ノーハックル・ドライフライ by レネ・ハロップ

2013.12.30

 

 

ハックルを使わずにドライフライを水面に支えるナチュラル素材としては、ディアヘアやCDC を初めとし、数多くの選択肢が存在する。しかし歴史的な視点からいえば、「ノーハックル」という呼称は、マラードダックのプライマリ・クイルから切り出したセクションをウイングとして使うスタイルを指すものである。

 

 ウィリアム・ブレーヅとJ. エドソン・レナードによると、この種のウイングはコンセプトとして1920年代に広まったということであるが、実質上ノーハックル・フライの生みの親はダグ・スイッシャー/カール・リチャーズのコンビである。

 

 きわめて大きな影響力を持った彼らの著作『セレクティブ・トラウト』の出版は 1971年だったが、私はそれを遡る数年前、ヘンリーズフォークで彼らと初めて出会った。プロタイヤーとしてまだ駆け出しだった時代、私は彼らとの釣りを楽しむことができ、ノーハックル・フライは今に至るまでハウス・オブ・ハロップ製品のなかで重要な部分を占めるシグネチャー・パターン的存在となった。

 

 現代的なフライパターンのなかで、その効果を50年近くにわたって維持することができたものはほとんど存在しないように思うが、ノーハックルはスイッシャー/リチャーズがこのあたりをよく訪れていた頃から今まで、魔力を保ち続けている。ただし銘記しておかなければならないことが1つ。ダッククイルのウイングを正しく取り付ける技術の習得は簡単ではなく、仕上がりの悪いノーハックルはそれなりの効果しか持たないのだ。

 

 最高のバランスと浮力を達成するためには、シャンクの上でなく側面に、完璧に左右がマッチした幅広のウイングをマウントしなければならないが、それはスイッシャー/リチャーズですら難しいタイイングだった。しかし、適切に巻かれたノーハックルは、シンプルながらもたいへん美しく、メイフライ・ダンのイミテーションとしてユニークな精密さを持つのだ。他のフライに納得してもらえない時につまみ出す切り札としてのノーハックルが持つ、今にも飛び立ちそうなイメージは、マスを惹きつける神がかった力を発揮する。

 

 21世紀、創造力ゆたかなタイヤーたちは新パターンをつぎつぎと生み出してゆく。新作フライが注目を浴びようと声高に叫ぶなか、ノーハックルが生き残ってゆくかどうかを左右する要素とは、タイイングの難しさと大量生産への不適合性だろう。しかし、その限界があるからこそ、完璧なノーハックルが各地のタックルショップやフライフィッシャーたちのフライボックスの中に潤沢に供給されることはなく、ありきたりの存在に落ちることもない。

 

 ノーハックルは、巨大なレインボーが厳しい批評家として君臨するヘンリーズフォークの透明で緩やかな流れで効果を発揮してきた。他の数多くのパターンが時代の波に呑まれて消え去ってゆくなか、この古いパターンがいまだに使われ続けているのはすばらしいことではないか。(東知憲 訳)

 

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