれも撃沈。なので逆に12番のこのスタイルのレッドタグにフロータントを効かせて、ボディもろともポカッと水面高く浮かせてみた。マスの回遊コース上にソッと置いて待っていると……チュボッと……してやったり会心の一撃でございました。

 

ここで今回のワンポイント・アドバイスでえ~す。テレストリアルのなかでも、とくにビートルやアントはボディを水面下にめり込ませて半沈みで浮かせるだけではなく、水面膜のうえに乗るようにポカッと水面高く浮かせてみるのもとっても大事。そのワケは、水面に浮いているホンモノを観察すると一目瞭然。

 

裏切り者フライもおススメよ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 

英国生まれのファンシーハックル・フライに対抗して……ませんが、おそらく60年代のアメリカ中西部生まれのファンシー・ハックルフライ「レネゲイド」(裏切り者)も、ヒーバート・ヘンネックのファーネスのハックルをつかうとばっちりハマって、そしてよく釣れるパターンのひとつ。

こちらはオケツのところに、やはりヒーバート・ヘンネックの白いヘンハックルを巻いてあるので、水中に沈めてもなにかとよく見える。もちろん浮かせて釣っても使い勝手が良い。こうしてレッドタグやレネゲイドをつかってみておもうに、単純なハックルフライのボディ末端に流水の抵抗がかかる素材をボテッと巻いたフライのバランスって、じつはサカナから見てとても魅惑的なバランスになっているのかも……なんておもってみたりして。

 

 

備前 貢

B’s Fly Works

スコット社長から謹賀新年

2019.01.18

 

 

 

 

jb Ice thing

 

コロラド州モントローズから、新年の祝辞を申し上げます。さて、年の頭というのは、1973年に創業したスコットの今までを総括し、これからを考えてゆくのにたいへん良いタイミングだと思われます。つい最近、マーヴェリックスタッフと話した内容は、そのことをよく伝えていますので、ここにその内容を文字にさせてもらいましょう。

 

MS(マーヴェリックスタッフ):ジミー、昨今の北米マーケットにどんな動きが出ているか教えて欲しいんです。ここ数年、ちょっとした傾向が出てきていると思うんですが?

 

JB(ジム・バーチ):2、3の傾向は確かにある。ファーストアクションなら何でもいいという時代は、あきらかに終わった。ロッドの硬さには限界があるとユーザーの方たちが気づいたんだ。そりゃそうだよね、硬くしすぎると上の番手のロッドになってしまうんだから。それよりもバランスと、想定キャスト距離に即した設計が求められるようになってきた。

 

MS:淡水だけ、それとも海やツーハンド・ロッドに関しても?

 

JB:全般だね。これはよい傾向だと思うよ。

 

MS:それに、年とってきたアングラーにとって、速いロッドはちょっとキツイし。

 

JB:ティペットにも、魚の口にもフックにも負担がかかる。もう1ついえるのは、フライロッドのなかにも専門性がはっきり生まれてきたこと。たとえば昔は、9フィート6番という汎用ロッドをバスにも、トラウトにも、ソルトにも使っていた。でも、今は方法論が細分化してきたから、川ではグラスロッド、バスにはスロー寄りのグラファイトないしグラス、ソルトにはファーストなグラファイトといった具合に、対象魚別に選ばれるようになってきたね。

 

MS:用途に合った道具は、使っていて快適ですよ。

 

JB:スパナで釘を打つことはできるけど、効率的でもないし楽しくもないよね。ちゃんと釘の太さにあったハンマーを使うのが理想だ。それに、「目的別のロッド」という考え方は、つねにスコットのロッドデザインの背景にあったものだ。ハリー・ウィルソンは、カリフォルニアのバックパッキング用にパックロッドを作ることから始めた。

 

ハリーとラリーが出荷前のグラファイトロッドを1本ずつ測定する

HW LK

 

 

若きジミー・バーチの修業時代

OldJimmy

 

 

MS:バスロッドという分類も、時代の先駆だったと思います。

 

JB:マスキーロッド、ブルーウォーターロッドなども出したよ。偉そうに聞こえるかもしれないけど、「40年経って、やっとスコットの考え方が受け入れられ始めた」と感じている。

 

MS:ハリー・ウィルソンとラリー・ケニーの両氏があなたの指導者といえるのですが、彼らのやり方とあなたのやり方で違うところはありますかね?

 

JB:ハリーをよく知る人たちは、「ヤツはほんとうに頑固だから」と言っていた。しかし、それは熟考を重ねた上での頑固さなんだ。目標を据えて、長期的な見方をすることは彼から学んだ。ただし、きちんを回りを分析し、新しいものにも対応できるようにしていかないと泥沼にはまって抜けなくなることもあるだろう。この仕事は、信念に基づく頑固さと柔軟性を使い分けないとならない。グラスロッドを作り続けていることは、私たちがこの素材の素晴らしさに変わらない信念を持っているからだし、海竿メリディアンに、ごくファーストな2ピースとスロー寄りの4ピースという違ったアクションのラインアップがあるのは、まったく違う人たちが使うと分かっているからだ。2ピースは、ボートに積みっぱなしにする竿(笑)。

 

MS:スコットが打つ次の一手は誰もが楽しみにしていると思います。どうかよろしく(笑)。

 

Scott_ad_1978

 「生産は追いつきませんが、探していただくに値する竿……スコット(1978年の広告より)」

 

Icaland_salmon

 

 「いまだに生産追いつきません、ごめんなさい!(社長の弁)」

B’s Fly Works Presents それって愛でしょ。— Hackle talk with you その1

2018.12.14

“ハックルの中心はブラックと叫ぶ”  

 

 Mitsugu_port

     「ファーネスを語る」編

 

 茶色系ハックルのファイバーのセンター部分、つまりストーク付近の芯のところに黒いセンターライン状の模様がはいっているハックル。とくに珍しいものではなく、茶色系のハックルを探しているとどこでもよく見かける。ただ、模様はそれぞれ同じではなく、ファイバーの先端付近も黒くなっていたり、はたまた不規則な斑点模様のようになっていたりと種類によってバリエイションさまざま。

 で、そのように微妙な縞模様に応じて……、

 センター付近の黒色の濃淡のちがいによってファーネスといったりグリーンウェルといったり。

 はたまたファイバー先端部分も黒いのはコッキィ・ボンデュと呼ばれたり。

 さらにセンター付近の黒が二本線になっていて、さらにファイバー先端も黒くなっている珍品はニーキャップなんて言われたり。

 などなどと、その呼び名は細かく分けられている。いちいち複雑。

 そして、ハックル中毒なうるさ方の皆さまにおかれましては、自慢のハックル・コレクションをズラリと机に並べて、その微かな模様のちがいを発見指摘しては、ああでもないこうでもないと終わりなきハックル談義に花を咲かせていらっしゃいます。このビミョーな色調のちょっとしたちがいが、ハックル・マニア心をたいへんくすぐるのです。そして、それもまたマニアックなハックルの愉しみとしては、おおいに健全なことでございましょう。

 

 で・す・が・そんなマニアックもとってもいいけれど、まずはがっつりマスを釣りたい、できればでっかいのが釣りたい、そんな釣欲最優先かつ実戦派なところで、釣るためのタイイングでこそハックルをナニしたい貴方……そんなこむずかしいことは考えなくてヨロシ。

 茶色か茶色っぽい色合いでハックルの芯のところが黒くなっているハックルは、コックハックルでもヘンハックルでも種類を問わず、さらに微妙な色調や模様のちがいも問わず、どれでも「メチャ釣れる」もしくは「メチャ効くいろんなフライにつかえる」とっても有効につかえる美味しいハックルだ、と憶えておくだけで充分。

 

 というわけで、ここではこのような色調と模様のハックルの呼び名を以下「ファーネス」で統一してしまいたいとおもいます。なぜならホワイティング社のハックルのカラー・ネームを見ていると、ひとからげに大概そのようになっているから。賢明なご判断だとおもいます。

 そしてさらに付け加えれば、このテのハックルは実際にとても効くだけでなく、この黒いセンターラインの模様があるだけで、ハックリングしてみればアラ不思議。もうなんとも巻き心が踊るといおうかなんといおうか、巻けば巻くほどにイメージと妄想がどんどん膨らんで、フライタイイングがさらに濃厚に、そして深く愉しめることうけあい。オフシーズンのいま、タイイング机にむかって冬の夜長を熱くときめきながら過ごすには、まさにうってつけ。タイイング気分おおいにそそられるハックルのひとつというわけです。

 

ファーネス四天王

OLYMPUS DIGITAL CAMERA   

 

左から順に、

1. 濃厚な色合いで細く硬いファイバーで、先端も黒くなっているものが多いのが特徴のヒーバート・ファーネス。ハックルを薄くハックリングした繊細な暗色系パラシュート系ドライフライにバツグンにグッド。

2. 黒いセンターラインが細く、かつ明瞭でファイバーが太め、全体の色調が明るい暖色系になっているヒストリック・ファーネス。このなかではファイバーがもっとも透明感に富んでいるところも大きな特徴。厚めにハックリングした高浮力目的のパラシュートやウルフ系のドライフライに最高につかいやすい。

3. 黒いセンターラインが幅広で、ウェブつまり繊毛が濃いが、ファイバー先端の茶色部分が透明感があるヒーバート・ファーネスのヘン。ヘンハックルなので、もちろんソフトハックルもしくはクイルウイング搭載ウエットフライのスロートハックル、あるいはウーリーバッガーなどのニンフにも常用するけれど、じつはドライフライにもすごくおススメ。とくに中型サイズから極小サイズのアントやビートルのハックルとして最適。そして意外にも各種フロータントとの相性も良好。とくに顆粒状のシェイク系フロータントやスプレー式のフロータントと併用すると、ウェブの部分にフロータントが付着するので、ノーマルなコックハックルよりも軽々浮かせることが容易になる。

4. ハックル自体は短いけれど、ファイバーが最も長く、かつソフトな質感で黒と茶色のコントラストが明瞭な4B。ファイバーの長さと質感を活かして、ハルゼミや大型ビートルを暗示したマシュマロ系巨大ドライフライや、大型サイズのウルフ・スタイルなどのテレストリアル系には、いまや欠かせないハックル素材。コック・デ・レオンのサドルハックルなどと組み合わせればさらに真価を発揮。ハックル・ファイバーが震えるような振動アクションを演出できる。そして、黒と茶色のコントラストがまた、このテの大型テレストリアルの「水面でもがく脚」の質感と色調を誇張表現しているように見える。

 

ここではいずれもネックハックルを取り上げた。ホワイティング社を代表するファーネス軍団4種。こうして細かく見れば独特の特徴がある。けれど、どれも同じようにつかえて、かつそんな特徴を活かしてもつかえる。

 

ヒーバート・コックネックのファーネスにドッキドキ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

まずは典型的な色調のヒーバート・ファーネスのコックハックルをアップにして仔細を見てみよう。透明感のある濃い茶色のファイバーの中央に、マットな質感の真っ黒なラインが、ハックルの根元付近から先端にむけてテーパー状に走っている。そして、そんなファイバー中央部の黒いラインは微かにウェヴ状になっているので、そのぶんファイバーが太くなっている。また、色合いも不透明なので黒色がより浮き出て見える。なので、透明感に富んだ茶色のファイバーとの色のコントラストがとても鮮明。

と、そのようなハックルをハックリングして、渓流用のドライフライとしてはお馴染みの定番中の定番的パラシュート・スタイルを巻いてみた。なんとなくマダラカゲロウ風なクイルボディのパラダンから、クリンクハマー・スタイルなフローティング・イマージャー、それにスペントウイング系、さらにアントやスパイダーなどのテレストリアルまで、各種アレコレを巻いてみると……。

 

パラシュート作例各種

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

ハックル基部、つまりソラックスにあたる部分にちいさな黒いワンポイント的アクセントが自然に出来る。そしてそこからナチュラル・カラーなハックルファイバーがスラッと伸びている。これがファーネス最大の特徴でもあり最高の旨味になる。

普通にハックリングしただけで、いかにも虫っぽい質感と、活き活きとした生命感を醸し出す、フライに虫の命を吹き込む源になる。

 

いつものパラシュート・フローティングニンフ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

カーヴドシャンクなドライフライ・フックに巻いた、これまたお馴染みのパラシュート系フローティングニンフの作例。マッチ・ザ・ハッチ的にとくにどのカゲロウを模したというわけではない。各種のカゲロウなどがバンバカ羽化しているハイシーズンな季節に、渓流を軽快に釣り上りながらポイントを探っていくアトラクター・スタイルなフローティングニンフとして、高浮力を得るために厚めグルグル巻きでハックリングしている。ちなみにハックルはヒストリック・ファーネスのネック。そんな厚巻きハックルの基部、つまり根元付近の黒い部分にこそご注目を……。

明るい茶色のハックルの中央部分で、真っ黒なファイバーがパラッパラに、とってもファジーに、フワッとひろがっているではありませんか。

このかんじ、この印象、この色調、水生昆虫にも興味津々な方ならば、今まさに羽化しようとしているカゲロウの状態のなにかを連想させませんか?

羽化するために水面直下に浮かびあがってきたイマージャーや成熟ニンフの黒く変化したウイングケースが割れて、その中からニュルンッとダンが出てきているような……そう、羽化寸前のカゲロウに特徴的なこの状態を、ハックルをクルクルッと巻くだけで勝手に、そして自然に、しかも絶妙な印象で表現できてしまう……これぞハックルの魔法。

 

というわけで “ハックルの中心はブラックと叫ぶ” シリーズ第2弾、「佳境」編へとつづきま~す。

 

 

備前 貢

B’s Fly Works

CASTING TIP Dec 05

2018.12.05

Higashi_portrait

 

こんにちは、キャスティング部門をおもに担当する東です。このスペースでミニレッスンを行う許可を頂きましたので、冬の間はすこし投げ方のことに関して、ワタクシのアプローチをお伝えしていきたいと思います。魚のことにあまり気を取られることなく、水辺に出る(=練習する!)ことのできるよいシーズンですから……日差しも弱めですので、あまりぎらつきに邪魔されることなく、自分のキャストの各パーツを観察しながら練習できると思います。

 

そう、観察は大事です! 繰り返して言いたいですが、キャストがうまく行くのも行かないのも、ループがねじれるのも、テイリングするのも、すべてはっきりとした理由があります。その観察のしどころをお教えしながら、このシリーズを進めていきたいと思っています。ただし、ある程度のキャストができる中級者のかたを想定していますことをご了承くださいませ。

 

さて本日のポイントは、「関節の角度に注意」です。

シングルハンド・フライキャスティングのキモの1つは、同一平面上でフライロッドを移動させることです。自分からわりと離れたところにあるロッドティップが曲面をなぞるように動いてしまうと、うまくループが整いませんね……。

手を横方向に大きく振り回すようなモーションがダメなのはわかっていただけると思いますが、手元ではちゃんと平面的な動きをしていると思えるのに、ティップは曲面を動いてしまっているというケースはよくあり、その典型例がこれです。

 

Cast3

 

利き手の真後ろから、まさにフォワードキャストを始めようとする瞬間を撮った写真ですが、前腕とロッドに角度がついてしまっているのが見えますか? これで絶対うまく投げられないとは断言しませんし、この方もループコントロールが上手なのですが、最後にループがまっすぐに展開しない傾向がありました。なぜ? 前腕がターゲットに向けて平面上を動いていっても、手首は別の方を向いていますから、これを使って加速しようとすると、ロッドティップはその2つの別の動きが合わさって、さいごにクルンと内側に巻き込むように移動してしまうから。その結果、ループの上下が同一平面にない、立体的なねじれた形にできあがるわけです。ロングティペット派の渋谷直人くんも、この現象がプレゼンテーションの大敵といつも言っていますね。

 

簡単にまとめますと……前腕とロッドは向きを一体化させる気持ちで。今日はこれだけ覚えておいて、練習してみてください!

 

東 知憲

G3愛好者の興奮 — RANDOM CASTS

2018.11.02

Higashi_portrait

 

鮭鱒の釣りは、さまざまな温度環境で釣りをする可能性があります。真夏のモンタナ、気温は30℃オーバー。晩秋のカナダ、朝の気温はマイナス5℃。これだけの温度差に1本のウエーダーで快適に対応するなど、一昔まえは考えられなかったと思います。ウエットウエーディングか、ネオプレンかという両極端です。

G3は、シムスのラインアップの中の働き者。爆弾が落ちても壊れなさそうな、5レイヤー素材を潤沢に使うG4と比較するとすこし華奢に思えるかもしれませんが、むしろその軽快感がうれしいウエーダーです。私は初代G3から先代まで、G3ストッキングフットをはき続けてきましたので、このモデルに関しては一言あるのですが、最新世代は正直にいうと全くの別物といってよいほどの素材進化を遂げています。腿から下は、足さばきの軽快さを求めて、5レイヤーから4レイヤーに変更されていますが、むしろピンホールはできにくくなっているようで、藪漕ぎをしても水漏れはいまのところ皆無です。5レイヤーを使った旧モデルはゴバゴバした感じがありますが、この新G3はまるで完全防水のチノパンツのような(ジーンズではありません)、快適で静かな履き心地。このウエーダーを履いた、春から夏期の暖かい時期の釣りの快適さは、ご想像いただくことができるでしょう。しかし寒い環境下の釣りではどうかというと、これも劇的に快適性が進化していることには驚き。この最新4レイヤー・ゴアテックスは、足が水中に没した状態でも中の水分をよく排出してくれます。

 

Higashi_steel01

 

この秋のカナダは記録的な渇水になり、日中は30℃に近い日もありましたが、急に冷え込んで氷点下の朝もありました。ガイドも凍るそんな寒さの中を、腰までウエーディングしてひたすら魚信を待つのがスティールヘッドの釣りです。この薄いウエーダーをスティールヘッドに使うことにはややためらいもありましたが、数日使うと、もう後戻りはできないと思いました。5レイヤーは、たしかに耐摩擦性能や耐久性は高いのですが、どうしても中がムレ気味になります。やや汗冷えをする感じもあり、ドライ感があるとはいえません。しかしこの新4レイヤーは、薄手のインナーに厚いインサレーションを履き、さらにカイロを腰に貼ってもいっさいのムレ感がなく、肌はさらりとしたまま。最新のレイヤリングを組み合わせれば、これぞ新時代のウエーディング・キットという実感があります。

 

ImageCut_Simms

 

 

この快感は、プロショップでの試着だけではご理解いただけないのが残念ですが、少なくとも軽快な足さばきと精密なフィット感は味わっていただけるでしょう。フィールドに持ち出すと、さらに驚きがまっています。楽しみにしてください。バルクリー・ジャケットと同じく、私にとっての最近の傑作と断言してしまいます。

 

東 知憲

コンマ5の冒険 — それって愛でしょ?

2018.10.11

Mitsugu_port

 

細い糸で大物を釣りあげるのがエライなんて、まったくおもってない。それよりも、スレッスレの百戦錬磨を、手練のワザでいかに騙して太い糸で食わせるか…これだよな、とおもってる。

なんだけど、それじゃあどうにもならないときもある。

 

鏡のような止水の水面で、悠々とクルージングしながら羽アリを吸い込んでいるゴッツイやつ。7Xまで落とせれば、なんとかイケるかもしれない。しかし、よしんば掛けたとしても目の前には倒木が。あそこに突進されたら……。川底の岩盤の切れ目のところに定位している極太の美熟女が、流れてくる流下昆虫を水中で盛んに食っている。流水の抵抗を軽減できる5Xなら、スムーズにニンフを沈めてサイトで狙える。しかし、するどい岩盤の角がキバを剥いている。あそこに擦られたら……。

できることなら、太いティペットで狙いたい。とはいえ、まずはフライを食わせたい。まずはフライをうまく流したい。勝負はそこから。ぜひとも手中に収めたい大物を目の前にして、アレかコレか、ああ悩ましい。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA_01 

「4.5Xだの6.5Xだの、そんなハンパな太さのティぺットなんかつかわねえよ、どうせベストのお荷物じゃん」なんておもっていた時期がワタシにはありました。

が!ヤツとの闘いのためにはぜひとも太い糸で釣りたい。けれど、この状況ではワンランク細いのを選択するしかないという、なんとも切なく、そして心細い場面。こんなとき、このコンマ5の微妙な太さのちがいにどれだけ助けられたことでしょう。ココ一番のところで、おもっているよりずっとムリが効くとか、コンマ5だけ細いがゆえにかなり融通が効くなどなど、そんな「コンマ5すげーじゃん」体験を重ねてまいりますと、この微妙な太さがじつに頼もしい。

 

 OLYMPUS DIGITAL CAMERA_02

 

そしてなにより「ここで会ったが百年目、イザ大勝負!」めったにないチャンスに遭遇しての緊張と興奮の場面で、絶大な安心感や信頼感をもって勝負に挑めるというのは、闘いに勝利するためにはとても重要。そんな、メンタルなところにもコンマ5がヨ~ク効いている気がするのです。ティペットの限界ギリギリ、丁丁発止の大物とのファイトではあるけれど、コンマ5をつかっていることで気持ちのどこかにすこし余裕がある……だからこそ冒険できるというわけです。

あ、手のひら返しはワタシの得意技です。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA_03

 

追伸:2018年10月発売の季刊フライフイッシャー誌秋号にて、止水深場のユスリカの釣りをテーマにして、大物アメマスを執拗に追う抱腹絶倒?の長編ドキュメントを掲載させていただきます。6.5Xティペットの真価が問われまくった釣りの日々と、そこでつかった必殺ニンフたち。御一読いただければ、爆笑とともにワタシのこのティペットへの熱い想い入れを感じていただけるかとおもいます。

 

備前 貢

B’s Fly Works

延長線としての「F」— RANDOM CASTS

2018.09.14

 

Higashi_portrait 

 

大学生のときからスコットでアルバイトをし、現在社長として会社の舵取りを行うジム・バーチももはや50歳台。初代社長ハリー・ウィルソン、次期社長ラリー・ケニーの2人と近しく仕事をし、スコットのイズムを呼吸したこのかつての若者は、フライロッドがファイバーグラスであった時代を直接に知り、かつ現在もグラスロッドのデザインを続けている希有な存在だ。そんなジミーに、新生Fの特徴を踏み込んで聞いてみた。

 

IMG_5141

この新しいFは、かつての時代の延長線上にあるんですか? それともなにか斬新なことを達成しようと試みています?

 

—「40年以上も前に始まった、スコットのグラスロッドの歴史の上にぴたりと乗っているモデルだよ。もともとハリー・ウィルソンは、シエラの山の中に分け入るバックパッカーたちが使いやすい、4ないし5ピースのライトライン・ロッドを作りたいと考えたんだ。マルチピースのライトラインという考え方は、新生Fでもきちんと踏まえている。伝統的なデザイン面の特徴は活かし、新しい雰囲気も盛り込もうとしているけど」

 

なるほど。大きく進化したところはどんな点?

 

—「軽さと、近場でもさらに投げやすくなっているところかなあ。テーパーは新設計だし、ブランクは素材を硬すぎないEグラスに戻し、壁厚を見直してある。複数のチューブを重ねて接着して作るホロー・インターナル・フェルールも、実は進化をとげて軽くなっているんだよ」

 

 

Scott_Jimmy

 

 

グラスはここ10年来のトレンドという感じもありますが、どうですか? 若い人たちは新鮮な感動をもってこの素材に接している手応えもあります。

 

—「小さな川で使うフライロッド用素材として、グラスはベストな場合がある。グラスロッドなしのスコットなんて、これからも考えられないね。幸いなことに俺たちには、振り返って参照するべきすばらしい伝統があるから、それを大事にしていきたいと思うよ」

 

 東 知憲

  • 全ての新着情報
  • News
  • Products
  • Column