旧友との決別

2020.09.23

A Trout Hunter[5]

 

 

 by レネ・ハロップ

 

そのくたびれ方は、一目でわかる。汚れたコルクのグリップは、繰り出してきた何万回ものキャストを物語る。9フィート4番のスコット・ラディアンは、過去8年にわたって私の手の中にあった。世界でもっとも厳しい釣り場の1つとされるヘンリーズフォークで、他のロッドに手を伸ばそうという気はいっさい起こらなかったという事実が、このロッドのすばらしさを物語っている。しかし、円熟の域に達したロッドデザイナーであるジム・バーチが新しいロッドのデザインを行っているという噂があり、試作品が今年の4月に届いた。「パラダイス・ランチ」という開発コードをバットに書き込まれた1本のロッドが、トラウトの盛期に合わせて製作されたのだ。私は4ヶ月以上にわたって、性能面に関するすべての仕様を検証することになった。すばらしいモデルであるラディアンの存在によって、この新製品が超えなければならないハードルは高い。

 

A New Best Friend

 

パラダイス・ランチは多様なハッチ、水の状態、天候などに対応する使い勝手の良さをクリアしていったが、使っているうち、この新設計テーパーがさらなる魅力を秘めていることに私は気がついた。フライフィッシャーはそれぞれ好みがあるものだが、いくつかのフライロッドを使い込み深く理解していることこそ、実際の魚との対峙には大事なことだろう。ヘンリーズフォークの魚は不完全なプレゼンテーションを許容しないので、正確度とコントロールが決定的要因だ。そして、この面においてパラダイス・ランチはラディアンのさらに上を行く性能を備えている。テスト期間の終了も近くなった時、思い通りに動くティップこそこのロッドの最大特徴だと、ジムに伝えた。さまざまなキャストや立ち位置に対応して自在にラインを導くティップを持つパラダイス・ランチは、ラディアンをしのぐ性能だと実感したからだ。

 

Rise On The Fork

 

滑らかなつながり感を持ち、じゅうぶんなパワーがあってスムーズ。これは広いフラットで大型魚のクルージングをねらう場合も、風でプレゼンテーションが狂ってしまいそうなときも、頼りになる特徴だ。年老いたマスはそれぞれ個性を持ち、対処法もケースバイケース。サイドから急角度カーブキャストを繰り出す、オープンウォーターでハイスピードなリーチキャストを決める、下流側から繊細なダイレクト・アップストリームのキャストを落とすなど、場面に応じてベストな釣り方は変わってくる。8月中旬にはジム・バーチとチーフ・アシスタントのテレサ・モンターノがこの地を訪れ、最終テストにつきあってくれた。その3日間で出会ったレインボーたちが最終の審判者。彼らの承認を得られたと皆が納得できた最終日、テレサは私に生産型「セントリック」を手渡してくれた。

 

Jim Bartschi--Theresa Montan Photo

 

考えてみれば、私のロッドラックに立っているラディアンとは10年に近いつきあいである。この信頼できる道具を携えて川に立った日は何百にのぼり、数知れないマスを相手にしてきた。そんな記憶の1つ1つをたどりながら、私はこの旧友に別れを告げた。新セントリックによって、可能性はさらに押し広げられた。アングラーはフライロッドの進化に対し、犠牲を払う必要はない。この4ヶ月間、私のキャスティングはさらに鋭さを備えるようになったが、ヘンリーズフォークでは僅かな性能差が大きな違いを生む。私は残りのシーズン、新たなベストフレンドを手に、川辺をさまようことになる。

 

1st. For The Centric

 

 

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