スコットG2 844/4雑感   by 備前貢

2013.11.06

ぼくがスコットG2の844をつかいはじめたのは、もうかれこれ7~8年前。その当時、ぼくは富士山の麓にある街に住んでいた。そこでは富士山の豊富な湧水をあつめて流れるスプリング・クリークや、川べりに民家や工場の建ち並ぶ里川、あるいは夏にはアユ釣りでにぎわう堂々とした本流筋などが日常の釣り場だった。

 

 

フタバコカゲロウやシマトビケラなどなど、豊富な湧水に支えられながら一年を通して羽化している、ちいさな水生昆虫にライズしているスレにスレまくった尺アマゴ。つかうフライの常用サイズはほとんど18番以下。ハックルをほんのひと巻きとか、CDCのファイバーをごく数本など、華奢に巻かれたそれらのフライを結ぶティペットはたいてい7X。ときに8X。そんな道具立てでライズの主ににじり寄って、複雑に絡み合う流れの筋を制するために、あれやこれやのトリックキャストを駆使しながら狙う純度100%のマッチ・ザ・ハッチの釣り。サカナをフライに掛けるまでも大変だったけれど、掛ってからがまたひと苦労。なにしろ相手は百戦錬磨の丸々太った尺アマゴ。掛った瞬間、ギリギリと魚体を回転させながら転がるように下流に走ったかとおもえば、まったく予想のつかないうごきで水中深く突進していくアマゴを、細いティペットをかばいながらいなしつつやりすごす。そんな繊細な釣りでメインにつかっていたロッドのひとつが、このロッドだった。

 

 

そして現在、ぼくは北海道に住んでいる。一年中、道内のいろんな釣り場にでかけるけれど、ここ数年もっともハマッているのは、なんといっても道東地方の広々とした山岳渓流での真夏のドライフライの釣りだ。つかうフライはハルゼミや大型の甲虫類を意識したテレストリアル系。フライは最小サイズでも6番。常用するティペットは3X、ときに2X。フライのサイズが特大なだけに、投げるときの空気抵抗もハンパない。のだが、それを手返し良くバシバシとポイントに打ち込みながら巨マスを探して釣りのぼっていくような釣り。轟々と流れる荒瀬の流芯を、ドンブラコッコと流れる特大のドライフライにむかって、ドンッ!と地響きをたてるような水飛沫をあげて飛びだす無垢の野性のニジマス。その瞬間、いつもこれからはじまる闘いのゴングが鳴り響いたような気がする。有り余るパワーと巨体にモノをいわせて、有無を言わせない怪力で爆走しながら激流のなかに突っ込んでいくヤツ。まるで狂ったかのように、水面高くジャンプしつづけるヤツ。さまざまなタイプのニジマスがいるけれど、いずれも誰もが認めざるを得ないチカラ自慢の猛者たち。こちらも、極太のティペットにモノを言わせて強引なやりとりで応戦。チカラとチカラがぶつかりあう一騎打ち。と、そんな豪快な釣りで大活躍してくれているのも、このロッドだ。

 

 

いわば、対極をなすような両極端な釣りの場面で、このロッドがその実力をいかんなく発揮してくれる潜在能力は一体どこにあるんだろう?

 

 

まことに僭越かつ分不相応な物言いではありますが、つかい倒し過ぎてもはやグリップが手垢まみれのツルッツルになってしまった我がG2844を眺めながらつくづくおもうのは、このロッドのバット付近のパワーと、繊細さを残したティップの絶妙なバランス感覚にあるのだなあと痛感しているんだけど、いかがなものか?

 

 

強靭というよりも「ねばり腰」とでも表現したい、独特な感覚のバットパワー。ドバッとフライにでた巨マスをバシッと合わせてドスンッとくる衝撃を受け止めたとき、そして巨マスの突進をなんとか止めるために、いちかばちかグーンとロッドをためるとき、そのチカラを吸収するかのようにジワ~ッと効いているバット付近のブレのない安定した感じ。これなら闘える!とおもえる安心感こそが、ぼくのこのロッドへの愛着につながっている。

 

 

あるいは、極細のティペットに結ばれた極小のフライが、唇の端にチョンと刺さっているだけのハラハラ状態で、キリキリ舞いしながら予測不能なファイトで翻弄してくれる尺アマゴ。そのトリッキーなうごきに反発することなくグイーングイーンと追従しながら細いティペットと口切れから守ってくれるティップ。それでいて、ただサカナのうごきになすがままになるのではなく、逆にタメの効くバットを活かしてサカナをコントロールしつつ寄せてくるような、あの感覚。手で引っ張れば簡単にプツッと切れてしまうような仕掛けでも、これなら取り込める!とおもえる信頼感もまた、非常に心強いかぎり。

 

 

と、フライロッドについて語られるとき、キャスティング性能やアプローチ能力についてどうこう言うべきところを、ここでは「ぜったいにバラしたくないトロフィーサイズを掛けてからどうなのか……」というところに終始してみた。

 

 

ぶっちゃけたところをいえば、もう釣りと~て釣りと~てたまらんわけですわ~。

 

 

なので、自分にとってのロッドの良し悪しを判断するには、まずフライにサカナがでてビシッと合わせた瞬間の感覚。そしてさらにロッドを通じて伝わってくるサカナの暴れる感触。これがまずとても重要で、ものすごく大事なのです。

 

 

最初にこのロッドをえらんだとき、携帯に便利な4ピースということもあって、なるべくいろんなスタイルの釣りや釣り場に対応できるようにと、この長さとこの番手をえらんだつもりだった。遠征時のサブロッド的な使い方をしようという目論見だった。

 

にもかかわらず、さまざまな場面での数々の実績を経て、いまではもっとも使用頻度の高いロッドとして、シーズン中は常時クルマのなかに置きっぱなし。「きょうはぜひとも釣りたい」というときは欠かせないロッドのなかの一本として愛着もひとしお。

 

 

それで、あの、自慢しちゃうんですけど……つい先日も、流れが止まったようなおおきなプールのジンクリアーな水中深くで、まるで潜水艦のように定位していた60センチ・オーバーのニジマスを発見。14番くらいのちいさめのニンフを4Xのティペットに結び、そこに米粒ほどのオモリを5個ほど連ねたヘビデューティかつ変則的な仕掛けをエイヤッと投げてドボンと沈め、まんまとパクッといっていただくことに成功。

 

 

水中深く沈んだ小さなニンフを、巨マスの硬い上顎にグイイイイイッとロッドをあおりながらブッ刺した瞬間の、水圧の壁と重いオモリの抵抗をものともせず「タメの効いたバット」からたしかにズシッと伝わるあのカイカン。そして、フッキングした巨マスがグネグネグネッとおおきく頭をふるやいなや、あれよというまにバッキングまで引き出しながら右に左に激走しているときに、口先に浅く掛っているだけの小さなフックが弾き飛ばされないように「ジワワ~ッとサカナの走りに追従するティップ」のカイカン。勝負のツメはバットのパワーに全信頼を寄せてロッドをガシッとためながらケンカ腰で寄せてきた。そしてザバッと強引にネットに押し込んだ。その瞬間おもわず「グハアッ」なんて吐息まで洩れちゃったのだった。

 

 

すっばらしい闘いだった。そうそうあるわけではない、なにもかもがパーフェクトだったと思えた一戦。このロッドをつかって、またひとつ忘れ得ない思い出を刻んだ。

 

 

どっぷり余韻に浸りながら、河原の石に座りこんで一服。

 

 

「ほんまにエエ竿やのう……」あらためてしみじみロッドを眺めていると、もうどうしようもなく湧き出てくる愛着の念。

 

 

「あ~りがと~~~」おもわずグリップにチュッチュとキスしちゃうワタクシ。

 

 

アホやろか?

 

 

我が良き相棒、これからもヨロシクね。

 

 

 

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