刈田敏三のテクニカルシアター

2021.07.15

Toshi_port

ライズを仕留めるノット  

 

 

フライ選択や使うノットなどは、人それぞれ。あるイベントにて。「・・・お勉強はこれくらいにして、さあ実釣タイム!!」しかしフライを結んでいた方の指先を見て・・・驚いた。フライにツノが生えているじゃないか。ただでさえ、楽勝じゃないライズを釣ろうという場面。「あっ、ティペット切り忘れてますよ」

 

tk001

 

でもそのヒトは、ヒットの瞬間にツルッとティペットが抜けることがあって、ティペットの端を短く切るのが不安とのこと。しかし滑ってしまうノットは、いずれ抜けてしまうか切れる。どっちみちダメなのだ。

 

…そうだった。昔、自分もフライフィッシング手引書のままにクリンチ系ノットを使っていた頃には、ティペットのスル抜けがあったのを思い出した。いいのをバラした後にティペットを見ると。ノットがクルクルパーマに…そうクリンチ系ノットは、構造的にティペットが抜けやすい弱点があった。ティペットをねじって、先端を押さえるだけだから、どうしても止めが甘くなりやすいのだ。だからといってギュウギュウ締め付けても、プチっと切れたりした。

 

近頃は、細くても強いティペットができて、ミッジングや極小フライを使う時にも、心配は格段に減った。とはいえ、やはりノットは、ライズを狙うフライフィッシャーにとって最後の生命線ともいえる重要ポイント。ティペットのスル抜けやアワセ切れは、絶対避けたい。

 

tk002

 

だから、様々なノットをあれこれ試してきた結果。ライズを釣る時には、こんなシンプルなノットを使っている・・・ただし結論は出たけれども、このノットの名称は調べきれていないし、ひょっとしたら本当に無名かもしれない。

 

このノットの特徴は、まず出来上がったノットが小さいこと。そして、ツルッと抜けることがなく、ティペットの持つ結束強度を損なわないこと。また、小さなフライ対応で、フリーノット的にも使えるメリットもある。つまりこのノットは、ノット自体で完結しているので、フックアイに頼って締め付ける必要がないのだ。以下に結び方写真を掲載しておく。

 

A) フックアイに通したティペット先端で、元ティペットを中にしたループを2つ作り、重ねる。

 

knot317

 

B) 二重にしたループにティペット先端を、二回通す。ピンセットを使った方が、よりスムーズにノットを作りやすい。

 

knot319

 

 

knot330

 

C) できたノットを十分に引き締める。この時にノットを水やツバで濡らせば、締め込みがスムーズになるのは、ノッティングのセオリー。ノットを指でつかんでフックアイまで持っていくか、フリーノット状態にしたままキャストするかは、お好み次第。

 

knot323

 

tk003 

 

カリタ式ノット。強いしツル抜けなし、のはず。ぜひお試しあれ。

 

 

 

 

水生昆虫研究家・フライクリエイター 刈田敏三

 

 

HATCH ICONIC REEL 発売!!

2021.07.07

hatchiconic-01

 

Hatch Outdoorから新製品フライリール「Iconic」(アイコニック)シリーズが発売となります。

 

「Iconic」シリーズは、前シリーズの「Finatic」シリーズをさらに進化させました。

見た目的には、前シリーズのデザインを継承しながら、細部に新たな要素が追加されています。

前シリーズからの最大の変更点は、ドラグ周りの改良です。

デザインを見直してより機密性がアップ、高い剛性とスムーズなドラグ性能の安定性を実現しています。

 

サイズは3 Plusから11 Plusまでの6サイズ。

カラーはBlack/Silver、Clear/Blue、Clear/Red、Grey/Blackの4色です。

 

http://www.maverick.jp/products/brand/hatch/

 

TACKLE TIP July 01

2021.07.01

bigeye

 

フライを見つけてゆっくり浮かび上がってくる魚。バクンとライズ。あせるな、急ぐなと自分に言い聞かせ、頭が下を向くのを待ち、満を持してぐいとロッドを立てる。バチンというイヤな音とともに、力なくこちらに飛んでくる、フライのないリーダー。「ああ……」。そんな悲しい出来事を避けるために、果たしてなにができるでしょうか?

 

DSC_1139_2_1623745044108のコピー

 

質の高い、柔軟なフロロカーボンのティペットは、私たちの渓流フライフィッシングを変えてしまったといっても言い過ぎではないでしょう。フロータントを塗ったフロロカーボンは水面に乗せておくことができ、水よりも比重が高いことは細番手ではあまり問題になりません。ナイロンに比べて突出して高い耐摩耗性が、渓流環境に最適ということが分かってきました。渓流では、フロロカーボンティペットはナイロンのリーダー本体に結んで使うことになります。リーダーがフロロカーボンだと、太いところが一気に沈んでしまい、メンディングはできずデッドドリフトに大きく支障を来すからです。

 

しかしこの、ナイロン+フロロという接続には細心の注意が必要で、たとえて言うならばシラタキとワイヤーを結ぶようなもの。すこし引っ張るたびにワイヤーはシラタキに食い込み続け、いつかは切れてしまいます。木の枝にひっかかった、魚が掛かった、ファイトした……それらが生み出すテンションは、すこしずつフロロをナイロンに食い込ませていくのです。

 

IMG_7479

 

ではどうすれば良いのか? まずは、自分が使っているティペットの強さを、太さごとにしっかりと自分の手に教えておくことから始まります。日本の川で使うサイズ(私の場合は6x、6.5x、7x くらい)は、シーズン開始前、いやシーズン中でも随時、ケチケチせずにぶちぶち切って実感しておきましょう。そして、リーダーの結節がうまくいったかどうか、その手感に則って毎回判断します。強さは、ノットがない場合に比べて3割くらい低下しても仕方がないですが、半分ほどになってしまっているならあきらかに失敗。ノットが切れるとしたら、実際に魚を相手にしているときではなく、手元で仕上がりを確認しているときのほうがはるかに良いわけです。

 

そして、釣りの最中もノットを定期的にチェックして、ワイヤーがシラタキに食い込みすぎてはいないか、確認することが大事。自信を持って締め込み、きちんと強度も出ていると確認したノットが、1時間もすると急にブチンと切れることはまれではないからです。結局は感覚が大きな要素となるノット作り。そのためには、手の感覚の定期的なチューニングが必要になると思います。

 

Knot

 

 

東 知憲

天塩川の初夏スイング — WildなLife

2021.06.02

Chiba_port

 

 

私のメインフィールド、天塩川はとても特殊な釣り場です。川幅は広く、魚は必ずしも多いわけではありませんが、きちんと釣りを組み立てていくと必ず報われる。ニジマスとアメマス、イトウが主な対象魚ですが、今回はニジマスの初夏の釣りに関して、私のメソッドと考え方をお教えしましょうか。

 

私は、フライをキャストしてスイングさせる釣りにこだわっていますが、ニジマスはスティールヘッドやアトランティック・サーモンなどの魚とは行動が大きく違います。生殖活動をすべてに優先させるようギヤが入った遡上魚ではなく、基本的には川に居着いている魚なので、その行動は摂餌がメイン。6月になると天塩のニジマスは水生昆虫をよく捕食するようになり、ライズすら見せます。そんな魚をスイングで釣るためには、水面近くでウエットフライないし小型のチューブフライを使うのが向いています。

 

Chiba_Flies

 

 

ラインはエアフロのD/X ヘッドに10フィートのポリリーダー+ティペットを付けますから、実質上50フィートというミッドベリーに近いシューティングヘッドと考えることもできます。通常のスカンジナビアン・ヘッドやスカジット・ヘッドよりも長いのでキャスティングのテクニックはより高いものが求められますが、あまりランニングラインをたぐり込まずに投げられますのでテンポが良く、効率はずっと上がります。

 

Chiba_Sakana

 

 

私がやっているこの釣りは、時合いの頂点にいる魚しか相手にしていません。時合いというのは、水温、水量、気圧、光量、その他のさまざまな要因が影響してきますが、そのベストな時合いの中でも、スイングされているフライに反応するのは一部の魚でしかないのです。最高の効率を求めるならば、インジケーターをつけてニンフを流したり、シンキングラインでリトリーブしてやれば良いのはわかっていますが、それでも私はスイングの釣りにこだわりたい。リトリーブの釣りは休憩がなく、釣れないとほんとうに辛いのですが、スイングの釣りは違います。キャストしてラインの形を整え、スイングに入れば、回りを見回したり環境を楽しむ余裕も出てきます。フライが真下まで泳ぎ切ったら、またリズミカルにキャストを繰り返すわけです。10人並んでも、ローテーションを組んでまったく問題なく釣りができます。

 

神奈川生まれながら、北海道に長く住んだある人が「天塩川って、最後にたどりつく釣り場だね……」と言っていました。1日に何回か来るであろう「ズーン」というアタリを心から楽しむことができれば、あなたはスイングのとりこになってしまうでしょう。昔と比べると、何が何でも魚を引っ張り出してやろうという野武士的な釣り人は減ってきたようで、この周辺では大人な釣りのカルチャーが生まれつつある気がします。これだけ釣ったぞ、という承認欲求や競争心に基づく釣りから、究極の満足感を求める自分中心の釣りへ、意識が動きつつある感じですし、この川をスイングで釣りたいと思う人が増えるのは大歓迎です。私個人としては、歯磨きと同じように日常的に、ストレスを感じることなく釣りができるすばらしいフィールドなんです。ぜひあなたも、一度。

 

 

Wataru_sakana

 

Wild Life 店主 千葉 貴彦

SIMMS & Scott Pro Staff

森村義博の漂飄亭日記

2021.05.21

Mori_Portrait

 

真剣な遊び、何を優先する?

 

 最近のラージアーバーリールは、デザイン的に見ても洒落たものが多い。以前は、ハンドルと反対側にカウンターバランサーが取り付けられていたものが見受けられたが、最新のモデルではスプールの重量配分をうまく行い、バランサーを目立たなくした製品も登場している。カラーもいくつか用意されているから好みのものを見つけられるだろう。ラージアーバーリールは、ラインキャパシティが同じならレギュラーアーバーより口径が大きくなってしまうのは仕方がないことで、ロッドとの見た目のバランスが気に入らない人もいるだろう。実は僕もそうだったが、結局は慣れの問題だと思っている。

 

 この前のエントリーではラージアーバーリールのメリットを取り上げたが、それではレギュラーアーバーのリールの出番が一切なくなってしまったというと、そんなことはない。かつて常用していたオービスのCFOやハーディーのライトウェイトシリーズは、今もって古さを感じさせない普遍的ともいえるデザインはもちろん、前述したようにバックラッシュを起こさないドラグ(自動)調整性能は素晴らしいと思う。リールの逆転音にも魅力を感じている。フライフィッシングは趣味の世界であり、僕自身も普段はデザインやカラーリングも含めたロッドとのマッチングでリールを選択することの方が多く、今もレギュラーアーバーのリールをよく使う。

 

 

P1030532-3 (2)のコピー

 

 

 右利きの僕は、手持ちのリールをすべて左巻きにしている。フライフィッシングをはじめた時からのことで、左巻きのメリットを知っていたからでも何でもなく、この釣りを教えてくれた友人が左巻きにしていたので、右にならえ、をしただけ。しかし今は左手巻きに大きなメリットを感じている。大型魚は大きなパワーと持久力を持ち、ファイト中には何度も機敏な動きを見せるのが普通だ。こうした走りと動きに、利き腕によるロッドワークと左手によるリールファイト(=ラインコントロール)を同時に行えることは大きなアドバンテージになる。昨年初めて北海道の釣りを経験した友人は、次の釣行に備えてリールを左手巻きに変換している。

 

 大物で思い出したが、北海道の対ニジマス用のリールと、大型ヤマメが出る可能性の高い本流河川用のリールにはWFラインを巻いている。フライラインのヘッド部以降が細いWFラインは、DTより水の抵抗が少ないからだ。大型のニジマスが掛かったときに、水中に突き刺さっているフライラインの方向とはまったく別の方向にジャンプすることは良くある。その時、フライラインは急激なカーブを描きながらも、ヘッド部分が水面から持ち上げられるのだが、水中に入っている水の抵抗は相当なものだと思う。そんな抵抗を少しでも和らげられたらという思いは強い。よってWFなのである。

 

 僕はもうじき65歳になる。この先、大型魚やとびきり美しいメモリアルフィッシュに出会える回数は少しずつ減っていくだろう。釣りに運不運はつきものだが、ロッドやリール、ラインの選択やリーダーシステム、ティペットの接続方法なども含め、今後も万全の体制で流れに立ちたいと思っている。

 

 P1040925のコピー

 

 

森村義博の漂飄亭日記

2021.05.16

Mori_Portrait

 

レギュラーVSラージアーバー

  

 僕のフライフィッシングは、1975年にブローニングのグラスロッドとマーチン62からスタートした。当時のフライリールは、渓流域での釣りに限って言えば、ラインを収納できればそれで良し、という考えが一般的だった。バッキングラインは、フライラインとリールのフレームとの隙間調整に巻かれる程度で、ラインの選択によっては省略されてしまうことも多かった。ドラグシステムがどうのこうのと話題に上ることもなかった。  

 

 リールのドラグ性能の重要さに気付いたのは、北海道に出掛けるようになってからだ。ワイルドなニジマスの走りは想像を超えていた。40 cm台後半から50 cm台のそれは、最初のジェットランでバッキングまで軽々と引き出すパワーを持つものもいた。厚い流れに乗って走り下るマスを止めるのは危険だ。スプールの端に手の平を掛けて止めようとすれば、その瞬間に切られるか、ジャンプでフライを外された。ティペットは今とは比べられないほど弱く、3Xという太さでも不安を感じることがあった。

 

P1030677のコピー

 

 レギュラーアーバーのオービスCFO(じつはハーディー製)やハーディー各製品のドラグ機構は、単純ではあるが、魚の走りに音を上げてバックラッシュを起こしたことは過去に一度もなかった。しかし大きなデメリットがいくつかある。マスに走られてラインを、さらにバッキングを出されるという状況に近づくほど、つまりスプールの軸が細くなれば細くなるほど、抵抗が増してリーダーやティペットに大きな負荷が掛かるということが1つ。これは、リールから少しずつ手でフライラインを引き出していくことで体感できる。はじめは軽い力でスルスルとラインを出すことができても、軸径が細くなればなるほど、引き出しに大きな力が必要になってくる。実際の釣りでは、マスが引き出したラインの負荷に加え、ロッドが曲がることによるガイドの抵抗も乗ってくる。

 

 さらには、ライン回収の遅さ。やりとりとしては、マスの動きが一瞬止まった隙にラインを巻きとるのだが、レギュラーアーバーは軸径が細くなっているから時間が掛かる。マスを掛けた場所が川原であれば、こちらも足を使って距離を縮めつつラインを巻き取るのだが、一生懸命カリカリカリカリと巻いてもはかどらない。何とかマスとの距離を縮めても、また走られて軸径が細くなり、回収に手間取っている間に障害物に入られたりしてジ・エンド……こうした悔しい思いは何度も経験している。めったにお目に掛かれないサイズのヤマメやニジマスならなおさらだ。ラージアーバーリールは、こういったシチュエーションにこそ効果を発揮する。

 

P1120128 (2) - コピー

 

 ラージアーバーの巻き取りスピードはレギュラーアーバーの比ではない。立ち位置の関係からマスとのファイト中に自分が動けない状況下はもちろん、ポイント移動時でも素早くラインを巻ける。瞬発的な走りのスピードと瞬時の方向転換、激しい首振り、ローリング、予測できないトリッキーな動きの代表は言うまでもなくヤマメ。大型、とくに35cmを超す本流ヤマメは、掛かった瞬間から一気に下流に突っ走る。動きが止まったとしても油断はできない。すぐさま方向転換して水中の岩に回り込んだり、岸寄りの障害物に突っ込む。スピードに追い付いていくのは意外とむずかしい。

 

 一方ニジマスは、掛かった瞬間、流れ下りながらも水面で大きく体をうねらせ、豪快なジャンプも見せる。その飛沫の大きさにビビっていては、マスに主導権を握られてしまう。ヤマメもニジマスも、とにかく出されてしまったラインの回収が急務だ。ラージアーバーのメリットはまさにここにある!と言っても過言ではない。魚の動きが止まったわずかなチャンスにラインを巻き取りリールファイトに持ち込むことで、釣り人側に主導権を引き入れることがもっとも重要だ。また、ラインの巻き癖が付きにくいことも特筆すべきだろう。

 

 

P1120520のコピー

 

 

 

刈田敏三のライズシアター(皐月)

2021.05.03

Toshi_port

ミドリとイエロー  

渓谷は、すっかり新緑となり、フジの花が鮮やかに咲き始めていた。景色も良いが、フジが咲けばモンカゲロウやオオマダラのハッチが来る。4月27日11時50分、荒川は快晴。それでもモンカゲロウのシャックが次々と流下・・・とそのシャックに紛れるように来たのは、ミドリ色をしたダン。この小さなメイフライはマダラカゲロウの仲間だが、フライフィッシングの話題としては最もニューフェイス系で、ちょっと前のフライフィッシングの手引書には掲載されていないほど。それなのに、春から晩秋までハッチが続き……いやハッチだけでなく、ゾロッと集団で来るスペントが驚きのライズシーンを引き起こすスーパードリフターになる。だから今やフライフィッシングのメイフライ代表種といっても良いぐらいのポジションになっている。また生息量が多いこともずば抜けていて、ライズを意識するフライフィッシャーには価値が大きい。さて、これは誰でしょう? 

 

 

05k001

 

そうそう、初夏といえばミドリカワゲラのハッチシーズンでもある。アメリカなどではこの近縁種を「イエローサリー」と見たままに呼ぶけれども、日本ではなぜか「ミドリ」になってしまっている。このミドリは山地渓流にいて、初夏に陸上羽化でアダルトになる。陸上羽化というと「ふ〜ん」と安く見られがちではあるが、このミドリは、水際でハッチをして岩盤沿いの流れにポトリと落ちるという生態のキャラクター。なにせハッチに時間がかかる宿命で、ウイングをメイフライのように立てたままウロウロした挙句、初夏のヒュンという川風に吹かれて落水するのである。なお、ミドリのハッチは9時から12時頃に多い。だから、ミドリのハッチシーズンになるとヤマメなどのライザーは流心では待ちきれず、岩盤や流れに突き出した岩のキワへやってきて、ミドリが落ちてくるのを待つようになる。これが面白い。たとえその時ライズが見えなくても、ミドリがハッチする岩盤脇へフライをポトリとやればパシッと出てくるのだ。釣り上がり系ではあるけども、決してブラインドキャストじゃない。この季節独特の狙い撃ちだから楽しい。

 

05k002

 

ミドリが渓畔の木枝に止まっていたり、飛びまわる姿を見かけたらチャンス到来。それから流れに面した岩盤などをよく見れば、ミドリのハッチしたシャックがいくつも張り付いているのが見られるはず。双眼鏡を使うと素早くチャンスを見つけられる。双眼鏡は、ライズを狙う者にとって、完全に釣り道具なのだ。

 

ミドリカワゲラの生態としては、午後にソワソワと移動、あたりかまわず飛び回るのはオス。メスをセカセカと探し回っているので、流れのあちこちに落ちる。オスはメスよりやや小型なのが特徴。メスは、オスよりやや大型で体長8~9㎜。夕方ごろから飛び出してきて、産卵条件の適した平瀬に何度も着水して卵塊を産み落とす。もちろんこの時も素晴らしいライズに出会えるチャンスである。

 

05k003

フック・・・TMC206BL #16
アブドメン・・・シルクミシン糸50番 クリーム色
セグメント・・・モノカラーモノフィラメントミシン糸 #100スモーク色
ソラックス・・・ヘアーズイア スレッド
ウイング・・・ヴェインファイバー キナリ
スレッド・・・ベネッキ UFペールイエロー

※アブドメンは、セグメントを巻いてからUVレジンでコーティング
ソラックスやボディの一部は、COLOR MASTER水性顔料マーカー DAFFODIL YELLOWで着色

 

解答:前述のミドリ色のメイフライダンは、エラブタマダラカゲロウです! 

 

 

水生昆虫研究家・フライクリエイター 刈田敏三

 

 

「曲がり」と2本分のブランク

2021.04.28

フライロッドは、バネとテコの両方の機能を持つツールです。そのような多機能ツールをうまくデザインするためには、重量とともに「曲がり」が大事であることこそ、スコットの創業期から揺らぐことのない信念です。トラウトロッドとして、ラインアップでもっとも「硬い」 Centric を例に取っても、ソルトウォーターロッドのベンチマークとなった Sector にしても、人によっては拍子抜けするくらい柔らかいと感じられるかも知れません。しかしロッドの各モデル別に、想定した用途に最適な「曲がり」を設定することで、キャストはラクになり、ループはタイトになり、魚とのファイトは短時間ですみ、時にはより硬いロッドより遠くに飛ばすことすら可能になるのです。

 

1975_catalog

 

法人化の翌年、1975年のスコットカタログ(どちらかといえばパンフレットですね)をご覧ください。いっさい写真もイラストも使わず、飾り気などない文章に、創業者ハリー・ウィルソンと若きラリー・ケニーのフライロッドへのこだわりが透けて見えます。そこで使われているキーワードも「フレックス=曲がる」です。いちばん左側の列にある「フレックス・スリーブ」とは、2ピースのグラスロッドの内側に短く切ったセクションを複数配置するもので、硬さと質量配分を最適化し、ロッドの復元速度とキャスト性能を向上させようという画期的な試みでしたが、それは現在、マルチピースが主流になったことでデザインに組み込まれています。

 

しかし50年まえの天才的な閃きに基づき、いまだにスコットのGシリーズとFシリーズには「フレックス・フェルール」すなわちインターナル・スピゴットフェルールが採用されています。同じテーパーを持つセクションを2重ないし3重に接着して作りますので、フライロッド1本分のブランクと長い製作・調整時間が必要になるジョイントです。つまり、これらのロッド1本は2本分のブランクから作り上げられているわけで、他のメーカーであればコスト計算をした瞬間に却下されてしまうようなアイディア。しかしスコットではいまだに1つずつ、熟練工の技によってフェルールのカットと調整、接着が行われています。同じフライロッド用のスピゴットフェルールでも、他社とは作り方と装着法がまったく違うと断言できるものです。「ほんのすこしだけれども、たしかに違う」。手に伝わってくるループの感覚、魚のファイトの感覚がとても大事な要素となるフライロッド。これくらい、こだわりをもって作っている会社が1つくらいあっても良いと思います。

 

お待たせしている皆様、すみません。ていねいに作っていますので、時間がかかっています。きっとご満足のゆくロッドが届くと思いますので、しばらくお待ちください。

 

刈田敏三のライズシアター(卯月)

2021.04.03

Toshi_port

 

 

春の夕方の出来事。パシッ・・・パパパシッと突然やってくる小さいスプラッシュ、小石をつかんで投げ込んだかのよう。あれは何なんだろう・・・などとボーッとしていれば、スーパーチャンスはたちまち消え去る。

 

いよいよ、フライフィッシングのシーズンは佳境にさしかかってきたね。オオクマのハッチに始まり、後を追って続々とマダラハッチが来る。だから、この時期にはお問い合わせメールが増える。ある方は、うれしいことにライズに遭遇した際ドリフターチェックをやってみたとのこと。オオクママダラカゲロウと思われるスピナーが入ったがメスばかりなので、オスがゾロッと流下するタイミングはいつでしょうかという質問が来た。そうかぁ、この方もドリフターチェック体験によって探求心がメラメラッと来たようす。いわれてみればメスのスピナーばかりが流下するのは不思議なのかも。春の夕方、川岸の枝などに直径5㎜位の球をつけたマダラカゲロウのスピナーが止まっているのを見たことがありませんか。これを見つけられれば、もうほどなくスペントへの集中ライズが始まる前兆。このアブドメン先に付いた球は、「エッグマス」「エッグボール」とも呼ばれており、微小な卵が数千個含まれるといわれる卵ダンゴ(すみません、まだ実際にこの卵を数えたことはないのです)。

 

このエッグボールを作り終えたメスのスピナーは、上流の産卵適地に向かって飛び、空中で集合して一斉に落下して着水放卵を行う。同種のメスが短時間のうちに何百何千とドリフターになるから、ハッチとは比べようもないほどすさまじい連続多重のライズシーンが発生する。これこそ、フライフィッシングの極致体験。

 

kp0402

 

このエッグボールを作り終えたメスのスピナーは、上流の産卵適地に向かって飛び、空中で集合して一斉に落下して着水放卵を行う。だから、同種のメスが短時間のうちに何百何千とドリフターになるから、ハッチとは比べようもないほどすさまじい連続多重のライズシーンが発生する。これこそ、フライフィッシングの極致体験。

 

マダラカゲロウの産卵は、平瀬の流心で行われるのが決まりごと。水中で分散させる卵を効率よくバラまくためだと思われる。大量のドリフターが来たことを察知したヤマメなどは、このご馳走に突っ走って来て飽食するので、スペントだけでなくエッグボールもストマックの中からしばしば見つけられる。メスのスピナーが産卵しているときオスはどうしているかというと、情けないことに交尾の段階でパワーを消耗してしまい、フラフラとあてもなくさまよううちに鳥やコウモリなどに食われてしまう。オスの流下がないのはそういったワケ。もう少し頑張って、メスに同行して共に流れへ飛び込んでくれれば、ライズは一層増えるし、エッグボールがヤマメに食われるのをずいぶんと避けられるかも知れないのに・・・頑張れ!

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

さて、日本でマダラのスペントは主に夕方に流下するのだが、昼から午後も珍しくない。ちなみにアメリカのロッキー辺りでは、流下は午前中と、まるで違うのが不思議。釣りに関しては、どれほどのライズがあっても、フライがマッチしないと迷宮モードになってしまう。フライはこんなデザインで、各種のマダラには、フックサイズだけでマッチが可能。大型種のマダラなら、#12~14。アカマダラなど小型種なら#18〜20のフックで。スペントのアブドメンは、空っぽなので縮んで体長だけが短い場合もあり。

 

kp0403

 

フライ:ラスティスペント(マダラカゲロウ・スペントスピナーパターン)

フック・・・TMC206BL #12〜20
下巻き・・・絹ミシン糸50番(クリーム系など)
スレッド・・・ダンビル70 ベイジュ
セグメント・・・カーフテイルファイバー
マーカー・・・水性顔料 Color master SEPIA OLIVE BROWN
インジケーター・・・ヴェインファイバー・サーモン
ソラックス・・・ヘアーズイア(マーカーで染める)
ウイング・・・ヴェインファイバー・ライトケイヒル
アブドメン・・・マーカーで染めてからUVレジンでコーティング

 

 

 

水生昆虫研究家・フライクリエイター 刈田敏三

 

 

刈田敏三のライズシアター(弥生)

2021.03.01

Toshi_port

 

 

荒川岸に、まだヒザにも届かぬ高さの黄色い花が咲き始めた。渓流域に菜の花が咲くと、そろそろシロハラコカゲロウのハッチシーズンに入る知らせ……見つめる水面を流れてきたのは、アパタニア。北半球の渓流に広~く生息している、ごく普通のカディスだ。和名でいうとヒラタコエグリトビケラ。

 

0025

 

ハッチは早春からで、カディスとしては、もっとも早くハッチするのがこのアパタ。シロハラコカゲロウのハッチに混じってイマージャーやらトラップト・アダルトが流下し、ライズに絡む……油断ならない存在。ともあれ、早春のハッチは、ちょうど昼頃がピーク。朝から頑張りすぎてしまい、うっかり昼食に川を離れるとせっかくのチャンスを失ってしまうことになる。昼めし時こそがハッチタイムなのだ。

 

アパタは、水面羽化で体長が8㎜。なんと使いやすいフライサイズだろうか。しかし1つ問題がある。イマージャーやアダルトの体色は、ベース的にオレンジ系褐色なのだが、背面に特徴的な濃褐色のラインがあって、フライタイイング的にちょっと悩ましい。「マッチング・ザ・ドリフター」にこだわるカリタ式では、やっぱりマーカーを使って背面を部分染めすることになる。アブドメンは昆虫らしさのテクスチャーを尊重して、シルクミシン糸のクリーム系カラーをヨリを戻しながら巻き、グレイのモノフィラでセグメントを作る。それからオレンジ系褐色マーカーで全体を下塗りし、背面に濃褐色系マーカーでラインを描く。アブドメンの仕上げは、UVレジンのコーティングだ(ネイル用トップコートなどでも可)。

 

1288288

 

 

1288292

 

 

フック・・・TMC206BL #14~#16

スレッド・・・ダンビル 6/0 ベイジュ

アブドメン・・・絹ミシン糸 50番 クリーム系淡色

セグメント・・・フジックス モノカラー(ナイロンモノフィラメント)#60 スモーク

ソラックス・・・ヘアーズイア 淡色

ウイング・・・ヴェインファイバー シナモン 

マーカーA(ボディ全体用)・・・カラーマスター MUSTARD 

マーカーB(ソラックス・アブドメン背面用)・・・カラーマスター SEPIA & DARK BROWN

 

 

水生昆虫研究家・フライクリエイター 刈田敏三

 

 

  • 全ての新着情報
  • News
  • Products
  • Column