ランチで再び

2022.06.21

A Trout Hunter[5]

 

 

 by レネ・ハロップ

 

 

ハリマン・ランチのオープニング、6月15日はフライフィッシャーにとって特別な日。長年ここを釣ってきた私にとっても、それは変わらない。他のローカルな釣り場はだいたい通年開いていることが多いのだが、世界でもっとも難しい釣り場の1つ、ヘンリーズフォークのフライオンリー・セクションは、1年のうち半分ちかくがクローズとされ、動物が守られている。ここで自分のスキルを試したいと考えるなら、タイミングを計らなければならないのだ。

 

アイダホ州に土地を寄付する条件としてハリマン家が提示したこのクローズ期間は、絶滅が危惧されるナキハクチョウを初めとする鳥類の繁殖地として、ランチがいかに重要かを彼らが認識していたからだ。アイダホ州で最初の州立公園となったハリマンランチは、幼い鳥がすでに巣立った6月15日をオープニング日と定められた。深い森が迫り、彼方に峻険な岩山がそびえるこのメドウ地帯は、別の領域において魔力を感じる人々の聖地ともなってきた。かつては歴史豊かな私有地だったこの場所に一般市民が立ち入れるようになってからおよそ50年、ランチのオープニング日は、世界から人が集まり話が盛り上がる、社交イベントとなった。

 

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およそ8マイルにわたって、おだやかで徒渉可能な流れが続くランチの釣り場は、最大で100人ほどの人が、なごやかな釣りを楽しむことができる。活き活きとしたスピリット溢れるこの土地を愛するという共通点によって、見知らぬ人たちが親しい友となる。オープニングで年に1回顔を合わせ、各地へ戻ってゆく人も多い。

 

オープニング前の一週間、ラストチャンスの小さな集落は、さまざまなナンバープレートを付けたクルマが集結しはじめる。英語を話さない人たちも多く、このイベントの重要性が世界的に知られていることが分かる。ビング・レンプキ・アクセスの駐車場が一杯になると、ごく特別な場合にしか見られないエネルギーが充満してくる。この駐車場は、川で今なにが起こっているかというストーリー集結の場、かつ過去のできごとを振りかえるところでもある。グラバルピットの夜は、焼けるステーキ、香しい葉巻、濡れたリトリーバー犬の匂いが入り交じる、いかにもオープニング日らしいもの。キャンパーたちが作り上げるこの小さなコミュニティにおいて、火は夜遅くまで燃え続ける。煙と脈動するような炎のむこうに、昔はすこし違った顔をしていた友達がいる。ここにいない者たちのことも思い出す。毎日が今よりもゆっくりと過ぎていき、圧力も小さかった時代を生きた人たちだ。

 

そんな祝祭の日々は、6月15日をはさんで1週間ほど続く。私は、ランチの北入口に設けられた古い木製のゲートを通り、踏みしめられた小道を行く。150ヤードほど進み、水路を1本渡ったところで、私は75年の人生においてつねに変わらないパワーを伝えてくる光景を目にする。トレイルの上には、まだ朝早いのに先行者が見え、すでに立ち込んでいる人たちも、はるか彼方まで散らばっている。

 

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昼を挟んで午後になると、虫の活動はだいたい収束してしまい、夕方を待つだけ。朝と同じ突然さで、川からは人がはけていく。駐車場で、昔からの友人とビールを飲みながら交わす釣り話のネタとして、レインボーがまだ何尾かはライズしているだろうが。

 

ランチのオープニングは、昔からの儀式として私が大事に思っている行事の1つである。これを境に、ヘンリーズフォークの夏がやってくるのだ。

 

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