ドリフターへの挑戦

2022.06.01

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告白。以前の私は、 釣れるフライパターンこそが最高、いいフライなんだと思っていた。だから有名パターンに憧れ、レシピ通りのタイイングに熱中した。釣れりゃあいいのだ……そうなんだけど、フライって私にとって何なのだろうとある時考えた。いくらか見え始めた水生昆虫の実像が頭に入りつつある頃のことだ。ドリフター対マイフライでは、マッチレベルがとんでもなく低いことに気づいた。ショックだった。そうなるともう、自分で納得のいかないデザインや仕上がりのフライは使う気がしない。気持ち沸き立つライズ現場は、これなら「マッチできる」と確信を持てるフライで釣りたい。

 

 

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ドリフターの現実、オオクママダラカゲロウのダン

 

ライズを目撃、ヨシ行くぞという時に、こんなドリフターを見たらどうだろう。あなたのフライボックスに、マッチしそうなフライがあるだろうか。最初は、私もガックリ絶望したが、やがて気がついた。ライズを釣る最高のヒントを手に入れられたのに、フライがないと嘆いている場合じゃない。この本物に近づけるようなフライをタイイングすればいいだけのこと。なにせ、本物を知っているのだからすばらしく有利じゃないか・・・ワクワクしてきた。

 

そうなんだ、私にとってはライズする魚が口にするドリフターこそが先生であり、フライパターンの行き着く究極のデザインがそこにある。ドリフターを観察する価値は、とんでもなく大きいと気づいた。すると、何とかしなくてはならないのは、ダンやアダルト、スピナーのウイングに使う素材だった。市販品ではぜんぜん納得できないから色々と探してみたけれど、ペラペラ感があり硬質なプラスティックシートなどは嫌だなと感じた。

 

メイフライであれカディスであれ、変態直後のダン/スピナー/アダルトは「ヴェイン」と呼ばれる管を経由して体液を注ぎ込んで羽を伸ばし、時間とともに硬化する。羽は、枝状に伸びたヴェインが支えている。

 

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ヴェインは、このような枝状に広がっている

 

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私のオリジナル、ヴェインファイバーを透過光で見るとこんな感じ

 

 

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カーブを持ったカットをすると、ぐっとウイングらしくなる

 

ヤマメは、流れの下から空をバックに透過光でフライを見る。透過光で見えるウイングにはヴェインの表現が欲しい。フライの機能パーツとしては、柔らかさがあり、水面膜に囚われたトラップト個体を表現する場合には、ボディを支える張りも必要。また、納得出来る色合いも欠かせない……そんなマテリアルが欲しいと思って探した。

 

まず試してみたのは、やっぱりシルク。絹糸は、昆虫が生み出したものだ。けれども、フライのボディを水面で支えるような張りが足りないし、ファイバーが繊細すぎて扱いにくい。結局、長期間をかけてマテリアルを探し回り、タイイングを繰り返して今のヴェインファイバーにたどり着いた。

 

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ダンへの使用例

 

 

ウイングは、ヴェインファイバーの「シナモン」と「ダークダン」をミックスし、アブドメンには「ライトケイヒル」を巻いて、オリーブブラウンの水性顔料マーカーで染めてある。ライトケイヒルは、褐色と淡色のミックスしたファイバーなので、アブドメンとして使いやすく、マーカーで染めれば様々なライズシーンでマッチ出来るようなマーカーアレンジが容易。これは、現場でマーカー染めをやるのがお勧め。まず淡色のボディにタイイングしておけば、マーカーで必要な濃色に染めるのは簡単。

 

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スペントドリフターの例

 

 

エラブタマダラのスピナーだが、そのウイングは透明でほとんど見えないと感じるほど。けれども、この透明なウイングは張りもあってスペントのボディをしっかり浮かせられる。



 

 

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エラブタのスペント対応フライ

 

 

フライにタイイングしてみる。アブドメンをヴェインファイバーの「ライトケイヒル」で巻いてから、水性顔料マーカーでライトブラウン系に染めてある。ソラックスはヘアーズイアをダビングしたが、これも同じマーカーで染めてある。ウイングは、ヴェインファイバーの「キナリ」。このぐらいに出来れば、自己満足ながらキャストする元気が湧いてくる。

 

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ゲゲっと驚くドリフターの現実!

 

 

ストーンフライをイメージしたフライパターンは東西にたくさんある。けれども、ライズ現場で本物のドリフターを見ればやっぱりショックを受ける。「まるで違う」のだ。初夏からの季節、山地渓流の午前中にはミドリカワゲラなどがさかんにハッチしており、ポロポロと流れに落ちている。このドリフターには、シャック、縮れたウイングなど、魚にとって捕食しやすい要素が揃っている。

 

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ミドリカワゲラノックダウン

 

フック・・・TMC206BL #16

スレッド・・・BENECCHI’S UF ペールイエロー

アブドメン・・・ヴェインファイバー ライトケイヒル

シャック相当部分は、茶色の水性顔料マーカー「茶」で着色

ソラックス・・・ヘアズイア

ウイング・・・ヴェインファイバー キナリ

フライボディ全体は、イエローの水性顔料マーカーで着色

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この記事で使ったヴェインファイバー

 

 

キナリ、シナモン、ライトケイヒル、ダークダンだ。他にも多数のカラーバリエーションを揃えてある。万能マテリアルであるなどと主張する気はないが、この素材を使ったフライをボックスに入れておくと、悩ましいライズ状況に直面した場合の心強い味方が増えることは保証させていただく。まだ使ったことがない皆様も、ぜひ一度。

 

刈田敏三

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