森村義博の漂飄亭日記

2021.05.16

Mori_Portrait

 

レギュラーVSラージアーバー

  

 僕のフライフィッシングは、1975年にブローニングのグラスロッドとマーチン62からスタートした。当時のフライリールは、渓流域での釣りに限って言えば、ラインを収納できればそれで良し、という考えが一般的だった。バッキングラインは、フライラインとリールのフレームとの隙間調整に巻かれる程度で、ラインの選択によっては省略されてしまうことも多かった。ドラグシステムがどうのこうのと話題に上ることもなかった。  

 

 リールのドラグ性能の重要さに気付いたのは、北海道に出掛けるようになってからだ。ワイルドなニジマスの走りは想像を超えていた。40 cm台後半から50 cm台のそれは、最初のジェットランでバッキングまで軽々と引き出すパワーを持つものもいた。厚い流れに乗って走り下るマスを止めるのは危険だ。スプールの端に手の平を掛けて止めようとすれば、その瞬間に切られるか、ジャンプでフライを外された。ティペットは今とは比べられないほど弱く、3Xという太さでも不安を感じることがあった。

 

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 レギュラーアーバーのオービスCFO(じつはハーディー製)やハーディー各製品のドラグ機構は、単純ではあるが、魚の走りに音を上げてバックラッシュを起こしたことは過去に一度もなかった。しかし大きなデメリットがいくつかある。マスに走られてラインを、さらにバッキングを出されるという状況に近づくほど、つまりスプールの軸が細くなれば細くなるほど、抵抗が増してリーダーやティペットに大きな負荷が掛かるということが1つ。これは、リールから少しずつ手でフライラインを引き出していくことで体感できる。はじめは軽い力でスルスルとラインを出すことができても、軸径が細くなればなるほど、引き出しに大きな力が必要になってくる。実際の釣りでは、マスが引き出したラインの負荷に加え、ロッドが曲がることによるガイドの抵抗も乗ってくる。

 

 さらには、ライン回収の遅さ。やりとりとしては、マスの動きが一瞬止まった隙にラインを巻きとるのだが、レギュラーアーバーは軸径が細くなっているから時間が掛かる。マスを掛けた場所が川原であれば、こちらも足を使って距離を縮めつつラインを巻き取るのだが、一生懸命カリカリカリカリと巻いてもはかどらない。何とかマスとの距離を縮めても、また走られて軸径が細くなり、回収に手間取っている間に障害物に入られたりしてジ・エンド……こうした悔しい思いは何度も経験している。めったにお目に掛かれないサイズのヤマメやニジマスならなおさらだ。ラージアーバーリールは、こういったシチュエーションにこそ効果を発揮する。

 

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 ラージアーバーの巻き取りスピードはレギュラーアーバーの比ではない。立ち位置の関係からマスとのファイト中に自分が動けない状況下はもちろん、ポイント移動時でも素早くラインを巻ける。瞬発的な走りのスピードと瞬時の方向転換、激しい首振り、ローリング、予測できないトリッキーな動きの代表は言うまでもなくヤマメ。大型、とくに35cmを超す本流ヤマメは、掛かった瞬間から一気に下流に突っ走る。動きが止まったとしても油断はできない。すぐさま方向転換して水中の岩に回り込んだり、岸寄りの障害物に突っ込む。スピードに追い付いていくのは意外とむずかしい。

 

 一方ニジマスは、掛かった瞬間、流れ下りながらも水面で大きく体をうねらせ、豪快なジャンプも見せる。その飛沫の大きさにビビっていては、マスに主導権を握られてしまう。ヤマメもニジマスも、とにかく出されてしまったラインの回収が急務だ。ラージアーバーのメリットはまさにここにある!と言っても過言ではない。魚の動きが止まったわずかなチャンスにラインを巻き取りリールファイトに持ち込むことで、釣り人側に主導権を引き入れることがもっとも重要だ。また、ラインの巻き癖が付きにくいことも特筆すべきだろう。

 

 

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