川辺に欠ける「何か」

2020.07.20

A Trout Hunter[5]

 

 

 by レネ・ハロップ

 

 

ヘンリーズフォークというすばらしい釣り場が往年の姿を取り戻したという事実は、よく知られるようになってきた。数年にわたる干ばつの後、過去4年間は冬にたっぷりと雪が降ったので、川の状況は次第に好転してきた。冬の間の流量が、昆虫の生息量とマスのコンディションに大きく影響を与えるのだ。ハッチは安定し、マスの大きさも数も向上してきた。

地元民もビジターも異口同音に、2019年は近年最高だったと考えた。翌年はさらにすばらしいはずだ、と誰もが期待を高めた。冬の力が弱まる今年の2月、下流部でのすばらしいミッジ・フィッシングが始まり、それは3月のベイティスへと移っていった。ハッチは安定し、魚の数は膨大で、ヘンリーズフォーク核心部においても質の高い釣りが期待できそうだった。しかしそこで、世界中に恐れと不確実性をもたらしたコロナウィルスの蔓延が起こってしまった。

 

01   

 

国境は閉じられ、ビジネスは生活に必要な最低限しか許可されないという緊急事態において、フライフィッシングにたずさわる私たちはきわめて静かな夏を予測していた。しかし州政府は規制を緩め、5月こそ人は少なかったが、6月はまったく別の話となった。家に閉じ込められていた人たちが、屋外の環境を求めて川に繰り出してきたのだ。ハッチは下流部のサーモンフライに始まり、予定通りにグリーンドレイク、ブラウンドレイク、グレイドレイクが続いた。1人も感染者を出していないヘンリーズフォークのコミュニティは、サンクチュアリのような役割を果たしていたのだと思う。7月上旬現在、フレモント郡における感染者はわずかに5人。ただし、いつ爆発的な増加が起こってもおかしくない状況であることを私たちは理解している。

 

 

02

 

 

ヘンリーズフォークがどれだけ混雑してきているかは、ハリマンランチの解禁日である6月15日以降の人の動きでもわかる。通常は、その日から1週間もたつと、駐車場のクルマは減り始めるのだが、今年は7月の声を聞いても満杯だ。見知らぬ人も目立つようになった。ヘンリーズフォークは、ソーシャルディスタンスを保ちながら質の高い釣りができる、最高の釣り場になったようなのだ。運良くも、この時期に釣りができる区間は、ローワー区間も含めると50マイル以上にわたる。

 

 

03

 

 

世界が混沌に陥った現在も、私にポジティブな気持ちを持ち続けさせてくれるのは、過去5年間で最高のコンディションと言えるこの川と、そこに住む虫、魚たちとの濃密なやりとりだ。群衆を避け、社交的なやりとりにあまり興味のない私にとっては、ある意味いつも通りの生活である。自宅で仕事をするので、人的な接触は自分でコントロールができ、多くの友人と会うこともできる。彼らは大多数がローカル、ないし米国内に住む人たちで、今年ここを釣ることができるだろう。しかし、遠くの人たちはこの旅行制限の影響を強く受けている。日本、英国、北欧、南アフリカなどに住む友たちの中には、地元民と同じくらいこの川を愛する人たちがいる。何十年にもわたってともに時間を過ごしてきた彼らは、もはや私の家族のようなものだ。そんな人たちとともに川岸を歩き、癒やされる水の流れに立ち込むことが許されないのは、なんとも辛い。できうることなら、雪が一年が締めくくるまえに、彼らと川辺で時を過ごしたいものだ。

 

 

04

 

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