B’s Fly Works Presents — Quill Wing de Leon vol. 2

2020.04.27

コック・デ・レオンの逆襲 基礎編  

 

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コンプリート・ウイングからクイルをバラして炙って直して巻いてウットリの巻

 

 

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 コック・デ・レオンのルースター・コンプリートウイング。色の濃淡やマダラ模様に多くの種類があるレオンのルースター・ウイングとしては典型的な色柄のタイプ。ここで単純かつ素朴な疑問…そもそも、このコンプリートウイングから一体どうやってクイルウイングを取り出せばよいのでしょうか…?。聞けば、ここでかなり多くの方々が(ちょっとおっかなビックリ)尻込みしておられるご様子。

 

 ウイングにズラッと並んだ一本のクイルの先端をつまんで引っ張ってみてもビクともしない。さりとて、ハサミで根元からカットしようとすると、とても硬くて切りにい。強引に切ろうとすると、同時にほかの羽根まで切ってしまうトラブルも多発。そして、この方法だと最初の1~2本はよくても、切り進めているうちにどの箇所を切ったのかわからなくなってしまい、いつしか左右両側のペアが揃わなくなることがよくあるという致命的な欠点がある。ハテ、どうしたものか……。 

 

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ベキッと折って取り出す。

 

 そのお悩み、びっくりするほど簡単に解決できます。クイルの生えている方向にひっぱっても、硬い皮に守られたクイルはビクともしません。なので、どうするのかというと、取り出したいクイルの上側に生えているクイルの根元をまず最初にしっかり摘まんで、それを一気にベキッと反対側に折ります。このばあい、折るというよりも「クイル同士の関節部分を外す」といった表現のほうが適切かも……。そのあと、取り出したいクイルを同じようにベキッと折ります。そしてクイルを皮から剥がすようにひっぱるとアラ簡単。写真のように、ストーク根元からキレイにクイルを取り出すことができます。しかも、こうやってクイルを折って取り出すと、外した部分が明確なので、左右両側のクイルのどの部分を外したか、あとになってもすぐにわかるという寸法。

 

 この方法だと、ネックハックルのケープやサドルのスキンから、ハックルをプチッと抜くのと大差ない気分でクイルを取り出すことができます。ちなみに、こうやってクイルを取り出すと、その根元に生えていた未成熟なごくちいさなクイルもろともスキンから剥がれることになります。このミニチュア・クイル素材、じつは素晴らしいハックル素材になります。コレ、当コーナーのレオン・シリーズ・マニアック応用編にて改めてご紹介します。

 

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クイルの割れや曲がりを直したい。

 

 さて、コンプリート・ウイングからクイルを取り出してはみたもののアレ残念。クイルのファイバーが割れていたりねじ曲がっていたりしているものがあったりします。写真はその典型的な例。下側のクイルはキレイに整っているのに、上側のクイルはファイバーが見るも無残にバッラバラ。生前のレオンが飼育ケージのなかでバサバサ暴れるたびに左側の壁に翼をぶつけていたために、このような有様になってしまったものとおもわれます。このコンプリートウイングは、全体的にファイバーの割れと損傷があまりに酷く、とても販売用にはできないと破棄されようとしていたもの。しかし色調や模様はすばらしく見事なので、捨ててしまうにはあまりに忍びない。というわけで、この記事のためにちょいと拝借してきたものがコチラです。このヒジョーに残念なクイルをつかって、クイルのファイバーを修正してみたいとおもいます。

 

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 ワタシが実践しているお手軽洗浄方法、まずはぬるま湯でクイルをザッと濡らしたのち、ご家庭のキッチンにはかならずあるママレモン的な中性洗剤(食器洗い洗剤なら大抵どれもおなじような気がする)をクイル表面にひと垂らし。そして、クイルの根元から先端部分にむかってスーッと3回ほど撫でるようにして洗ったら、再度ぬるま湯で洗剤を洗い流しておく。そのあとキッチンペーパーかなにかにクイルをギュッと挟んで水気をとり、そのまま乾燥。

 

 写真は洗った直後。この時点では、なんだか悲しくなるほどファイバーがバラバラでみすぼらしいお姿……失敗したのだろうか?なんて最初は不安になりますが、ここはグッとこらえて、このまま小一時間ほど室温にて乾燥。

 

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 そのまましばらく放置したクイルのファイバーを、乾いてきたかどうか確かめるために、指先でやさしく撫でてみましょう。すると……アレ? なんかファイバーが……フフフフフ、もうこの時点で乱れまくっていたファイバーが活き活きと整列して息を吹き返しているような予感が……。ワクワクしながら最後にダメ押し。沸騰したヤカンから出る蒸気をクイルの裏表に浴びせましょう。軽いファイバーの割れであれば、この時点で完全に修正できます。

 

 このクイルのような慢性的で頑固なファイバーの割れのばあいは、蒸気の水分でしっとりするまで蒸気に当てます。しっとり濡れたクイルをまたも乾かして、それが完全に乾いた時点で……

 

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寝ぐせ直しは意外と簡単。

 

 指先でやさしくクイルのファイバーを撫でつけてやると、うわ~なんだか手品みた~い。完全復活でございます。しかも、洗剤で洗って細かい汚れも落としたので、クイルの艶々感もグッとアップして発色も模様もより鮮明になりました。

 

 さて、ここでワンポイント・アドバイス。ファイバーの割れや捩じれは、クイルが壊れているというよりも「寝ぐせ」のようなものとかんがえましょう。寝ぐせにも頑固なものと軽いものがあるように、頑固なものはこのように洗剤で洗ってクセを直してやる必要がありますが、軽いものならば蒸気を当てるだけで充分。もし万がイチ蒸気を当ててもどうしてもファイバーの割れが修正できないものがあれば、このように洗浄したのち乾燥して、それからさらに蒸気を当てる、という方法を最終手段として試してみてください。ちなみにこの作業はもちろん、レオンにかぎったことではなく、ほかのクイル素材全般にも役立つ方法です。

 

 あと、これは私見でもありますが、こうした一連のクイル洗浄やファイバーの修正は、一見なんだかとても面倒な作業のようにもおもえます。が、じぶんの経験からも、また過去に多くの方々に伝授した経験からも、タイイング好きの方ならかならずハマること請け合いです。ごく簡単な作業で、手持ちのクイルのファイバーが修正できるだけではなく、あれよという間により美しく、より艶っぽくなっていく様子を体感するのは、じつにじつにカイカン。気がつくと、この作業自体がタイイング同様に愉しくなっちゃう。本末転倒? かつて、ワタシもそうであったように、その必要もないのに手持ちのクイル素材アレコレを片っ端から洗ったり蒸気を当てたりしてしまうマニアさん、たくさんいらっしゃいますワハハ。

 

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いよいよタイイング。

 

 洗浄と蒸気をかさねて、美しく生まれ変わらせてあげたことで、なんだか「情」のような感情が芽生えてもいるクイルをつかって、最初に巻いてみたのは私家版シルバー・マーチブラウン。我が必殺のウエットフライな一本。このフライの効能書きについては昨年5月3日付けの当コーナー「コック・デ・レオン四方山話」にて掲載済み。ワタシにとって、レオンのクイルをつかったウエットフライとして初期のころから愛用している実績度数ぶっちぎり高めな定番中の定番です。

 そんなわけで、次回はこのフライのタイイングをご紹介しながら、レオンのクイルの魅力と旨味を活かしたフライたちについて、どんどん応用の枝葉をひろげていきたいと目論んでおります。

 

備前 貢

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