斑点曼荼羅倶楽部 Presents — Quill Wing de Leon vol. 3

2020.05.10

コック・デ・レオンのルースター・クイルを活用する 基礎編 (1)

 Mitsugu_port

     

 

私家版シルバーマーチブラウン・フルチューニング仕様、スロートハックルにこだわるの巻 

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追憶のシルバーマーチブラウン

 

 思い起こせば、あれよというまに17年まえ。はじめてのホワイティング・ファーム訪問のときの思い出のひとコマ。サドルハックルやネックハックルなどの商品のためにスキニングされたあと、そのほかの使われない部位は破棄されて焼却処理されるまえの、バラバラになったコック・デ・レオンのご遺体安置所にて合掌したときのこと。血まみれのまま、山のように積みあげられた何百もの切り刻まれたレオンのご遺体。異臭が漂い、まるで生ゴミのようだ。その光景を見て、この道楽の罪深さの無常と懺悔の念ひとしお。一方で、込みあげる感謝の念。そこでふと、あるものが目にとまり、無言でしゃがみこんでしまったワタシ。「ビゼンさん、どしたの?」怪訝な顔つきで訝しむ、同行者およびスタッフの面々。

 ここはあえて不遜な表現を許してください。無造作に積みあげられた生ゴミのなかから、切り捨てられたヘン・レオンの両翼をムンズと掴みあげて、お宝を発見した海賊のごとく、それを捧げ持って頭上高々と掲げるや、いきなり声高々に、「これ、欲しい!これ、ください!」「な、な、な、なんで?」あのときの、皆さんのドン引きした表情が忘れられない。

 そうしていただいたレオンの翼を自宅に大切に持ち帰り、時差ぼけクラクラの帰宅早々、逸る気持ちを抑えられず、翼からセカンダリー・クイルを取り出した。その夜、フライフィッシング数百年の歴史のなかで、これまでまだ誰も試したことがなかったであろうコック・デ・レオンのセカンダリー・クイルを、はじめてクイルウイングとして巻いてみたときの感動と興奮が忘れられない。

 コック・デ・レオンならではのグッと胸に響く、美しく鮮明なゴマダラ模様がウエットフライのクイルウイングとして活き活きと立ちあがったあの瞬間。ご遺体安置所で「これはひょっとしたらひょっとして……」ピピーンとタイイング心に響いてきた淡い予感が、確信に満ち満ちてかわった瞬間だった……これはまちがいなく、スタンダード・ウエットフライにつかわれている伝統のクイル素材群に匹敵する、最高のクイルウイング素材になる! 奥底から心の琴線が震えました、あの日あの夜のフライタイイング。そのときに巻いた処女作が、伝統の銘鉤シルバー・マーチブラウンのウイングにレオンのクイルをつかったウエットフライだったのです。

 

 今もなお、レオンのウイングを巻き止めたシルバー・マーチブラウン風を愛用しているワタシ。いわば、コック・デ・レオンのクイル素材とワタシの長い付き合いは、常にこのフライと共にあったと言っても過言ではありません。

 本州で暮らしていた当時は、もっぱら里川や本流のアマゴやヤマメやイワナを狙って試行錯誤を繰り返す日々。そして13年まえに北海道に移住してからは、野性のニジマス、アメマスやオショロコマなどなどを相手に実践と改良を重ねてきた、レオンのクイル・ウイングをつかうシルバー・マーチブラウン。当初は従来のシルバー・マーチブラウンにつかわれていたヘンフェザントのウイングを、ただレオンのクイルに変更しただけだったアレンジ版は、すこしづつ変化しながら「私家版シルバー・マーチブラウン」へと進化していきました。「コレ釣れるよ!」とビックリマーク付きで自信をもってお勧めできるウェットフライのひとつ。現在のカタチはコレです。

 

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テイルとスロートハックル

につかうのは、なんといってもコレ。レオンのサドルハックル各色。

 

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ボディ材

 ボディ用につかうのは、極細のシルバー・オーバルティンセルとオパール・カラーのミラージュ的フラッシャブー。これをそれぞれ二つ折りにしてボディ末端に巻き止める。ちなみに、つかっているスレッドはベネッキ・ウルトラストロングスレッド12/0の白。フックはTMC9300 の8番。

 

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ボディを巻く

 で、このボディ材をダビングツイスターもしくはハックル・プライヤーに摘まんで、捩じりながらボディに巻いていく。このとき、ボディ末端の巻きはじめ1~2回転は撚りをかけず、ティンセルとフラッシャブーをそのまま同時に巻いて、そこから捩じって巻いていくとボディ末端に軽くテーパーがかかってスムーズでキレイなボディになる。

 

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ボディを巻き止める

 捩じって巻いた素材の撚りをここでほどいてフラットにして巻き止めてカット。その際、素材の余りを根元ギリギリにカットしてしまうのではなく、ほんの少しだけ残してカットする。その後、その余りの部分を爪先でボディに押しつけるようにして圧縮する。

 

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ボディ完成

 するとアラおもしろい。巻き止めたスレッド跡がまったく見えないスッキリしたボディが出来あがる。このようにティンセルとフラッシャブーを捩じって同時に巻くことで、ボディ全体が微細にデコボコしたボディになる。陽の光を受けると、複雑かつ微妙に乱反射して、ときにはまるでマダラ模様の暗色の羽根が後光に包まれているようにも見える(この見え方が最大のミソ)いかにもな生命感を感じさせる。まるで羽化途上のカディス・ピューパやガガンボ、あるいはヒラタカゲロウなどのイマージャーが外殻と中身のあいだにまとう空気膜による反射、いわゆるイマージングガスを誇張表現したような印象。耐久性も申し分ない。従来のシルバー・マーチブラウンのように、使用中にリビングがズレたり、ほどけたりしてフライが壊れることがない。

 

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スロートハックルを巻き止める

 ダブリングしたレオンのサドルハックルを、フックシャンクに巻き止める。巻き止めた位置にご注目を……ココすごく大事。ボディ材を巻き止めたところではなく、フックのアイの直後に巻き止めている。あとでスレッドでハックルを巻き込んで、スロートハックルの位置と角度を調整するためと、ウイングを巻き止めやすくするための細工。

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スロートハックルを巻き止める(その2)

 この位置にスロートハックルを巻き止めたら、余りのほうを折り返してスレッドで3回転ほどしっかり巻いておく。こうして止めると、ハックリングする際に抜けることがない。ソフトハックル・パターンなど特に有効なテク。また、もちろんパートリッジなどのパラッと巻くハックル素材全般に最適。

 

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ハックリング

巻き止めた位置でレオンのサドルを2~3回転ハックリング。

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スロートハックル処理

 従来通りの方法のように、フックシャンク上側のハックルを後方に押し下げるようにスロートハックル化させるのではなく、シャンク上側のハックルはカットするか指先でむしってしまう。これもすごいコツ。上方向に突き出ているハックルをスレッドで巻き込んで下側に押し下げると、量が多くなり過ぎるだけでなく、左右の形状バランスが不自然になり、フライ自体のバランスも崩れやすくなる傾向にある。なので、フックシャンク下半分のハックルだけにしておいて、そのままスレッドで2~3回転ほど後方に巻き込みながら、スレッドの位置をハックリングしたストークの後ろ側に移動させつつ、スロートハックルを安定させる。この、ストーク後方とボディを巻き止めた位置の中間のところの溝というか凹みがウイングを立てるためのスイートスポットになる。

 

 また、コック・デ・レオンのサドルは、ストークからファイバーの生えている生え際のところが最もハリが弱く、水流の抵抗に負けやすい。なので、この数ミリにも満たないファイバーの根元部分をスレッドでしっかり巻き込んでおくだけで、ハックルに適度なハリとコシがつく。なので、こうしておくと流れの抵抗を受けてのハックルの振動や耐久性がまったく変わってくる。(どんどん続きます)

 

 

備前 貢

B’s Fly Works

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