B’s Fly Works Presents それって愛でしょ。— Hackle talk with you その2

2019.01.28

“ハックルの中心はブラックと叫ぶ”  

 

 Mitsugu_port

 

     「レッドタグとヒーバート・ヘンネック・ファーネスとワタシ」(佳境)編

 

真っ赤なシッポのフライで真っ赤なホッぺのニジマスを釣る

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 2018年のシーズンはじめ、冷たい雪代水がひと段落して川が落ち着いてきたころ。川辺にもいろんな陸生昆虫たちがチラホラ蠢きはじめた。ここオホーツク地方にもようやく遅い春がめぐって来た。でもまだドライフライにはチョイ早いかな、という季節。

 そんな春の日のよく晴れた午後、水深1メートルほどの砂利底のチャラ瀬にこのニジマスはいた。川底にべったりはりついて、時々魚体をユラリとうごかして流下してくるエサを捕食していた。

 斜め下流からソ~ッと近寄って数投目……いや~それでさあ、聞いてくれる?

 ゆるやかに流れるトロ瀬。水中のすべてが見渡せるようなジンクリアな流れのなか、水面直下を流れるフライに気がついたこのマスが、ゆっくりリラックスしきった様子でスローモーションのように浮かびあがりスーッと近寄ってきた。まるで空中に浮かんでいるよう。でさあ、見事なほどにおおきなヒレをフワッとひろげて、真っ白な口を開いてフライをパフッと吸い込んだんだよね。その様子がもう手にとるように丸見え。

 もうゾックゾクの瞬間。

 

 んで、ビシッとアワセをくれてやったつぎの瞬間、濃いオリーヴ色と血のような深紅の魚体がグネグネグネッと重々しく、激しく魚体をよじらせる。それが水中に差し込む春の陽の光を受けてギラッギラに輝きながら反射している。底光りする緑の背中と鮮やかな赤い頬と側線の鮮烈なコントラストが強烈に眩しく、そして艶めかしい……それはもう野性の織り成す神秘の万華鏡。白昼夢の世界に迷い込んでしまったワ・タ・シ。

 夢ではないことを証明するかのようにロッドを握る手にズシンと伝わる確かな重量感と、ギュイーンと唸りをあげて逆転するリール。

 もうドッキドキの気分。

 

 そして、トロ瀬を所狭しと暴れまわったニジマスを無事に取り込んで嗚呼うれし。魚体を水際にソッと静かに横たえて、早く逃がしたい気持ちに急かされながらカメラのシャッターを押そうとして、おもわずハッとしてドキッとときめいた。

 ニジマスの下顎にガッチリ掛っていたフライが、釣りあげたニジマスとまったく同じ色のコントラストで陽の光に反射しながら、キラッキラと輝いていたんだよね。なんてキレイで、そして生き物っぽいんだろう……。

 

 

 古典の代表レッドタグで温故知新

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 これがそのフライ。真っ赤な房状のシッポと濃緑色に輝くピーコックハールのボディ、そしてハックルだけのシンプルなハックル・パターン。

 この紅と緑のフライが、まったくおなじ虹色をしたニジマスの下顎にガッチリ掛っていた……そりゃあもう気持ちが弾む眺め。

 このフライは「レッドタグ」といって、なんと170年くらいまえに生まれた古典中の古典フライ。なんでも、川底にピタリとはりつくグレイリングを水面近くに誘い出して釣るために考案された必殺フライだったらしい。

 で、それから時は流れ流れて現在では、残念ながらもはや世界中で忘れ去られて久しい過去の遺物フライ。なんだけど、じつは現役で活躍中な場所がある。そこは南半球タスマニアの湖沼群。なんでも、水面に落下した陸生昆虫をクルージングしながら探しているブラウン狙いのために、ビートルなどテレストリアル全般のイミテーションとしてレッドタグが現在も大活躍中だとか。

 

 転じてここ北海道はオホーツク地方。各種のビートルを筆頭格に陸生昆虫パラダイスな釣り場だらけの当地。そんな環境で釣り暮らすこのワタクシが、レッドタグに辿りつかないわけがないのであった。さらにまた、このファンシー・カラーなフライの元々の目的でもあったように、流れを探るアトラクター系フライとしての絶大な効果に気がつかないわけがないのであった。

フックサイズ8番くらいから20番までの幅広いサイズに巻いて、ドライフライとして水面に浮かせても抜群。水面直下に沈めてナチュラルに流して最高。

 はたまたダウン・スイングの釣りにもバッチリ。止水のリトリーブの釣りにも最適。なんならヘビーウエイトで川底ゴロゴロ転がすのもとってもグッド。

 どのようにでもつかえて、そしてどのように使っても効果てきめん。シンプルな構造こそが多方面につかえる、という証明のようなフライ。そしてまた、この配色は「普遍的に効く色」であることを痛感させてくれる銘フライ。

 と、そのような古典の名作をば、ヒネクレ者のワタクシが釣り場でバンバカつかいながら自己流に改良しまくらないわけがないのであった。そんな私家版レッドタグの重要なキモのひとつとなるのが、このヘンハックル。

 

 

 ヒーバート・ヘンネック・ファーネスにぞっこんラブ

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 ダン系カラーとならんでヒーバート・ヘンネックの代表的カラーのひとつでもあるファーネス。ヒーバート・ヘンネック・ファーネスの特徴は、まずヘンハックルでありながら色のメリハリや発色の鮮やかさが挙げられる。なので、このハックルをシンプルなレッドタグのハックルにつかうと、黒と茶色のコントラストがいかにも「虫の脚」を連想させて、元祖オリジナル・レッドタグの茶色だけのハックルよりも俄然活き活きとした生命感が醸し出されるように見える。

そして、なんといってもドライフライにもウエットフライとしても使い勝手がとても良い独特のファイバーの質感。一本のフライを浮かせても沈めてもつかいたいレッドタグにはうってつけのハックル素材ではないか。

 

パーマーハックルのレッドタグ

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ピーコックのボディのうえにヒーバート・ヘンネックのファーネスをパーマー状に巻いたスタイル。ハックルの黒いセンターラインがちょうど良いアクセントになって虫っぽさ倍増。

これを水面直下にちょい沈めて流す釣りが個人的なマイブーム。大好き。厚めにハックリングしたパーマーハックルが流れの抵抗をモロに受けて、通常のウエットフライやソフトハックルよりもジワ~ッと流水に馴染んでゆっくり沈んでゆっくり流れる。なので、ナチュラルに流しているときやラインがたるんだ状態でもアタリが明確に出ることが多い。ので、アップストリームなウエットフライの釣りに最適。

さらに、初夏から盛夏のビッグサイズ・ドライフライが活躍する季節の道内各地の釣り場では、ロングシャンクなストリーマーフック6番前後に巻いたこのスタイルも頻繁につかう。これを水面あるいは水面直下に流すと、ものすごいショッキングなことになる。水面直下をフラフラ流れる毛むくじゃらの化け物フライにむかってグワンッ!と水面がド派手に盛り上がるようなかんじで巨マスが激しくもんどりうって出てきたりして……ポークビッツに毛が生えたような極太どでか毛虫は夏の巨マスの御馳走のひとつですよ。

 

 やらないわけがないヘアカディス仕様のレッドタグ

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さっきのパーマーハックル・レッドタグに、ディアヘアをお馴染みエルクヘアカディス的に巻き止めただけのドライフライ・スタイル。だれもが思いつくようなアレンジではありますけれど、ファイバーがソフトな質感のヒーバート・ヘンネックを選んでいることで、かなり厚めにハックリングしても空気抵抗がかかって回転することもなくスムーズに投げられて、かつフワッと水面に乗る。これはボディハックル・ヘアウイング・スタイルのフライを快適に使ううえでかなり福音。なのでもちろんコレにかぎらず、ヒーバート・ヘンネックのハックルはこのテのヘアカディス系のボディ用としてとても最適。

それでやねえ、オッチャンが小声でエエこと教えたろ……ウールやエッグヤーンなどの素材で巻き止めたオケツの紅い房のところに、ジェル状フロータントをクリクリよ~く擦り込んでおきなはれ。すると頼もしいほどに水面高く軽々と長時間よく浮いて、さらに水面での水平姿勢なバランスの向上にお役立ちするゾ。

で、ヘアカディス・スタイルに巻いているからといって、カディスを意識しているわけではなく、ピーコックハールの太いボディとファーネスのヘンハックルの色調から、どちらかというとテレストリアルをイメージしたアトラクター・スタイルという位置づけ。

 

 

このフライをハイフロートでつかった結果

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広いプールのフラットな水面で、ゆっくりクルージングしながらビートルやハネアリなどなどの小さめの陸生昆虫をチュボッチュボッと吸い込んでいたスレッスレのニジマス。パラシュートに巻いたビートルやアントなど、いつものボディが水面下に沈む半沈型スタイルのテレストリアル系フライは、くやしくも大中小サイズどれも撃沈。なので逆に12番のこのスタイルのレッドタグにフロータントを効かせて、ボディもろともポカッと水面高く浮かせてみた。マスの回遊コース上にソッと置いて待っていると……チュボッと……してやったり会心の一撃でございました。

 

ここで今回のワンポイント・アドバイスでえ~す。テレストリアルのなかでも、とくにビートルやアントはボディを水面下にめり込ませて半沈みで浮かせるだけではなく、水面膜のうえに乗るようにポカッと水面高く浮かせてみるのもとっても大事。そのワケは、水面に浮いているホンモノを観察すると一目瞭然。

 

裏切り者フライもおススメよ

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英国生まれのファンシーハックル・フライに対抗して……ませんが、おそらく60年代のアメリカ中西部生まれのファンシー・ハックルフライ「レネゲイド」(裏切り者)も、ヒーバート・ヘンネックのファーネスのハックルをつかうとばっちりハマって、そしてよく釣れるパターンのひとつ。

こちらはオケツのところに、やはりヒーバート・ヘンネックの白いヘンハックルを巻いてあるので、水中に沈めてもなにかとよく見える。もちろん浮かせて釣っても使い勝手が良い。こうしてレッドタグやレネゲイドをつかってみておもうに、単純なハックルフライのボディ末端に流水の抵抗がかかる素材をボテッと巻いたフライのバランスって、じつはサカナから見てとても魅惑的なバランスになっているのかも……なんておもってみたりして。

 

 

備前 貢

B’s Fly Works

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