現代トラウトフライの進化

2019.04.06

A Trout Hunter[5]

50年間を振り返って (その2)

 

 by レネ・ハロップ

 

 

21世紀のタイイングにおいては、世界的な情報交換が生まれている。釣れるトラウトフライのデザインにおいて、アメリカ人タイヤーの独壇場という時代は終わっている。英国や北欧諸国をはじめとする欧州では、ファーやフェザーがいまだに愛されている傾向にあるようで、タイヤーたちは、ナチュラル素材にこだわりを見せながらもフライを進化させ続けてきた。

 

PMD No Hackle

PMD No Hackle

 

 

Rusty CDC Biot Paraspinner

Rusty CDC Biot Paraspinner

 

質に強いこだわりを見せる日本において、フライタイイングは芸術に近いところまで到達し、世界のトップクラスにあることは間違いない。フライフィッシャーの数はあまり多くはないが、マテリアルの質に細かな注意を払うのが日本人タイヤーである。タイイングをする人の割合はきわめて高く、できの良いフライはその人の誇りを反映する。トラウトフライ・デザインの基礎となる水生昆虫の世界をもっともよく理解しているのも、日本人かも知れない。刈田敏三さんがその牽引役だ。

 

Rene' Portrait

 

最盛期はとっくに過ぎてしまったが、私はいまだに販売用フライをタイイングしている。遠い昔と比べてみると、マテリアルの質の進化には驚くべきものがある。私が巻くことのできる限界、24番のフックに使えるドライフライ・ハックルが手に入るのは、トム・ホワイティングをはじめとする一流ブリーダーのおかげだ。タイイング世界に対する彼の貢献は、交配技術を使って、さまざまなフライに適した鳥を作り出したことにある。かつてレアであったスペイン原産コック・デ・レオンの羽根も、いまでは比較的容易に手に入れることができる。CDCは、比較的最近の私のパターンに多く採用する素材だ。かつてはカラーも限られ、流通も少なかったがいまは状況が異なる。ダビング材、バイオットなどとともにマッチング・ザ・ハッチ用のカラーが揃っている。かつては選択肢が限られ、フライタックルにおける「弱いリンク」であったフックも、ティムコをはじめとする日本メーカーのおかげでありとあらゆるフライのタイイングが可能になった。

 

TroutHunter Products

 

個人用フライには、できるだけシンセティックは使わないようにしている。マテリアルの選定はその人の自由であり、現代的なクリエイティブ・タイイングには化学素材が欠かせないという人もいて、入手の容易さとともに、素材の出どころを気にしなくてよいところも大きい。エルク、ディア、ムースといった大型獣のヘア、フェザントテイル、ターキーテール、ウッドダック・フランク、ダッククイルといった羽根は、伝統に魅せられ続けている私のようなタイヤーにとって、過去と現在、人間界と自然界をつなぐ貴重な存在であり、効果的な管理によりハンティングが可能な資源量が保たれていることをありがたく思う。

 

Wild Plumage

 

今となっては、クラシック・パターンを巻く機会は多くないけれども、フライタイヤーとしての私の成長はそれらがあったからこそである。私らしさというものがあるとするなら、それは50年以上まえに身につけた技術の上に育ったもの。ボビンを回すことができる限り、私はタイイングの歴史と伝統を尊重したクリエティブ作業を行っていくことになるのだろう。

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